目次
▼ランドは堅調推移ながら物流懸念が嫌気材料に
▼政策金利は8.25%で据え置きが続く
ランドは堅調推移ながら物流懸念が嫌気材料に
南アフリカ・ランドの対ドル相場は、グローバルな為替市場におけるリスクセンチメント、そしてそれを大局的に反映して変動する安全通貨であるドルの名目実効為替レートと連動性が高い(第1図)。
第1図:南アフリカ・ランド対ドル相場とドル名目実効為替レート
7月半ばからの堅調な推移が10月に頭打ちとなっていたドルは、11月以降に発表された米雇用指標のさらなる減速やインフレ率の低下を受けて、FOMCの利上げ打ち止めの織り込みを伴いながら下落に転じた。これに伴いランドも対ドルで上昇していたが、11月半ば以降は、他の通貨が総じて対ドルで底堅く推移し続ける中でも対ドルで下落に転じるなど、独歩安ともとれる軟調な推移がみられた。この間、明確な経済指標の悪化傾向などはみられていないが、最近の南アフリカ主要港での貨物の渋滞の報道が、国営物流会社トランスネットの経営問題への関心につながり、ランドの嫌気材料になった可能性もあろう。結果的にランドはここ3ヵ月程度、1ドル=19ランドを挟んだ推移が続いている。
政策金利は8.25%で据え置きが続く
11月23日の金融政策委員会で、南アフリカ準備銀行(SARB)は、政策金利を8.25%に3会合連続で据え置き(第2図)、引き続き緩やかなインフレ率の低下傾向と経済の回復を見込んでいるとした。FRBの利上げ打ち止めを背景に市場のリスク選好の回復傾向も維持されれば、こうした状況は当面ランドの支援材料となりそうだ。但し、これまでの主要中銀による大幅な利上げの景気への影響はまだ顕在化していない可能性があり、世界経済減速による情勢悪化など、ランドの下落リスクには引き続き警戒が必要な時間帯とみている。
第2図:南アフリカ準備銀行の政策金利
南アランド/円 週足チャート
南アフリカランド 特設サイト:
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当社取扱通貨のうち、いわゆる新興国通貨に分類されるトルコリラ・南アフリカランドおよびメキシコペソ(MXN)はインターバンク(銀行間為替市場)における流動性が主要国通貨に比べ相対的に低く、経済指標発表のみならず金融政策変更やその他政治的要因、さらには地政学的リスク等の要因による突発的な相場急変動が起こりやすい環境下にございます。また、こうした急変動時には実勢インターバンクレートのスプレッド(BidとAskの差)も平常時に比べ大幅に拡大する傾向にあり、その場合には当社でもやむなく提示スプレッドを一時的に拡大することがございます。あわせて、相場状況により「ダイレクトカバーの対象となる注文」の基準Lot数(最低数量)を一時的に変更する場合がございますので、あらかじめご承知おきくださいますようお願いいたします。これら新興国通貨のお取引、およびこれらを対象とするキャンペーンへのご参加に際しては、以上につきあらかじめご留意のうえ、ポジション保有時、特に法人会員様の高レバレッジ取引における口座管理には十分ご注意くださいますようお願い申し上げます。以上の新興国通貨それぞれのリスク、および直近時点でのリスクレポートにつきましては、こちらのページをご参照願います。
新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。
橋本 将司(はしもと・まさし)氏
慶應義塾大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。国際通貨研究所研究員、グローバルマーケットリサーチ・シニアアナリスト、経済調査室ニューヨーク駐在などを歴任し、グローバルな為替市場やマクロ経済に加え、米国金融業界や金融規制など幅広い分野の調査業務に従事。現在国際通貨研究所において、為替市場や主要国の金融政策・マクロ経済動向の分析を担当。理論的な観点からの為替市場分析を得意とする。
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