前回の記事で、ドル/円、豪ドル/円、トルコリラ/円の3つの通貨ペアで長期にわたってFX積立投資をした場合のシミュレーション結果を紹介しました。
今回はメキシコペソ/円でシミュレーションしてみます。
■結論だけ知りたい方はこちらの動画から!
【参考記事】
外貨投資を20年続けたシミュレーションでわかった、「長期投資」に向いているFX通貨ペアとは?(ドル/円、豪ドル/円、トルコリラ/円)
https://www.gaitame.com/media/entry/2022/12/12/160000
目次
- ▼メキシコペソ円をレバレッジ1倍で「らくらくFX積立」をしたときのシミュレーション
- ▼メキシコペソ円をレバレッジ2倍または3倍で「らくらくFX積立」をしたときのシミュレーション
- ▼レバレッジ2倍でも相場急変時にはロスカットが走る可能性はある
- ▼スワップポイント再投資をするとどうなるか?
- ▼らくらくFX積立の複利効果
- ▼SP再投資のメリット・デメリット、特徴を掴む
- ▼ドルコスト平均法の弱点に対して
- ▼メキシコペソ/円に対するらくらくFX積立のシミュレーションでわかったこと
- ▼メキシコペソ/円でのらくらくFX積立の設定
メキシコペソ/円をレバレッジ1倍で「らくらくFX積立」をしたときのシミュレーション
期間 2014年11月〜2022年11月
毎月の入金額 10,000円
毎月の購入金額 10,000円
レバレッジ 1倍
購入価格 その月の終値
MXN/JPY 月足終値 2014年11月〜2022年11月
上記のグラフは、外為ネクストネオから出力したメキシコペソ/円の月足チャートです。
毎月の終値で10,000円分のメキシコペソ/円を購入するとき、2014年11月は終値が 8.504だったので購入数量は10,000 ÷ 8.504 ≒ 1175(※小数点以下は切り捨て)となります。
上記のメキシコペソ/円の月足終値に対して購入数量をすべて計算すると、以下のようになります。
メキシコペソ/円の価格が上がっているときには購入数量は少なくなり、価格が下がっているときに購入数量は大きくなっているのがわかると思います。
今回は毎月、定額でメキシコペソ/円を買い付けるので、購入数量の累計を重ね合わせると、以下のような右肩上がりのグラフになります。
※左側の縦軸は任意の時点の購入数量のメモリ
※右側の縦軸は任意の時点の累計購入数量のメモリ
ここで1通貨ペアあたりの月ごとの累計スワップポイントは、外為どっとコムの過去履歴より、以下のように与えられています。
メキシコペソ/円1通貨ペアあたりの月ごとの累計スワップポイント
こちらの1通貨ペアあたりの累計スワップポイントと、その時々の保有数量をかけ合わせると、以下のように毎月取得したスワップポイントが計算されます。
月毎に取得したスワップポイントを累計すると以下のようになります。
ここで、毎月10,000円入金しているので入金額の累計は以下のようになります。
以下のグラフが累計預入金と累計スワップポイントの和になります。
積立が進むにしたがって保有数量が増えるので、それに対するスワップポイントも大きくなり、スワップポイントによる資産の伸び率が大きくなっていることがわかります。
それでは評価損益はどうなっているのでしょうか。
まず現在保有しているポジションの平均購入価格を計算します。
計算式は、すべてのポジションについて、約定代金(購入価格×購入数量)を計算し、それを足し合わせた数を、保有数量で割ると算出できます。
加重平均価格={毎月の(購入価格×購入数量)の足し合わせ}÷保有数量
平均購入価格の推移は以下のように表すことができます。
為替レートの変動に対して、緩やかな平均購入価格のグラフになっています。
評価損益は、(終値−平均購入価格)×保有数量で計算され、以下のように表されます。
ひとつ前のメキシコペソ/円の月足終値と平均購入価格のグラフを比較してみると、価格が平均購入価格よりも上のときに評価損益はプラスになり、下のときはマイナスになっています。また、右にいけば行くほど保有数量が大きくなっていますので、プラス幅が価格差よりも大きくなっているのがわかります。
この評価損益のグラフを、入金額累計とスワップポイントの累計の和に合算させると、2014年11月からメキシコペソ/円でらくらくFX積立を約8年間続けた場合の資産総額のシミュレーション結果は以下のようになります。
累積スワップポイントも評価損益もプラスとなって、資産が大きくなっているのがわかります。
レバレッジ1倍 | |
積立月数 | 97ヶ月 |
積立年数 | 8.1年 |
積立金額 | 970,000円 |
累計保有数量 | 164,940 |
累計スワップポイント | 210,048円 |
為替差益 | 212,779円 |
取引損益 | 422,827円 |
増減率 | 43.59% |
年平均増減率 | 5.39% |
※年平均は単純な算術平均
それではレバレッジを上げると、どうなるでしょうか。
メキシコペソ/円をレバレッジ2倍または3倍で「らくらくFX積立」をしたときのシミュレーション
期間 2014年11月〜2022年11月
毎月の入金額 10,000円
毎月の購入金額 20,000円
レバレッジ 2倍
購入価格 その月の終値
レバレッジを上げると購入できる数量が増えます。
この数量に対する獲得累計スワップポイントは以下のようになり、
預入金とスワップポイントの累計は以下のようなグラフになります。
レバレッジ1倍よりもスワップポイントの増加が大きいことがわかります。
これに対して評価損益はどうでしょうか。
評価損益のグラフも、レバレッジ1倍のときの評価損益よりも、大きくなっていることがわかります。
この評価損益のグラフと預入金とスワップポイントの累計のグラフを足し合わせると、以下のようなシミュレーション結果になります。
レバレッジ1倍のときよりもスワップポイントと評価益が大きくなっていることがわかります。
レバレッジ3倍の場合も同様に数量を計算し、累計スワップポイントと評価損益を計算すると以下のシミュレーション結果が得られます。
レバレッジを上げると数量が増加するが注意が必要
レバレッジ1倍 | レバレッジ2倍 | レバレッジ3倍 | |
積立月数 | 97ヶ月 | 97ヶ月 | 97ヶ月 |
積立年数 | 8.1年 | 8.1年 | 8.1年 |
積立金額 | 970,000円 | 970,000円 | 970,000円 |
累計保有数量 | 164,940 | 329,937 | 494,929 |
累計スワップポイント | 210,048円 | 420,205円 | 630,373円 |
為替差益 | 212,779円 | 425,622円 | 638,459円 |
取引損益 | 422,827円 | 845,827円 | 1,268,832円 |
増減率 | 43.59% | 87.20% | 130.81% |
年平均増減率 | 5.39% | 10.79% | 16.18% |
レバレッジを上げるにつれて増減率が大きくなることがわかりました。
ただ、ここで注意が必要です。それはロスカットです。
らくらくFX積立でも保有ポジションの評価損失が大きくなり、有効比率が30%を下回った場合にはロスカットが走ります。そのため有効比率が30%を下回るときの価格をグラフで表示しました。
レバレッジ1倍のときにロスカットが走る価格(赤線)
レバレッジ1倍のときはメキシコペソ/円の価格(青線)よりも、かなり下のほうにあるので、ロスカットが走るまではまだ余裕があることがわかります。
レバレッジ2倍のときにロスカットが走る価格(赤線)
レバレッジ2倍になるとロスカット価格(赤線)はかなり上のほうになり、もし相場が大きく急落してしまった場合にはロスカットが走るかもしれません。
この青線は終値しか表示されていませんので、ある日の安値が赤線を下回って、もしかするとロスカットが走っている可能性もあります。
レバレッジ3倍のときにロスカットが走る価格(赤線)
レバレッジ3倍のときのロスカット価格を確認すると、上記の赤丸のところでメキシコペソ/円の価格(青線)がロスカット価格を下回っており、ロスカットが走ることがわかりました。
らくらくFX積立は少額から低レバレッジで運用できることから、リスクが小さく見えますが、相場が急落して評価損失が大きくなった場合は、ロスカットが走る可能性もあるので、有効比率には常に注意をしておくことが必要です。
レバレッジ2倍でも相場急変時にはロスカットが走る可能性はある
レバレッジ1倍〜3倍のときのロスカット価格を同時に描画しましたが、数年単位の長期投資をする場合、価格は比較的大きく動き、レバレッジ2倍でも、相場急変時にはロスカットが走る可能性があることがわかります。
そのため、もし「長期投資でほったらかし」の運用がしたいのであれば、レバレッジ2倍や3倍で積立投資をする場合は、ロスカットの発生確率を下げるために、常に定期購入する金額よりも多めの入金をして有効比率を高くしておくと良いでしょう。
スワップポイント再投資をするとどうなるか?
らくらくFX積立には保有しているポジションに対して付与されたスワップポイントが設定金額に達したときに、設定中のポジションと同通貨を同レバレッジで自動買付する「スワップポイント再投資(SP再投資)」という機能があります。
https://www.gaitame.com/service/rakutsumu/swap-set.html
レバレッジ1倍で「SP再投資」をしたときのシミュレーション
期間 2014年11月〜2022年11月
毎月の入金額 10,000円
毎月の購入金額 10,000円
レバレッジ 1倍
購入価格 その月の終値
SP再投資 100円たまったら再投資
SP再投資をしない場合と再投資した場合の数量のグラフ
SP再投資をしない場合の保有数量に付与されるスワップポイント
SP再投資をした場合の保有数量に付与されるスワップポイント
らくらくFX積立の複利効果
スワップポイント再投資をするとシミュレーションの最後の方では10,000円を超えるスワップポイントを得ることができました。これが、運用で得た収益や利息を再び投資することで、利息が利息を生んでふくらんでいく「複利効果」です。
SP再投資をした場合の累計スワップポイント
スワップポイント再投資により、スワップポイントが100円以上たまると全額預入金に組み入れられます。そのため、保有数量がある程度大きくなるとスワップポイントが付与された時点で100円を超えるようになり、すぐに預入金に組み入れられます。
SP再投資機能によってスワップポイントから預入金に組み入れられた現金の累計グラフは以下のようになります。
SP再投資機能によってスワップポイントから預入金に組み入れられた現金
入金額とあわせた現金総額の累計は以下のようになります。
現金総額の推移(預入金+SP再投資で預入金に組み入れられた部分)
ここで、SP再投資をしない場合とした場合の現金総額を比較します。
SP再投資をしない場合のスワップポイント+預入金の推移
SP再投資をした場合の預入金の推移
複利効果によって、スワップポイント再投資をした場合のほうが、総資産が大きくなっていることがわかります。
SP再投資をしない場合の評価損益のグラフ
SP再投資をする場合の評価損益のグラフ
SP再投資をしない場合の資産のグラフ
SP再投資をする場合の資産のグラフ
SP再投資をすることによる複利効果
SP再投資なし | SP再投資あり | |
レバレッジ | 1倍 | 1倍 |
積立月数 | 97ヶ月 | 97ヶ月 |
積立年数 | 8.1年 | 8.1年 |
積立金額 | 970,000円 | 970,000円 |
累計保有数量 | 164,940 | 206,925 |
累計スワップポイント | 210,048円 | 0円 |
SP再投資による組入金 | 0円 | 244,226円 |
為替差益 | 212,779円 | 269,778円 |
取引損益 | 422,827円 | 514,004円 |
増減率 | 43.59% | 52.99% |
年平均増減率 | 5.39% | 6.56% |
上記の表から、SP再投資をすると積立金額は同じなのにもかかわらず、累積保有数量および獲得できるスワップポイントも大きくなることがわかります。
そのため、保有数量をなるべく速く積み上げて、獲得スワップポイントを大きくするのに、SP再投資は非常にいい設定であるということがわかります。
SP再投資のメリット・デメリット、特徴を掴む
SP再投資設定をするメリットは、より速く保有数量を増やせる点です。
また、保有数量が増えるので、獲得スワップポイントも増やしやすくなります。
ただ、保有数量が増えるので、より為替変動の影響を総資産が受けやすくなる点に注意が必要です。
今回のシミュレーションでは為替レートが平均購入価格以上だったので為替差益が出ていましたが、タイミングによっては為替レートが平均購入価格以下になって為替差損が出てしまう可能性があります。
そして、その為替変動による損益への影響は、保有数量が大きくなるSP再投資をした場合のほうが大きいです。
SP再投資のメリットとデメリットを十分理解して設定する必要があります。
ドルコスト平均法の弱点に対して
前回の記事でも説明しましたが、定額で定期的に購入する積立投資は「ドルコスト平均法」として知られています。
「ドルコスト平均法」は「時間分散することで、平均購入価格が平準化されるので、リスクを抑えられる」と言った説明が、ネット上の情報サイトなどで見受けられますが、注意が必要です。
この手法は、要するに「すべてロングポジションを保有する」戦略なので、対象金融商品が上昇トレンド、もしくはいつか上昇する見込みがあることが大切です。
【参考記事】
外貨投資を20年続けたシミュレーションでわかった、「長期投資」に向いているFX通貨ペアとは?(ドル/円、豪ドル/円、トルコリラ/円)
https://www.gaitame.com/media/entry/2022/12/12/160000
したがって、メキシコペソ/円が上昇トレンドなのか、もしくは上昇する見込みがあるのかを確認しましょう。
長期的目線(約20年)からのチャート分析:世界規模の金融危機に注意
メキシコペソ/円 月足 2007年〜
月足チャートでチャート形状を確認すると2008年のリーマンショック、2015年のチャイナショック、2020年のコロナショックで下落しています。
新興国通貨なので世界的な金融危機が発生すると、リスク回避のために新興国市場から資金が流出することが多いです。メキシコペソに投資するときには、そのような金融危機が発生した場合にどのように対処するか、あらかじめ決めておくことが大切です。
中期的目線(直近5年間)からのチャート分析:上昇トレンドを確認
メキシコペソ/円 月足 2007年〜
ファンダメンタル的側面では、メキシコは石油や天然ガス、銀などの鉱物資源が産出される資源国であり、最大の貿易相手国がアメリカなので、アメリカとの関係が良好であれば安定的な経済成長が期待できる国です。
資源があり、経済成長も期待されて、地政学的リスクも小さい国には、お金が流入して通貨高になることが多いので、メキシコペソは上昇を期待していい通貨だと言えます。直近のチャート形状も上昇トレンドを形成しています。
今後の相場として、2020年安値を起点としたサポートラインで下支えされていれば、上昇トレンド継続と考えることができ、相場が安定していれば、チャイナ・ショック前の2014年高値までは、上昇余地とも捉えられますので、らくらくFX積立がやりやすい相場だと思います。
メキシコペソ/円に対するらくらくFX積立のシミュレーションでわかったこと
メキシコペソ/円に対するシミュレーション結果でわかったことをまとめます。
・メキシコの金利が高いので安定的にスワップポイントが得られる
・長期的な価格変動ではレバレッジ2倍でもロスカットが走る恐れがあるため、レバレッジを上げる場合は投資額よりも多めに入金しておく必要がある
・「コツコツ積み立ててほったらかし投資」をしたいならレバレッジ1倍を推奨
・スワップポイント再投資をすると価格変動の影響で大きく資産が減る恐れもある
・スワップポイント再投資で積極的に保有数量を増やすと、得られるスワップポイントは大きくなる。
メキシコペソ/円でのらくらくFX積立の設定
以上を踏まえて、メキシコペソ/円のように安定的に高いスワップポイントが付与される通貨ペアの場合は、保有数量を増やす期間とスワップポイントを安定的に受け取る期間と分けたほうがいいと思いました。
保有数量を増やす期間
・スワップポイント再投資機能をオンにする
・相場を注視できるのであればレバレッジをあげることを検討する
スワップポイントを受け取る期間
・ある程度のスワップポイントがもらえるようになったらSP再投資機能をオフにする
・レバレッジをあげていたら1倍に下げる
・スワップポイント自動振替機能を使うことを検討する
期間 2014年11月かららくらくFX積立をした結果
SP再投資なし | SP再投資あり | |
累積保有数量 | 164,940 | 206,925 |
2022年11月の獲得スワップ | 8,569円 | 10,691円 |
例えば、これまでのシミュレーションでは、2014年11月から1万円を積み立てると、2022年11月には1万円を超えるスワップポイントがもらえます。
このままSP再投資を続けてもいいのですが、ポジションが大きくなりすぎると、資産を為替変動に晒し続けることになります。そこで、SP再投資は止めて、スワップポイント自動振替機能をオンにして、スワップポイント分を現金に振り替えて引き出してもいいのではないでしょうか。
さて、今回は毎月の入金額と購入金額を10,000円にしましたが、この金額を2倍、3倍にすると獲得スワップも約2倍、約3倍となります。懐事情と相談しながら、リスクを抑える設定をすると、らくらくFX積立では比較的簡単に大きなスワップポイント収入が得られるので、安定的な長期資産形成の手段のひとつとして使えるのではないでしょうか。
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