「金」の価格が歴史的な上昇を続けています。ただ、金投資というと、いわゆる「金地金」の「ゴールドバー(金の延べ棒)」を思い浮かべて、「金は買いたいけれど、何百万円も用意できないから自分には無理だ」と思われるかもしれません。しかし、CFDを利用すると、数千円程度から金に投資することができます。
専門家の中には、さらなる金の価格上昇を見込んでいる人も少なくありません。今後、価格高騰の期待が持たれる金とは、いったいどのような資産で、なぜその価格は上昇し続けているのでしょうか。
常に価値を持ち続ける金属
2015年8月、「300年以上前にフロリダ沖で沈んだスペインの難破船から450万ドル相当(当時の為替レートで約5億6,000万円)の『金貨』350枚が発見される」というロマンに満ちたニュースが大きな話題となりました。
海の底深く沈んだ難破船などに積まれた「金銀財宝」として、しばしば登場するのが、「金貨」や「金の延べ棒」です。金は希少性、不変性が高く、常に価値を持ち続ける金属であることから、紀元前から「通貨」に利用されていただけでなく、指輪やネックレスのようなジュエリーになったり、蓄財するためのゴールドバーになったりと、大昔から重要な「実物」資産でした。
(1)安全性が高いから「有事」に上昇
その金の価格が2000年代に入ってから上昇しています。それにはいくつもの理由が重なっています。まずは「有事の金」です。
世界恐慌が起きたり、世界大戦が起きたりすると、株式や債券のような金融資産の価値は大きく変化し、ときとして紙クズのようになってしまうこともありますが、不動産や金のような「実物」資産は逆に人気が高まり、その価値が上昇します。「何かあっても価値が毀損しない、安全性の高い『金』なら、万が一にも備えられる」ということから「有事の金」と言われるようになりました。
金価格上昇の大きなきっかけとなったのは、2001年9月11日に発生した米同時多発テロでしょう。その後も2007年のサブプライムローン問題、2008年のリーマンショック、2020年の新型コロナの感染拡大などが起きたことで、安全性の高い「金」の価格は上昇します。
(大手貴金属会社の国内販売価格から著者作成)
2021年3月にウクライナ紛争が勃発すると、金の価格は急上昇。国内価格は2023年10月16日に1g=1万円超と史上最高値を更新して、その後も1g=約1万円という高値圏での取引が続いています。少し長いスパンで見てみると、約20年で1g=約1,000円から1g=約1万円と、金の価格は10倍になりました。
(2)金は「ドル建て」
日本の投資家にとっては、最近の歴史的な円安傾向も、金価格上昇に大きな影響をもたらしています。金の取引は基本的に「ドル建て」なので、日本の国内価格は為替レートの影響を受けるからです。ドル/円相場は2020年3月に一時1ドル=約101円台をつけましたが、2023年11月には1ドル=約150円です。約50円の円安は、金の価格のみならず、輸入製品をはじめとする、さまざまなモノの価格を上昇させています。
(外為どっとコム外貨ネクストネオの高機能チャートより)
ご存知の通り、アメリカはインフレ抑制のために急ピッチで利上げを行い、2023年7月以降の政策金利は5.25〜5.50%です。一方で日本はゼロ金利のままです。アメリカ経済の景気後退は、「もう少し先になる」という見方があるので、当面は金利が据え置かれそうです。そのため、現在のような「円安・ドル高」傾向は長期化する可能性が高いとみられています。
(外為どっとコムHP 政策金利より)
(3)高金利、通貨高でも価格上昇
アメリカは政策金利の上昇を受けて、10年国債の利回りも上昇しています。2023年には5%を超えるまでに上昇しました。本来は金を売ってドルを購入し、利回りの高い国債に投資家の資金が流れてもおかしくない状況なのですが、それにもか夕方かわらず、NY金先物の価格は高止まりして、底堅く推移しています。これは金に対する需要はまだまだ旺盛であることにほかなりません。
(米財務省データを元に著者作成)
(4)各国中央銀行の金保有量が増加
各国中央銀行は2010年以降、金の買い手に転じています。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によれば、2022年の中央銀行の需要は前年に比べて約152%増加して約1,136トンとなり、過去最高水準となりました。2021年が約450トンだったので、2倍以上に増えています。こうした傾向は2023年も継続しており、特に中国の中央銀行の金保有量が際立って増加しており、2023年9月末時点で11カ月連続の積み増しとなっています。
※WGCは1987年に世界各国の主要金鉱山会社がメンバーとなり設立された非利組織。金に関する調査研究や正しい知識の普及活動、個人投資の需要促進などを行なっている。
(WGC「ゴールド・デマンド・トレンド」の数値より著者作成)
中央銀行は対外債務の返済や緊急物資の輸入目的、外国為替相場の安定性確保のために一定の外貨を保有しています。リスクヘッジのために通貨の種類を分散させており、金はその中のひとつです。2020年春先から世界経済を混乱に陥らせた新型コロナの感染拡大、2022年3月のロシアによるウクライナ侵攻、10月のイスラエル紛争などで地政学リスク、世界的な金融引き締めによるインフレ進行などから、新興国を中心に、より安全性の高い金の保有量を高めて、特定通貨(米ドル)への依存度を引き下げる動きが強まっています。
(5)金の採掘はより困難に
アメリカ地質調査所(USGS)によれば、これまでに発見された金は約244,000トンで、すでに187,000トンが生産されており、地下に埋蔵されているのは57,000トンだそうです。単純に計算してみると、すでに75%以上の金が採掘されたことになります。 最近は廃棄された電子機器の基板などから貴金属を回収するリサイクル市場が高い注目を集めています。産業廃棄物に含まれる希少資源は「都市鉱山」と呼ばれており、宝飾品のみならず、コンピューターやカメラなどの電化製品、携帯電話にも利用されている金も、「都市鉱山」に埋蔵された「貴金属」として回収され、リサイクルされています。 希少資源リサイクルの動きは環境保護の側面もありますが、金について言えば、採掘しやすい金鉱石がすでに掘り尽くされていて、今後の採掘がより困難になるからです。インフレの影響もあって、燃料費や人件費も高騰しており、金の採掘・生産コストは上昇、これも金価格を高止まりさせる要因となっています。
環境省によれば、1トンの金鉱石に含まれる金の量は約5gですが、廃棄された携帯電話1トンから回収できる金は約280gで、自然の金山から採掘するよりはるかに効率的に金が得られるわけで、金価格の高騰やコスト上昇と相まって、今後もこうした動きは強まるでしょう。
CFDで金投資するメリットと注意点
ここまでは金の特徴や、価格が高騰している背景、要因について考えてみました。最後にCFDで金投資した場合のメリットと注意点を整理してみます。
メリット
1)保管料や保険料がかからない
CFDは実際に金の現物を売買するわけではありません。現物を受け渡しする手間や保管料、保険料などのコストが発生しません。
2)ポートフォリオの多様化とリスクヘッジ
CFDを利用すると投資資金が少ない人でも、「金」という商品を投資ポートフォリオに組み込めるようになります。株や債券などの金融資産とは動き方が異なるので、リスクヘッジが可能になります。
注意点
1)短期取引の難しさ
CFDは現物などと違い、短期売買が可能な点がメリットのひとつですが、金価格は経済的・政治的要因で大きく変動することがあります。産業用でも使用される金属なので需給バランスの変化でも価格は変動します。そのため、専門家でも短期で価格変動を予測することが難しく、短期取引のリスクは高くなります。
2)オーバーナイトコスト(金利調整額)の発生
金のCFDでは次の日にポジションを持ち越すと、「買い」ポジションの場合、基本的には金利を支払うことになります。上昇トレンドでポジションを持ち続けるのであれば、金利調整額を払い続けることになります。
逆に「売り」ポジションであれば、金利が獲得できます。なお、CFDもFX同様に売買時の価格差(スプレッド)が手数料ですが、スプレッド幅が変動します。こうした取引に関わるコストは、売買する前に十分に理解しておく必要があるでしょう。
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