高金利通貨である南アフリカ ランドについて、中長期にわたり買いポジションを保有する視点で、現在を分析します。
執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
Twitter:@gaitamesk_naka
目次
南アフリカ ランド/円 上昇・下落のパワーバランス
南アフリカ ランド/円をトレードするうえで重要となる経済指標やイベントを個別に点検します。
3月24日のSARB(南ア準備銀行)金融政策会合で市場予想通り0.25%の利上げを実施し政策金利を4.25%へ。会合では5名中2名が0.50%の利上げを主張。
1月の貿易収支は36億ランド。貿易黒字が大幅に減少したものの、新型コロナオミクロン株の影響もあった模様。ウクライナ情勢の悪化で金やプラチナ、パラジウムと言った南アフリカ産出資源の価格上昇が支え。次回は3月31日に2月分発表。
2月の南アフリカ・消費者物価指数(前年比)は+5.7%と前回(2022年1月分)の+5.7%から変化なし。依然として南アフリカ中銀の目標値(3%~6%)のほぼ上限での推移。また、コア指数は前年比+3.5%と、引き続き高水準(前回:+3.5%)。
2021年12月は新型コロナオミクロン株の感染拡大の影響から小幅の拡大が予想されていたが、予想(0.3%)を大幅に上回る1.5%でインフレ率(前月比)を上回る消費となった。2022年1月も前月比1.5%と予想(-0.3%)を上回った。
3月8日に発表された2021年第4四半期分は前期比+1.2%とリセッション入りは回避。この調子でプラス成長を続けたい。
①与党の支持率低下。
②3月9日国営電力会社エスコムは石炭火力発電所に故障が相次いでいることにより、計画停電の規模をこれまでの2倍にすると発表。停電時間は1日辺り6時間強となり、引き続きと電力不足が国内経済回復の足枷となる。
③失業率の高さ(34.9%)も同国経済の足枷。本日発表予定の2021年第4四半期失業率の市場予想は35.1%と悪化予想。
パワーバランス まとめ
インフレの上昇を抑えるために南アフリカ中銀は3会合連続で利上げを行ったが、インフレは南アフリカ中銀の目標(3~6%)のほぼ上限を横ばいしている。消費意欲は向上しているものの、電力不足の影響などで経済の回復は鈍い。高失業率は悩みの種。
南アフリカ ランド/円、いまが買いどき?
南アフリカ中銀は1月27日に利上げを行ったものの、インフレは高止まりが続く。また電力不足が国内経済の足枷となっている。ただ、経済は徐々に回復しており、利上げサイクルは継続しそうだ。
ウクライナ情勢による不透明感は残るものの、地理的に遠い南アフリカへの影響は限定的となりそうだ。これらを踏まえ「買いどき?指数」は現状維持とした。
経済指標予定
29日 18:30 2021年10-12月期失業率
31日 21:00 2月貿易収支
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新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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