介入実施しても効果は一時的である可能性【マット今井 実践トレードのつぼ】
収録日:2023/9/28
元邦銀ディーラーの今井雅人氏が現状の世界経済を詳細に分析し、今後の為替相場動向まで踏み込み見通しを示します。
目次
0:00 相場振り返り
0:26 米金利上昇の背景
0:58 ドル高の流れ
2:19 ドル円展望と介入の行方
3:26 メキシコペソ円の動向と展望
5:10 足元のトレード戦略
5:39 おしらせ
要約
この1週間はドル高の1週間でした。背景は、アメリカの長期金利の上昇です。昨日の段階で、10年債利回りはとうとう4.6%ということで、これはリーマンショック前の水準まできてしまっているということです。金利上昇の要因はいろいろ考えられますが、一番はやはりアメリカのインフレが長引きそうだという見方が広がっているということで、アメリカの金利は上がってきているということです。
今日はパウエルFRB議長が講演をしますけれども、このあたりも踏まえて先々どういうふうに見ていくかということを発言すると思いますから、注目ですが、基本的にこのドル高の流れは、今のところ止まりそうもないということです。
というのは、1つはユーロドルの動きなんですけれども、ユーロドルが1.06ドル台でずっと膠着していたのがとうとう下に抜けました。週足のチャートを見ると、完全に下抜けをして、一目均衡表の雲の上限も切ってきました。これはかなり下がる可能性があるということをチャートは示しています。少し大きくとれば、パリティー(1.0ドル)ぐらいまで視野に入ってくるというようなチャートの形になってきています。
アメリカの金利が上昇している一方で、ユーロ圏あるいはイギリスなどは、もう利上げを停止すると、次からは利上げはしないということを示唆していますので、他の国が金利を上げない中でアメリカに利上げ期待が高まってくると、ますますドル高になるという動きになってくると思います。
問題はドル円なんですけれども、いよいよ149円台の後半に入ってきましたから、150円台が視野に入ってきました。昨年の高値が152円直前ということでしたから、残りあと2円ほどなんです。介入警戒感は日に日に高まっています。ただ、悩ましいのはやはりスピードが速くないとなかなか介入がしづらいということ。ゆっくりとした動きではアメリカの理解が得られないということなので、これぐらいの今の上昇のペースで介入があるのか非常に悩ましいところだと思います。けれども、やっぱり昨年の高値を上に抜かしてしまうということは避けたいでしょうから、いよいよ介入の警戒感がかなり高まってきたと考えておきたいと思います。
ただ、これだけやっぱりドル高の流れが続いていますので、介入をしてもすぐ戻ってきてしまうということになると思いますので、一時的な効果にしかならないだろうなというふうに思っており、全体的なドル高の流れは変わらないということだと思います。
ドル円ではドル高・円安が進んでいますけれども、他のクロス円はもみ合いに入っていて、若干下がってきている。ポンド円なんかもちょっと弱いですけども、特に弱さが今目立っているのがメキシコペソ円ですね。為替ヘッジプログラムの段階的縮小を発表した時は8.3円ぐらいまで下がりましたから、それよりは高い水準にあるんですが、8.7円近くのところまでいってからずるずると下がって、今8.45円ということになってきています。
これは、メキシコとアメリカは非常に経済がリンクしているということは言うまでもないんですけれども、その中でやはりメキシコの方が金利が高いので、金利優位性というのがあるんですね。ところが、アメリカの長期金利が上昇してくると、「これだけ金利があればもう米国債の運用でいいんじゃないの」と、「わざわざ新興国のリスクをとってまでやる必要はないんじゃない」という動きが広がってきて、メキシコペソからドルへのシフトというのが起きる。そうすると、円そのものの影響はないんですけど、米ドルに対してメキシコペソがかなり安くなりますから、その影響でメキシコペソ円も下がってしまうということです。アメリカの景気がある程度安定しているというこはメキシコペソには悪い話ではないんですけども、金利がどんどん上がってくると逆にメキシコペソには下げ要因になるということが起きるんですが、今回もそういうことが起きているというのが背景だというふうに思います。
全体的にはアメリカの指標をこなしながらも、何となくトレンドがついてしまっている感じなので、このドル高っていうのはある程度続くんだろうなということを前提でやっぱりドルロング。ドル円のロングはちょっと介入が怖いなという方は、ユーロドルとかポンドドルとかで、ドルのロングポジション、つまりユーロショートとかポンドのショートとか、そういうポジションを考えてみるのがいいんじゃないかなというふうに思います。
今井雅人 氏
1962年生まれ、岐阜県下呂市出身。上智大学卒業後、1985年に三和銀行入行、1987年よりディーリングの世界に入る。1989年から5年間シカゴに赴任、その間多くの著名トレーダーと出会う。日本に戻ってからは為替部門に従事。2004年3月までUFJ銀行の為替部門の統括次長兼チーフディーラーを勤めていたが、同年4月に独立。内外の投資家にも太いパイプを持ち、業界を代表するトレーダーとして活躍するが、2009年8月第45回衆議院選挙に立候補し、初当選。現在は、経済アナリスト活動など多忙な毎日を送る。元東京外為市場委員会委員、東京フォレックスクラブ理事歴任。株式会社マットキャピタルマネージメント代表取締役。
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