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ポンド/円・豪ドル/円の8月見通し「主要中銀の8月政策金利発表は英・豪・NZのみ」

【外為総研 House View】

House View

執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也

目次

▼ポンド/円
・ポンド/円の基調と予想レンジ
・ポンド/円 7月の推移
・7月の各市場
・7月のポンド/円ポジション動向
・8月の英国注目イベント
・ポンド/円 8月の見通し

▼豪ドル/円
・豪ドル/円の基調と予想レンジ
・豪ドル/円 7月の推移
・7月の各市場
・7月の豪ドル/円ポジション動向
・8月の豪州・中国注目イベント
・豪ドル/円 8月の見通し

ポンド/円

ポンド/円の基調と予想レンジ

ポンド/円 7月の推移

7月のポンド/円相場は176.318~184.010円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約0.3%下落した(ポンド安・円高)。上旬は、ドル/円が下落した影響で上値が重かったが対ドルでのポンド高が支えとなり179円台で下げ渋った。中旬は、英6月消費者物価指数(CPI)の鈍化などから英中銀(BOE)の利上げ期待が後退したためポンドが弱含んだ一方、日銀が7月も大規模緩和を維持するとの観測で円も弱含んだため180円台、181円台を中心に方向感なくもみ合った。

終盤は日銀の金融政策に絡んだ観測報道もあって、円が乱高下する中で大きく上下に振れた。28日の日銀金融政策決定会合を終えて1カ月半ぶりに176.32円前後へと下落したのち、一転して円売りが再開すると31日には183円台を回復した。ただ、5日に付けた2015年12月以来の高値184.01円前後は超えられずに182.65円前後で取引を終えた。

出所:外為どっとコム

10日
ベイリーBOE総裁は「物価と賃金の現在の上昇率は物価目標と一致していない。直近のデータで8.7%だった消費者物価(前年比上昇率)は容認できないほど高く、われわれは2%の目標に引き下げていかなければならない」と強調。利上げを継続する考えをあらためて示した。

また、ハント英財務相は「公的部門の給与を含め財政について責任ある意思決定を必要とする。借り入れが増えること自体がインフレ圧力になるからだ」と指摘。インフレ抑制を優先して減税には後ろ向きな考えを強調した。

11日
英6月失業率は4.0%、失業保険申請件数は2.57万件増と前月からやや悪化(5月3.9%、2.25万件減)。3-5月の国際労働機関(ILO)基準失業率も4.0%と予想および前月(3.8%)から悪化した。

一方、3-5月の週平均賃金は前年比+6.9%と予想(+6.8%)を上回り前月(+6.7%)から伸びが加速した。予想を上回る賃金上昇を受けてBOEの利上げが長期化するとの観測が強まった。ただ、ドル/円の下落が重しとなりポンド/円は小幅に下落した。

12日
ベイリーBOE総裁は、この日公表した金融安定報告書に沿って「利上げによって金融システムにストレスが生じている」「利上げの完全な影響が表れるまでには時間がかかる」との認識を示した。また、英労働市場について「(データには)興味深い証拠がいくつかあると思う。たとえば求人の指標は労働市場が減速している兆しを示している」と指摘した。

13日
英5月国内総生産(GDP)は前月比-0.1%と予想(-0.3%)ほどには減少しなかった。4月は+0.2%だった。一方、英5月鉱工業生産は前月比-0.6%と予想(-0.4%)以上の落ち込みとなり、減少幅は4月(-0.2%)から拡大した。同貿易収支は187.23億ポンドの赤字で、赤字額は市場予想(148.00億ポンド)より多かった。

19日
英6月CPIは前年比+7.9%と2022年3月以来の7%台に伸びが鈍化。市場予想(+8.2%)を下回った。エネルギー・食品・アルコール飲料・タバコを除いたコアCPIも前年比+6.9%と市場予想(+7.1%)を下回った。これを受けてBOEの利上げ長期化観測が後退した。

ただ、その後BOEのラムスデン副総裁は「インフレ率は大幅に低下し始めているが、依然として高すぎる」「インフレ圧力が持続するという証拠があれば、さらなる引き締めが必要になるだろう」などと発言した。

21日
英6月小売売上高は前月比+0.7%と市場予想(+0.2%)を上回った。高インフレにもかかわらず英国の消費は堅調で、自動車燃料を除いた売上高も前月比+0.8%と予想(+0.2%)を上回る伸びとなった。

24日
英7月製造業PMI・速報値は45.0と市場予想(46.0)に届かず前月(46.5)から低下。同サービス業PMI・速報値も51.5と低調だった(予想53.0、前月53.7)。

7月の各市場

7月のポンド/円ポジション動向

【情報提供:外為どっとコム】

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  • ※ 尚、このポジション比率情報は情報提供を目的としており、投資の最終判断は投資家自身でなさるようお願い致します。

 

8月の英国注目イベント

ポンド/円 8月の見通し

英中銀(BOE)は8月3日の金融政策委員会(MPC)で政策金利を5.00%から5.25%に引き上げると予想されている。利上げ幅は25bp(0.25%ポイント)と前回6月の50bpから縮小する見通しだ。7月11日に発表された4-6月の週平均賃金が上振れした直後の英金利先物は50bp利上げを完全に織り込んだが、19日の6月消費者物価指数(CPI)の鈍化で25bp利上げへと織り込みが変化した。現状でも50bp利上げ期待がいくぶん残っていることから、予想通りの25bp利上げではポンドを押し上げるには力不足だろう。

今後の利上げに対するBOEの姿勢が焦点となるが、市場ではインフレの鈍化傾向と景気先行きの不透明感からタカ派度合いが薄れるとの見方が多いようだ。仮に米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中銀(ECB)と同様に「データ次第」を強調するようなら、ポンドは下落する公算が大きい。FRBもECBも7月会合で利上げを行ない、次回9月利上げについては「データ次第」としたが、ドル安とユーロ安に振れた。いずれも、次回利上げに対する明確な姿勢を示さなかったことで利上げ打ち止めが近いとの観測を生んだ。

なお、今回のMPCでは金融政策報告で最新の経済・物価見通しが公表される他、ベイリー総裁の会見も行われる。6月CPIの大幅鈍化(前年比+8.7%から+7.9%へ)を受けてBOEの物価見通しに変化があるか注目したい。5月の金融政策報告では2023年末のインフレ見通しを5.0%、24年末を2.25%としていた。これがさらに引き下げられるようなら利上げ期待がさらに後退することも考えられる。8月のポンド相場は3日のBOEによる政策金利発表が最大のヤマ場になると見ており、その後は夏季休暇シーズンに入ったことで次第に動意が薄れると予想している。
(予想レンジ:177.500-186.000円)

豪ドル/円

豪ドル/円の基調と予想レンジ

豪ドル/円 7月の推移

7月の豪ドル/円相場は91.798~97.832円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.5%下落した(豪ドル安・円高)。

序盤は、ドルの軟化によってドル/円が下落した動きにつれて弱含んだが、豪ドル/米ドルの上昇が支えとなり93円台で下げ渋った。中旬は豪6月雇用統計の好結果などから95円台に持ち直す場面もあったが、中国の景気後退懸念が重しとなり伸び悩んだ。下旬は26日に発表された豪4-6月期消費者物価指数(CPI)が予想以上に鈍化した上に、日銀が28日にイールドカーブ・コントロール(YCC)の柔軟化として長期金利の許容上限を事実上引き上げたことから豪ドル安・円高 に振れて6月2日以来の91円台に差し込んだ。

しかし、日銀のYCC柔軟化は事前報道通りで想定内との見方や、柔軟化による日本の金利上昇は限定的との見方で一転して円売りに傾くと、31日には95円台を回復して取引を終えた。

出所:外為どっとコム

4日
RBAは政策金利を4.10%に据え置くと発表。声明では「インフレ率は一段と鈍化したが、依然として高すぎる」として「妥当な時間枠でインフレ率を目標に戻すことを目指す」と表明。インフレや景気動向次第では「金融政策のさらなる引き締めが必要になるかもしれない」として今後の利上げ再開に含みを持たせた。

6日
豪5月貿易収支は117.91億豪ドルの黒字となり、黒字額は予想(109.00億豪ドル)を上回った。鉱物や農産物を中心に輸出が前月比+4.0%と4月の-6.0%から持ち直したことが寄与した。

10日
中国6月CPIは前年比±0.0%と市場予想(+0.2%)を下回った。同生産者物価指数(PPI)も前年比-5.4%と予想(-5.0%)を下回って低下した。PPIのマイナス幅は2015年12月以来の大きさだった。中国のデフレと景気後退を巡る懸念から豪ドルは反落した。

17日
中国4-6月期国内総生産(GDP)は前年比+6.3%となり、1-3月期(+4.5%)からプラス幅が拡大したが、市場予想(+7.1%)は下回った。コロナ禍からの経済回復が期待ほど進んでいないことが明らかになった。なお、中国6月鉱工業生産は前年比+4.4%と予想(+2.5%)を上回った一方、同小売売上高は前年比+3.1%と予想(+3.3%)を下回った。

18日
RBAは7月理事会の議事録を公表。政策金利を4.10%に据え置いた決定について「政策が明らかに制約的で、家計の逼迫が急激な景気減速と失業率の上昇につながるリスクがあることから政策金利据え置きを決定した」と説明。

ただ、一方で「家賃上昇や生産性低下、電気料金の上昇などによるインフレへの影響がまだ十分に把握できていない」として「インフレ抑制に依然として政策引き締めが幾分必要になる可能性がある」との認識を示した。

20日
豪6月失業率は3.5%と市場予想(3.6%)を下回り、2022年10月に記録した過去最低水準の3.4%に再び接近。豪6月新規雇用者数は3.26万人増と市場予想(1.50万人増)を上回る堅調な伸びとなった。雇用統計の良好な結果を受けてRBAが8月に利上げを再開するとの観測が高まった。

26日
豪4-6月期CPIは前年比+6.0%と市場予想(+6.2%)を下回り、1-3月期の+7.0%から鈍化。コアCPIに当たるCPIトリム平均も前年比+5.9%に伸びが鈍化した(予想+6.0%、前回+6.6%)。これを受けてRBAが翌週の理事会で利上げを見送るとの観測が強まった。

7月の各市場

7月の豪ドル/円ポジション動向

【情報提供:外為どっとコム】

  • ※ データの更新は、NYC時に行われます(前営業日のデータが追加)。また、過去180日間のデータが表示されます。
  • ※ 外為どっとコムのFX口座「外貨ネクストネオ」でお取引をされているお客様のポジション保持情報の比率を表しています。
  • ※ 尚、このポジション比率情報は情報提供を目的としており、投資の最終判断は投資家自身でなさるようお願い致します。

 

8月の豪州・中国注目イベント

豪ドル/円 8月の見通し

豪中銀(RBA)は8月1日の理事会で2会合連続の政策金利据え置きを決定。声明では「インフレが妥当な期間内に目標に戻ることを確実にするためには、金融政策のさらなる引き締めが必要になるかもしれないが、それは経済とインフレがどのように進展するかによって決まる」などとして追加利上げに含みを持たせたが、市場では利上げサイクルの終了を予想する声も出始めた。

そうした中で8月の豪ドル/円相場は上値の重い展開が予想されるものの、日豪金利差の観点からは下値も堅そうだ。そうなると、豪ドル/円相場の決め手は「外部要因」となる公算が大きい。リスク選好地合いで買われやすくリスク回避時に売られやすい豪ドルと、全く反対の性格を持つ円の組み合わせである豪ドル/円は、市場センチメントに最も敏感な通貨ペアだ。主要国の利上げ局面が終了間近との見方から世界的に株価が堅調を維持するようなら、豪ドル/円もRBAの利上げ打ち止め観測による上値の重さを払拭して6月に付けた年初来高値(97.68円前後)を窺う可能性があると見る。

一方、中国の景気不安が高まるなどして市場センチメントが悪化するようなら、豪ドル/円の下値リスクも高まると見られる。8月は夏季休暇シーズンで参加者が減少することもあって、市場がショック商状に見舞われやすい月として知られるだけに一定の警戒は必要であろう。
(予想レンジ:91.500~98.000円)

 
kanda.jpg 株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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