FX/為替「米欧でインフレと景気の両睨みに」外為総研 House View ドル/円・ユーロ/円 2022年6月

【外為総研 House View】

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執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也

目次

▼ドル/円
・ドル/円の基調と予想レンジ
・ドル/円 5月の推移
・5月の各市場
・5月のドル/円ポジション動向
・6月の日・米注目イベント
・ドル/円 6月の見通し

▼ユーロ/円
・ユーロ/円の基調と予想レンジ
・ユーロ/円 5月の推移
・5月の各市場
・5月のユーロ/円ポジション動向
・6月のユーロ圏注目イベント
・ユーロ/円 6月の見通し

ドル/円

ドル/円の基調と予想レンジ

ドル/円の基調と予想レンジ

ドル/円 5月の推移

5月のドル/円相場は126.355~131.347円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.9%下落(ドル安・円高)した。

米10年債利回りが3年半ぶりに3.20%台へ上昇した9日には131.35円前後まで上伸して2002年4月以来約20年ぶりの高値を更新したが、その後は反落した。米4月消費者物価指数(CPI)の高止まりを受けて米連邦公開市場委員会(FOMC)の積極的な引締めが当面続くとの見方が強まり、米国が景気後退(リセッション)に陥るとの懸念が広がった。こうした中で米国株が下落基調を強めると米長期金利も低下したため、24日には126.36円前後まで下落した。

その後、月末にかけては、FRBの利上げが9月にも一旦ストップするとの市場観測が浮上。これを受けて米国株が下げ止まり反発するとドル/円も下げ幅を縮小した。

ドル/円 5月の推移ドル/円 5月の四本値
出所:外為どっとコム

2日
米4月ISM製造業景況指数は55.4と市場予想(57.6)に反して前月(57.1)から低下。2020年9月以来1年7カ月ぶりの低さとなった。これを受けて一時ドルが売られたものの、米長期金利や米株の反応が小さかった事もあって持ち直した。

4日
FOMCは予想通りに政策金利を50bp(0.50%ポイント)引き上げ、誘導目標を0.75-1.00%とした。声明では「継続的な利上げが適切となると予想している」と表明。「6月1日から米国債およびエージェンシーローン担保証券の保有を削減すると決定した」とした。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は会見で「さらなるインフレショックが起こる可能性がある」との見解を示した上で「今後2回の会合で50bpの利上げを想定している」と明言した。

市場は、FOMCの決定を「想定内」と受け止めた模様で声明発表後にドルは出尽くし売りで下落した。パウエルFRB議長が75bpの(急激な)利上げは積極的に検討していない」と述べ、過度な金融引き締めへの警戒感が低下すると、米長期金利の低下とともにドル売りが加速した。

6日
米4月雇用統計の主な結果は非農業部門雇用者数が42.8万人増(予想:38.0万人増)、失業率は3.6%(予想:3.5%)、平均時給は前月比+0.3%、前年比+5.5%(予想:+0.4%、+5.5%)であった。強弱マチマチの内容に対してドルは乱高下した。

11日
米4月CPIは前年比+8.3%と市場予想(+8.1%)を上回った。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数も前年比+6.2%と予想(+6.0%)を上回った。いずれも前月(+8.5%、+6.5%)から伸びが鈍化したとはいえ高止まりした。これを受けてドル買いが先行したものの、インフレ高止まりによる景気後退への懸念から米国株が下落すると円買いに傾いた。

12日
米4月生産者物価指数(PPI)は前年比+11.0%と市場予想(+10.7%)を上回ったが、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPPIは前年比+8.8%と予想(+8.9%)を下回り前回(+9.6%)から鈍化した。新規失業保険申請件数は20.3万件と予想(19.3万件)に反して増加。2月中旬以来約3カ月ぶりの高水準となった。これらを受けて米長期金利が低下幅を拡大するとドル/円は一時128円台を割り込んで下落した。

18日
米景気の先行きに対する不安からNYダウが一時1200ドル超の大幅安となる中、リスク回避の円買いが加速。クロス円につれてドル/円も下落したが、円とスイスフラン以外の通貨に対してはドルも買われたため128.00円付近で下げ渋った。

24日
米4月新築住宅販売は年率換算59.1万件と市場予想(74.8万件)を大幅に下回った。住宅ローン金利と住宅価格の上昇が重しとなり、前月比-16.6%の大幅な落ち込みとなった。米国株の安寄りも相まって米10年債利回りが急低下するとドル/円は126.36円前後まで下落。

25日
FOMC議事録が公表され、大半の参加者が今後2会合での50bp利上げが適切との見解を示したことが明らかとなった。「FRBは迅速に中立水準に移行する必要がある」とし、約40年ぶりのインフレへの対応を優先する姿勢が示された。ただ、市場は新味に乏しいとして反応薄だった。

27日
米4月個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前年比+6.3%(予想:+6.2%)、食品とエネルギーを除いたコアPCEデフレーターは前年比+4.9%と予想通りだった。伸び率は高止まりしたが、いずれも前月(+6.6%、+5.2%)から鈍化した。

5月の各市場

米国債債利回り(2年、10年)

日経平均、NYダウ平均

5月のドル/円ポジション動向

5月のドル/円ポジション動向

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6月の日・米注目イベント

6月の日・米注目イベント

ドル/円 6月の見通し

6月のドル/円相場は高値圏でもみ合う展開となりそうだ。5月30日、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事は9月も(6月、7月に続き)50bp(0.50%ポイント)の利上げを続ける可能性を示唆して、市場にくすぶっていた9月の利上げ停止観測を否定し た。ドイツやユーロ圏全体の5月消費者物価指数が前年比で過去最高の伸びを記録した事もあって、米国でもインフレ懸念が再燃している。

こうした中、米長期金利が再上昇しており、10年債利回りは31日のNY市場で一時2.88%前後まで戻して5月中旬以来の3%台回復を窺う展開となっている。5月後半に一時126円台まで下落したドル/円も米長期金利の戻りと歩調を合わせて1日の東京市場で129円台を回復。5月12日以来の130円台回復も視野に入ってきた。

ただ、米長期金利が3%台を回復して上昇すれば、米国株はハイテク株を中心に再び下落する可能性があり、リスク回避の円買いを誘発する事も考えられる。このケースではドル/円が5月9日に付けた約20年ぶりの高値131.35円前後を更新するのは難しいだろう。高値更新のためには、米長期金利が上昇しても株価が崩れない事が条件となりそうだ。一方、米5月雇用統計(3日)や米5月小売売上高(15日)の結果などから米国景気の先行き不安が改めて広がるようならドル/円も再び調整含みの展開となる可能性もある。

もっとも、米連邦公開市場委員会(FOMC)は14-15日の会合でもインフレ抑制に向けた強い姿勢を維持しつつ、米経済の強さに自信を示す公算が大きい。ドル/円は調整含みとなっても、5月24日に付けた126.36円前後を下抜ける可能性は低そうだ。
(予想レンジ:126.500~132.500円)

ユーロ/円

ユーロ/円の基調と予想レンジ

ユーロ/円の基調と予想レンジ

ユーロ/円 5月の推移

5月のユーロ/円相場は132.653~138.320円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.8%上昇(ユーロ高・円安)した。

上旬は136~138円台で推移していたが、欧州経済のスタグフレーション(不況下の物価高)懸念が意識されると12日には132.65円前後まで急落した。欧州中銀(ECB)がインフレ抑制に向けて早期に利上げに動く事で欧州経済に下押し圧力がかかるとの不安が高まった。その後も、ECBの利上げ期待で買われる場面がある一方で、景気後退懸念で売られるなど乱高下する展開が目立った。

ただ、下旬にかけては中国・上海のロックダウン(都市封鎖)緩和や、米国の利上げペース鈍化観測などで世界的に株価が持ち直す中でユーロ/円も反発。独長期金利がもち直した事もあって138円台を回復して5月の取引を終えた。

ユーロ/円 6月の推移

ユーロ/円 5月の四本値
出所:外為どっとコム

4日
米連邦公開市場委員会(FOMC)が予想通りに利上げと量的引締め(QT)の開始を決定した事でドルに出尽くし売りが入るとユーロ/ドルが上昇。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が75bp(0.75%ポイント)の大幅利上げに否定的な考えを示した事で米国株が上昇した事もあってユーロ高・円安に振れた。

6日
ビルロワドガロー仏中銀総裁は「行き過ぎたユーロ安は物価安定の目標を脅かす」「年末までに金利をプラスに引き上げるのが合理的」などと述べた。独3月鉱工業生産が前月比-3.9%と予想(-1.3%)を下回った事などから下落していたユーロはECBの利上げ期待で反発した。なお、その後独連銀のナーゲル総裁も「インフレは高すぎる」として「ECBは金融正常化を進めるべきだ」などと早期利上げを支持した。

10日
独5月ZEW景気期待指数は-34.3と前月の-41.0から改善したものの、ウクライナ戦争が長引く中で依然としてマイナス圏にとどまった。ZEW(欧州経済センター)は「専門家はまだ悪化が続くと想定しているが、以前に予想されたよりも緩やかなペースになると考えている」と説明した。

12日
ECBがインフレ抑制に重心を置いて早期に利上げに踏み切るとの見方が強まる中、欧州経済がスタグフレーションに陥るとの懸念が広がった。独長期金利の大幅低下とともにユーロ売りが活発化した。

18日
上海のロックダウンが続く中、中国景気の減速が懸念された他、米国もFRBの利上げで景気が落ち込むとの不安が広がった。NYダウ平均が1000ドル超下落するなど、リスク回避の動きが強まる中、ユーロ売り・円買いか強まった。

19日
ECBは4月理事会の議事録を公表。「物価安定を達成するという政策委員会の決意を示すため、遅滞なく行動で示すことが重要」だとの認識を一部の委員が示したことがわかった。しかし、7月の利上げ開始に関する詳細な記述はなく市場の反応も限定的だった。

23日
ラガルドECB総裁は「7月に利上げが可能」と発言。9月末までにマイナス金利(預金ファシリティ金利)から脱却する公算が大きいとの見通しも示した。独5月Ifo企業景況感指数が93.0と市場予想(91.4)を上回った事もあってユーロは上昇した。

24日
独5月製造業PMI・速報値は54.7(予想:54.0)、同サービス業PMI・速報値は56.3(予想:57.1)となった。その後に発表されたユーロ圏5月製造業PMI・速報値は54.4(予想:54.7)、同サービス業PMI・速報値は56.3(予想:57.4)であった。

30日
前日29日に中国・上海当局が、約2カ月続いたロックダウンを6月1日から緩和すると発表したことを好感して欧州株が上昇する中、ユーロ/円も強含んだ。なお、独5月消費者物価指数(CPI)は前年比+7.9%と市場予想(+7.6%)を上回る伸びとなり前月の+7.4%から加速。EU基準のCPIも前年比+8.7%に加速して過去最高の伸びを記録した。

31日
ユーロ圏5月消費者物価指数(HICP)・速報値は前年比+8.1%と過去最高の伸びを記録。市場予想(+7.8%)も上回った。変動の大きい食品やエネルギーを除いたコアHICPも前年比+3.8%に加速した(前回:+3.5%、予想:+3.6%)。

5月の各市場

5月の日経平均、独DAX

独国債利回り(2年、10年)

5月のユーロ/円ポジション動向

5月のユーロ/円ポジション動向

【情報提供:外為どっとコム】

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6月のユーロ圏注目イベント

6月のユーロ圏注目イベント

ユーロ/円 6月の見通し

5月のユーロ/円相場はドル/円が下落したにもかかわらず、ユーロ/ドルの上昇につれてやや強含んだ。ユーロの上昇についてはドルが軟化した影響もあったと見られるが、欧州中銀(ECB)が早期の利上げに動くとの観測が高まった事も支援材料になったようだ。ラガルドECB総裁は5月23日、「7月の利上げは可能」とした上に、現在-0.50%の政策金利(預金ファシリティ金利)を9月までに0.00%以上に引き上げる公算が大きいとの見通しを示した。こうした中、ユーロは6月も底堅い推移が続くと見られ、マイナス金利を脱却する見通しが立たない日本円に対しては強含みで推移すると考えられる。

ただ、ウクライナ紛争の長期化でエネルギー価格が高止まりする中、欧州景気の先行きは米国以上に不透明だ。もし、市場がECBの早期利上げについて、インフレ抑制のためには景気を犠牲にしても構わない強硬姿勢だと見做せば、ユーロ圏の景気先行き不安が広がる事になるだろう。この場合、ユーロは対ドル、対円共に下落する公算が大きい。ECBの利上げを巡り、期待と不安が交錯しやすい地合いとなる中、まずは6月9日のECB理事会でラガルド総裁が今後の利上げについてどのように説明するのか注目したい。
(予想レンジ:134.000~141.000円)

f:id:gaitamesk:20191106165135p:plain 株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。
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