こんにちは、戸田です。
本シリーズでは、オーストラリアのマクロ経済政策などをもとに、豪ドルの現状や相場見通しについてお伝えしていきます。豪ドルの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。
第16回目は「【豪ドル】中国発リスクオフに警戒も緩やかな反発を想定」です。
結論として豪ドルについては現時点で筆者は緩やかな反発を想定していますが、中国発のリスクオフには十分に警戒が必要と考えています。
順を追ってご説明いたします。
目次
1.豪ドル相場の定点観測
2.インフレ圧力の違いが結果として豪ドル売りに繋がっている
3.人民元売りが加速すると豪ドル売りが連想されやすい
4.豪ドルは緩やかな反発を想定
1.豪ドル相場の定点観測
まずは現在の豪ドル相場について、かんたんに状況を確認していきます。
AUD/USDチャート、日足
前回作成時、4月11日のAUD/USD相場が0.7442でしたので、この2週間は283Pips下落したことになります。直近の上昇が始まった2月初旬のレベルまで下がっていますので、チャートだけで判断すると弱さを感じます。
作成時点のAUD/JPYレート:91.89
AUD/JPYチャート、日足
前回報告時のAUD/JPY相場が92.93円でしたので、2週間で1.04円ほど豪ドル安が進みました。この間、円安に支えられたものの、豪ドル要因で小幅安となっています。
豪ドル関連情報の一覧表
直近2週間でコモディティ価格が若干上昇している点は豪ドルにとってプラスですが、米金融引締めに注目が集まり、米ドルが上昇する中で豪ドルは売られてしまった格好です。
またIMM通貨ポジションの豪ドルショートが減少しており、ショート勢の買戻しによる豪ドル上昇もやや見込みづらくなってしまいました。
2.インフレ圧力の違いが結果として豪ドル売りに繋がっている
ファンダメンタルズも簡単に確認していきましょう。
添付の表は特に金融政策に影響を与える「失業率」「消費者物価」、またそれらの変化を受けて反応しやすい「債券利回り」をご参考まで載せています。
ポイントは赤字で記している通り両国のインフレ圧力の違いです。インフレ圧力の強いアメリカは金融引締めのスピードが速いのですが、オーストラリアはアメリカほど引締めを急いでいない点がポイントです。
市場参加者は利上げを急いでいる米ドルを買っていく方がリーズナブルということで理解していると思います。この点が、豪ドルがなかなか上昇してこない大きな要因と考えます。
3.人民元売りが加速すると豪ドル売りが連想されやすい
あまり知られていないと思いますが、ここのところ人民元が大きく売られています。こちらは年初来のドル人民元(USD/CNH)の日足チャートですが、ここ5営業日はなかなか恐ろしい上昇(ドル高、人民元安)を描いています。
USD/CNHチャート、日足
要因としては主に米中金利差の急激な縮小、次いで上海などでのコロナ感染拡大が挙げられます。
また上海だけでなく北京市でもコロナ感染を理由に一部閉鎖、PCR検査の徹底が行われています。オミクロン株の場合、相対的に弱毒性と言われる一方で感染力が高いので、中国でコロナ感染拡大 → 全土でロックダウン → 全面的なリスクオフの展開には警戒しておきたいところです。
4.豪ドルは緩やかな反発を想定
さてここからは相場の見通しに入っていきます。また2週間後にレポートを寄稿させて頂く予定で、その時の相場としてはこれくらいにいるのではないか?という目線を以下に記しています。
オペレーションは臨機応変に行うべきものですから、あくまでご参考までにして頂きたいのですが、現時点では豪ドルが緩やかに反発していくのではないかという目線でいます。
AUD/USD 4時間足
AUD/USDは前回お伝えした通り、上昇の起点となった0.7420を綺麗に下抜けてから下落が加速しています。直近の安値は0.6967前後でして、そこを試すかどうかが一つの注目点になるのですが、現時点でそこまで豪ドルが売られる、リスクオフが強まる展開にはならないと想定しています。
豪ドルが売られる懸念材料として真っ先に挙げておきたいのが中国要因でして、新型コロナウイルスの感染が本格的に拡大し全土がロックダウンになると、直近安値を試しにいくと思います。
一方でアメリカの金融政策についてはバランスシートの縮小を含めて、ある程度織り込まれていますので、織り込まれていない要因である中国ネタの方を特に警戒しておきたいところです。
AUD/JPY 4時間足
AUD/JPYについては、USD/JPYとAUD/USDの合成ですので、このチャート単体でどうこうという判断は、実は私はあまりしません。
直近安値の90.75を下抜ける可能性は十分あるでしょうが、下がったところでは押し目買いしたいプレイヤーも少なくないでしょうから、基本的には緩やかに戻していく展開を想定しています。背景には根強い円安を挙げておきます。
それと最近は米株とAUD/JPYの連動性も高いです。ようは同じくリスク資産としての値動きをするということですね。
ですので、大きなリスクオフがなければ根強い円安も相まって緩やかに反発していくでしょうし、中国の件など、何か不確実なリスクオフ要因が表面化してくる場合には上値が重くなる点には留意しておきましょう。
本日はここまでとなります。
引き続き、みなさんのお役に立つ記事を作成してまいりますので、応援して頂けますと幸いです。
戸田裕大
<参考文献>
豪ドルチャート、IMM通貨ポジションデータ:外為どっとコム
各種データ:Investing.com
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【インタビュー記事】
戸田裕大氏レポート

代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。
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