【外為総研 House View】
目次
▼ポンド/円
・ポンド/円の基調と予想レンジ
・ポンド/円 2月の推移
・2月の各市場
・2月のポンド/円ポジション動向
・3月の英国注目イベント
・ポンド/円 3月の見通し
▼豪ドル/円
・豪ドル/円の基調と予想レンジ
・豪ドル/円 2月の推移
・2月の各市場
・2月の豪ドル/円ポジション動向
・3月の豪州・中国注目イベント
・豪ドル/円 3月の見通し
ポンド/円
ポンド/円の基調と予想レンジ
ポンド/円 2月の推移
2月のポンド/円相場は153.374~158.065円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.3%下落した(ポンド安・円高)。
3日の英中銀(BOE)の利上げを受けて156円台を回復。その後も堅調推移が続き、日銀が長期金利の上昇を容認しない姿勢を示した10日には、2021年10月20日以来の高値となる158.07円前後までポンド高・円安が進んだ。
しかし、11日の米ホワイトハウスの発表でウクライナ情勢の緊迫化が意識されると、ポンドの上値は重くなった。実際にロシアがウクライナへ侵攻した24日にはポンドにも下落圧力がかかり、一時153.37円前後まで下落したが、その後は持ち直して154.29円前後で2月の取引を終えた。ウクライナ危機の悪影響はユーロのほうが強いとの見方もあってユーロ/ポンドが下落(ユーロ安・ポンド高)した事がポンド/円の下値を支えた模様。
出所:外為どっとコム
3日
BOEは大方の予想通りに政策金利を0.25%から0.50%へと引き上げた。議事録では9人の政策委員のうち4人が0.75%への利上げを主張していたことが明らかになったほか、「今後数カ月でいっそうの緩やかな引き締めが必要」だとの点では全員が一致した。また、量的引き締め(QT)を3月から始める事も決定。満期を迎えた保有国債の再投資を停止する事でバランスシートを縮小させる。これを受けてポンドは上昇したが、ベイリーBOE総裁の会見が始まると上げ幅を縮小した。総裁は「経済の先行きには高い不確実性がある」として「金利が長期的に上昇すると推測するのは誤り」と指摘。市場の過度な利上げ織り込みをけん制した。
4日
BOEの金融政策委員会(MPC)メンバーでチーフエコノミストを兼任するピル氏は「今後も金融政策の緩やかな引き締めを見込む」として、BOEが今後数カ月以内に追加利上げに動く公算が大きい事を示唆した。
7日
欧州市場に入るとポンドが下落。前日付けの英紙は、与党保守党の有力議員が「ジョンソン首相の『パーティーゲート』疑惑による解任は避けられない」と語ったと報じた。パーティーゲート疑惑を背景に保守党内では首相に造反する動きが広がり、ジョンソン氏の党首解任を求める複数の書簡が議員委員会に届き始めているとのこと。
11日
英10-12月期国内総生産(GDP)・速報値は前期比+1.0%となり、市場予想(+1.1%)を下回った。伸び率は7-9月期GDPから横ばいだった。英12月鉱工業生産は前月比+0.3%と予想(+0.1%)を上回ったが、前月(+0.7%)から減速した。また、英12月貿易収支は123.54億ポンドの赤字となり、赤字額は予想(125.00億ポンド)をわずかに下回った。その後、米ホワイトハウスの大統領補佐官は、ロシアによるウクライナ侵攻について「いつ起きてもおかしくない」「(北京冬季)五輪の期間中にも始まる可能性がある」と述べ、ウクライナ在住米国人に48時間以内に退避するよう呼び掛けた。週末にもウクライナで軍事衝突が起きるリスクを避けようと米国株売りが活発化。為替市場ではリスク回避の円買いが強まり、ポンド/円は下落した。
16日
英1月消費者物価指数(CPI)は前月比-0.1%、前年比+5.5%と予想(-0.2%、+5.4%)を上回った。なお、前年比の伸びは1992年3月以来約30年ぶりの大きさとなった。エネルギー・食品・アルコール・たばこを除くコアCPIも前年比+4.4%と、1997年の統計開始以降で最高の伸びを記録した。
24日
ウクライナは「ロシア軍が我々の軍事施設や国境でミサイルを発射した」として全土に「非常事態宣言」を発令。ロシアの侵攻により、ウクライナの首都キエフが数時間以内に陥落する可能性があるとする西側情報機関の見解が伝わるとリスク回避の円買いが加速した。ただ、一時850ドル前後下げていたNYダウ平均がプラス圏に浮上するなど米国株が持ち直したためポンド/円も下げ幅を縮小した。
28日
米国、英国、欧州、カナダは前週末26日に、ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁措置として、ロシアの一部銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除することで合意した。また、ロシア中銀に対して制裁を科す事にも合意。事実上、ロシアを国際金融システムから締め出す内容の厳しい制裁となった。これを受けて円全面高で取引が始まった。ただ、その後はロシアとウクライナの停戦交渉が始まった事などからリスク回避ムードが緩みポンドが持ち直した。
2月の各市場
2月のポンド/円ポジション動向
【情報提供:外為どっとコム】
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3月の英国注目イベント
ポンド/円 3月の見通し
ポンド/円は3月1日の海外市場で、ウクライナ危機を巡る懸念から152.67円前後まで下落する場面があった。1月安値の152.90円前後を下抜けた事で、日足チャートは「Wトップ」が意識されやすい形状となっている。1月安値を「ネックライン」と見るならば、149円台まで下落する余地がありそうだ。
足元の英経済は新型コロナウイルス対策の規制が緩和された事もあって比較的堅調ではあるものの、ウクライナ危機で欧米がロシアに科した厳しい経済制裁の悪影響が英国にも波及するとの懸念は根強い。資源輸出国であるロシアを国際決済網のSWIFT(国際銀行間通信協会)から遮断する事で天然ガスや原油の価格は上昇が続いている。エネルギー価格の高騰が英国のインフレを一段と押し上げる事で、ようやく上向いた英国景気を冷やすリスクがあろう。
インフレ高止まりを踏まえ、英中銀(BOE)は17日の金融政策委員会(MPC)でも利上げを継続すると見られるが、こうした状況下ではポンド相場が利上げを素直に好感するかは不透明であろう。ロシアとウクライナの停戦交渉が長引けばポンドの下落リスクも増すと考えられる。それだけに、停戦交渉が早期にまとまるか否かが3月のポンド相場の最大の焦点と言えるだろう。
(予想レンジ149.000~156.000円)
豪ドル/円
豪ドル/円の基調と予想レンジ
豪ドル/円 2月の推移
2月の豪ドル/円相場は80.897~83.984円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.7%上昇した(豪ドル高・円安)した。
豪中銀(RBA)の度重なるけん制にもかかわらず市場の早期利上げ期待は根強かった。対照的に日銀が指値オペで金融緩和維持の姿勢を示した10日には83.98円前後まで豪ドル高・円安が進み、1月5日以来の高値を付けた。
ウクライナ情勢への懸念が高まると81円台に押し戻される場面もあったが、原油高など資源価格の上昇を支えに下げ渋った。ウクライナ情勢の悪化による資源高は地理的に遠い豪州経済にとってはプラスの面のほうが大きいと受け止められた模様。24日にはロシア軍がウクライナへ全面的に侵攻したが豪ドルの下値は堅かった。26日に欧米がロシアを国際金融システムから締め出す厳しい経済制裁を発表すると、週明け28日のオープンこそ下窓を開けて下落したが、その後は急速に持ち直して83.52円前後で2月の取引を終えた。
出所:外為どっとコム
1日
RBAは政策金利を0.10%に据え置いた。また、大方の予想通りに資産買い入れプログラム(週40億豪ドル)を2月中に終了させると発表。注目の利上げに関するスタンスについては「インフレ率が持続的に2-3%の目標範囲内に収まるまで利上げは行わない」「インフレ率は上向いているが、目標範囲内に持続的に収まったと結論付けるには時期尚早だ」として慎重な姿勢を維持した。市場にはRBAが7-9月期に利上げを開始するとの見方が広がっていただけに、豪ドルは一時売りが強まった。なお、これより前に発表された豪12月小売売上高は前月比-4.4%と大きく落ち込み、市場予想(-2.0%)を下回った。
2日
ロウRBA総裁は講演で「経済が力強く推移すれば、年内に利上げするシナリオも明らかにある」と、早期利上げの可能性にはじめて言及。一方で「(低金利を維持して)完全雇用を達成するまたとないチャンス」として「利上げが1年、またはそれ以上先になると見るのも妥当」とも発言した。
10日
日銀は、連休明けの14日に10年物国債を0.25%の利回りで無制限に買い入れる「指値オペ」を実施すると通告。日銀が長期金利の上昇を容認しない構えを示した事から円が全面的に下落した。
11日
米ホワイトハウスの大統領補佐官は、ロシアによるウクライナ侵攻について「いつ起きてもおかしくない」「(北京冬季)五輪の期間中にも始まる可能性がある」と述べ、ウクライナ在住米国人に48時間以内に退避するよう呼び掛けた。週末にもウクライナで軍事衝突が起きるリスクを避けようと米国株売りが活発化。為替市場ではリスク回避の円買いが強まった。
17日
豪1月失業率は4.2%で予想通りだった。同新規雇用者数は前月比1.29万人増と、予想(±0.00万人)を上回った。労働参加率は66.2%(予想66.1%)であった。直後にロシアメディアが、ウクライナ東部を実効支配する親ロシア派武装勢力に向けて、ウクライナ政府軍が砲撃を行ったと報じるとリスク回避の円買いが強まった。なおその後、ウクライナはこの報道を否定した。
23日
豪10-12月期賃金指数は前年比+2.3%と予想(+2.4%)を下回った。RBAが金融政策運営を巡り賃金動向を重視している事から結果に注目が集まっていたが、7-9月(+2.2%)からの伸びは小幅にとどまった。豪ドルはこれを受けて一時下落したが、NZ中銀(RBNZ)の利上げでNZドルが上昇した動きに連れて持ち直した。
24日
ウクライナは「ロシア軍が我々の軍事施設や国境でミサイルを発射した」として全土に「非常事態宣言」を発令。ロシアの侵攻により、ウクライナの首都キエフが数時間以内に陥落する可能性があるとの情報が伝わるとリスク回避の円買いが加速した。ただ、大幅に下げていたNYダウ平均がプラス圏に浮上するなど米国株が持ち直す中、豪ドル/円も下げ幅を縮小した。
28日
米国、英国、欧州、カナダは前週末26日に、ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁措置として、ロシアの一部銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除することで合意した。また、ロシア中銀に対して制裁を科す事にも合意。事実上、ロシアを国際金融システムから締め出す内容の厳しい制裁となった。これを受けて円全面高で取引が始まった。ただ、その後はロシアとウクライナの停戦交渉が始まった事などからリスク回避ムードが緩み豪ドルが持ち直した。
2月の各市場
2月の豪ドル/円ポジション動向
【情報提供:外為どっとコム】
- ※ データの更新は、NYC時に行われます(前営業日のデータが追加)。また、過去180日間のデータが表示されます。
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3月の豪州・中国注目イベント
豪ドル/円 3月の見通し
豪中銀(RBA)は1日の会合で大方の予想通りに政策金利を0.10%に据え置いた。声明では「ウクライナでの戦争が世界経済の主要な不確実性の要因となっている」と指摘。一方で「今後、ガソリン価格高騰で豪州の消費者物価指数(CPI)が急上昇する可能性がある」との見解も示した。利上げについては「インフレ率が持続的に2~3%の範囲内に届くまで行わない」「インフレ率は上向いているが、目標範囲内に持続的に収まったと結論付けるには時期尚早だ」とする従来の主張を繰り返した。こうした中、市場の利上げ期待に大きな変化はなく、7月利上げの織り込み度合いは100%を維持した。一部には、4月末の1-3月期CPIと5月半ばの1-3月期賃金指数の結果を確認した上で6月に利上げに動くとの見方もある。こうした利上げ期待は引き続き豪ドル相場を下支えする事になるだろう。
2月の豪ドル相場の動きを振り返れば、ウクライナ紛争は豪ドル相場の上値抑制には繋がるが下落要因にはなりにくいと考えられる。豪政府は、天然ガスなどのエネルギー輸出について「友好国からの要請があれば支援する用意がある」としている。ウクライナ情勢の悪化によるリスク回避(の豪ドル安)を、貿易黒字の拡大観測(の豪ドル高)が相殺する公算が大きい。
3月の豪ドル/円相場は緩やかに上値を切り上げる展開が見込まれる。とはいえ、ウクライナ情勢の好転がなければ2021年10月に付けた86.25円前後の高値を更新するのは難しそうだ。
(予想レンジ:82.000~86.000円)
神田 卓也
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