ドル高が続く場合、ユーロ/ドル、豪ドル/米ドルのトレードがよさそう【マット今井 実践トレードのつぼ】
収録日:2023/8/17
元邦銀ディーラーの今井雅人氏が現状の世界経済を詳細に分析し、今後の為替相場動向まで踏み込み見通しを示します。
目次
0:00 市場概況・米CPI、米雇用統計の解説
0:49 米長期金利について
2:59 ユーロ/ドル解説
3:28 豪ドル/米ドル解説 中国経済に警戒
4:54 ドル円展望 円買い介入は難しそう
6:11 来週までの為替予想
概要
この1週間の流れとしては、円安とドル高が進行しています。円安については、以前も触れた通り、方向感が欠ける中で、金利差の影響が出やすくなるという事態になっています。日銀はイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用を柔軟にしましたが、しばらくは制度変更がないとの見方が多く、その結果円売りが進行しています。今回は、アメリカの長期金利についてお話ししたいと思います。アメリカの10年債の利回りを見てみると、既に4.2%を超え、今年の最高水準に達しています。
今月、重要な指標として注目された米雇用統計とアメリカの消費者物価指数(CPI)は、強い数字ではありませんでした。特に、非農業部門の就業者数は予想を下回り、失業率や平均賃金は予想以上でした。CPIも年率で予想を0.1%下回りましたが、最近は消費者物価指数の下落が止まってきたことや、米雇用統計の数字が弱くない点に注目が集まり、アメリカの景気が比較的堅調であるという見方が強まっています。
FOMCの議事要旨を見ると、年内にさらなる利上げを視野に入れていることが明らかになりました。市場のムードとしては、アメリカが年内にもう一度利上げを行うとの期待が高まっており、インフレが高止まりするとの予測も出ています。私自身は、この流れが続くと予測しており、特にドル高相場の可能性が高いと考えています。
例えば、ドル相場での主要なペアであるユーロ/ドルを見ると、現在1.08台を記録しています。また、IMMのポジションデータによると、ユーロのショートポジションが増加しています。
豪ドルに関しても、アメリカの金利の影響を受けやすいため、下落が続いています。特に、中国の不動産業界の動向や投資信託の支払い不履行の報道が影響している可能性があります。中国の不動産価格の指標も下落しており、豪ドルに対するネガティブなムードが強まっています。しかし、ドルの上昇は主にアメリカの金利の上昇によるものと考えられます。
現在、ドル円は146円台を記録しており、円安要因とドル高要因の両方が影響していると思われます。このペースの円安進行に対して、日本当局が介入する可能性があるとの見方も出ていますが、現状では介入が難しい状況にあると考えられます。私は、150円のラインを警戒しています。ポジションを持っている方は、ストップを適切に設定し、リスクを管理することをおすすめします。
今後の1週間に大きな指標は予定されていませんが、ドルに対する上昇圧力が続くと予測しています。私の戦略としては、ドルのロングポジションと円のショートポジション、特にユーロ/ドル、ユーロ/円のポジションを取りながら、市場の動きに注目していきたいと考えています。
今井雅人 氏
1962年生まれ、岐阜県下呂市出身。上智大学卒業後、1985年に三和銀行入行、1987年よりディーリングの世界に入る。1989年から5年間シカゴに赴任、その間多くの著名トレーダーと出会う。日本に戻ってからは為替部門に従事。2004年3月までUFJ銀行の為替部門の統括次長兼チーフディーラーを勤めていたが、同年4月に独立。内外の投資家にも太いパイプを持ち、業界を代表するトレーダーとして活躍するが、2009年8月第45回衆議院選挙に立候補し、初当選。現在は、経済アナリスト活動など多忙な毎日を送る。元東京外為市場委員会委員、東京フォレックスクラブ理事歴任。株式会社マットキャピタルマネージメント代表取締役。
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