執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
執筆日時 2022年10月7日 15時00分
英国のテーマは『インフレ抑制』から『財政健全化』へ、カントリーリスク低減に大規模減税撤回なら・・・
10月3日週の欧州通貨は上値の重い展開
英国で富裕層減税案が撤回されたこと、欧州系投資銀行のデフォルト懸念が和らいだことで、ユーロ/円は144.085円、ポンド/円は165.711円まで上昇しました。ただ、先々への不透明感は払しょく出来ずにいるため、買い一巡後は戻り売りに押されユーロ/円は141円台半ば、ポンド/円は161円台前半まで押し込まれました。(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。

FXライブ/為替予想【実践リアルトレード】ADP・ISM LIVE、ドル高調整は続くのか ドル/円、豪ドル/円 徹底解明 エントリー・利食い・損切りポイント徹底解説、注目材料(2022年10月05日)- YouTube
イタリアの予算提出で波風が立つか
欧州経済はインフレと成長鈍化の二重苦の状況が続いています。エネルギー価格上昇については、欧州連合(EU)首脳が7日に、インフレ対応に向けガス料金に上限を設定するよう、欧州委員会に要請することを固めました。前向きな話題ではありますが、これまで、ドイツ、オーストリア、オランダ、ハンガリーなどが反対していた経緯もあって、仮に首脳会議を無難に通過しても、欧州委員会での協議がどうなるかは分かりません。また、燃料価格が抑制できるかどうかも不明で、燃料需要の高い冬を前にして油断できそうにありません。ECBの積極的なインフレ抑制の姿勢も変わっておらず、安定的な成長への脅威は残っています。
また、イタリアの動向も気になります。15日に欧州委員会へ23年の予算を提出予定ですが、ここで躓けばEUからの補助金や復興基金の受け取り遅延などの弊害で、EU統合深化への懸念からユーロ売り圧力が高まる危険もあります。ユーロを積極的に買い進む状況にはないように感じられます。
ポンド、カントリ―リスク低減が最優先課題へ
英中銀による国債の買い支えで、英金融市場は落ち着いていますが、英国からの資金流出懸念は完全にはなくなっていません。14日までとした今回の英中銀による国債買い入れ終了期限が迫る中、再び市場が国債売り姿勢を強める危険はありそうです。特に、11日の失業率と同時に公表される給与統計で、インフレ加速への警戒心が煽られれば、19日のインフレ指標を前に政府の借入コスト上昇による財政不安から、ポンド安が再燃するかもしれません。
しかも、今回のインフレが、EU離脱で英国から出稼ぎ外国人の流出による労働力不足、コロナ感染によるサプライチェーンの混乱、さらにはウクライナ戦争によるエネルギー問題が重なり、人・物不足が進んでいるため、インフレ抑制まで長期間かかる可能性があります。ポンド復活への期待は持ちづらい状況と言えそうです。ただし、失点を続けるトラス政権が国内の金融市場の安定化を優先して、目玉政策である大型減税策の撤回ないし規模縮小に走れば、財政悪化への懸念が後退しポンド買い戻しが強まるリスクはありそうです。
ユーロ/円140.800円付近が強弱判断ポイントに
8月まで遡れば未だ上昇トレンドの中での振幅と考えられますが、9月以降に絞れば145.638円を頭とした下降チャネルでの調整と捉えることも可能で、判断に迷います。ただ、足もとに近い部分が目先のトレンドに影響を与えるとするなら、下降チャネルに上値を抑えられて、目先下向きバイアスが強いと見るべきでしょう。140.800円付近のサポートラインを割り込むかどうかが着目点となり、同レベルを下回れば、9月27日高値(139.542円)まで調整幅が広がりそうです。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:EUR/JPY:139.500-143.500
ポンド/円、21日線割れなら下攻め加速か
介入などもあって、チャート形状はあてにできませんが、9月26日安値(148.666円)からの反発地合いはどうやら一服した感があります。21日移動平均線(執筆時点で162.020円)を終値ベースで割り込めば、さらに下げの勢いが強まり、9月26日高値(157.182円)付近まで調整幅を広げそうです。
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:GBP/JPY:157.000-165.500
10/10 週のイベント
10/11(火) 15:00 イギリス 9月失業保険申請件数
10/11(火) 15:00 イギリス 9月失業率
10/11(火) 27:35 イギリス ベイリー英中銀(BOE)総裁、発言
10/12(水) 15:00 イギリス 8月月次国内総生産(GDP)
10/12(水) 15:00 イギリス 8月鉱工業生産
10/12(水) 15:00 イギリス 8月貿易収支
10/12(水) 18:00 ユーロ 8月鉱工業生産
10/12(水) 20:35 イギリス ヒュー・ピルBOEチーフエコノミスト、発言
10/12(水) 22:30 ユーロ ラガルドECB総裁、発言
10/13(木) - イタリア 議会招集
10/13(木) 15:00 ドイツ 9月消費者物価指数(CPI、改定値)
10/14(金) - イギリス 緊急国債買い入れ終了
10/14(金) 18:00 ユーロ 8月貿易収支
一言コメント
外為どっとコム総合研究所のTEAMハロンズ(@TeamHallons) が平日毎日21時よりライブ配信しています。番組では、注目材料の紹介、テクニカル分析でエントリーポイントや利食い・損切りポイントを解説し、実際にリアルトレードも行っています。ご興味のある方は、一度、こちらにアクセスしてみてください。
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