以下の取材記事はトレーダー個人の経験やお考えに基づくものです。その内容について当社が保証するものではありません。実際のお取引については充分内容をご理解の上ご自身の判断にてお取り組みください。
FXブログ「ロンドンFX」やレポート、セミナー、SNSなどで活躍の松崎美子さんにインタビューを行いました。 ロンドン市場での活躍について語っていただいた前編に続き、中編では過去一番の失敗談や、ファンダメンタルズ分析、投資判断に有益な情報の集め方についてお話をいただきました。後編では、FXの個人投資家へのアドバイスをお聞きしました。
▼目次
1.違和感を突き止めるファンダメンタルズ分析
2.トレード判断について
違和感を突き止めるファンダメンタルズ分析
編集部:- 兼業FXトレーダーの方へアドバイスなどありましたらお願いします。
松崎:- 兼業の方は特に時間がないと思うので、お休みの日に2~3時間だけでも自分の勉強の時間をつくると随分違うと思います。今はスマホがあればいくらでも勉強できるので。
編集部:- では具体的に、ファンダメンタルズの勉強はどうすればよいのでしょうか。
松崎:- ファンダメンタルズの勉強のとっかかりとして、まずチャートを見ます。 そして、変な値動きがあれば、チェックします。重要なレベル(の為替レート)を抜けて動いたのであれば心配無用ですが、自分で理解できないような値動きであれば、何らかのファンダ要因があったのでしょう。
編集部:- なるほど。
松崎:- 経済指標やロンドンフィキシングの時間でなければ、要人発言であったり、突発的な発表など、なにかしらファンダメンタルズが理由の値動きがあります。 この、違和感を突き止めるファンダメンタルズ分析を3年行って、今や億トレーダーになった人を知っています。
編集部:- 3年で億トレ!
松崎:- その方は専業トレーダーになるんだと言って大学を辞めて、アルバイトしながら勉強していました。チャートがぽこんと上がった、下がったところをスクショして徹底的に理由を調べたりしていたそうです。
3年くらいそのようなことをやっていると、ファンダメンタルズがものすごく詳しくなりまして。今や私と同等なレベルでお話ができるんじゃないかな。
編集部:- 凄い…。
松崎:- しかもその方は今、メキシコペソ/円をやったりしているのでメキシコについても詳しいです。私はヨーロッパだけなので、研究熱心ですよね。
編集部:- そのような方がいらっしゃるんですね。 人によってトレードの方法、また学習ペースが違うと思うのですが、FXはマイペースの方が良いのでしょうか。
松崎:- マイペースでいいと思います。 日本人はどうしても周りと比べちゃうんで。
カッコよく言えば、昨日の自分よりもちょっと進歩したならそれでいい。人と比べると焦りしか生まれないです。
編集部:- 松崎さんがマイペースということかと思いますが、これは銀行の現役時代も一緒でしたでしょうか。
松崎:- 私は、親がマイペースでしたし、兄弟もいなかったので、人と比べる環境は昔からあまりありませんでした。 ディーラーになったときに「あの人より上に行きたい」っていうのはあったけど。
編集部:- ヒトと自分を比べても、いいことなんてないですもんね。
松崎:- はい、私がいまヒトと比べることは“老い”の事しかないですね(笑)。
トレード判断について
編集部:- トレードの判断をする瞬間について教えてください。事前にシナリオは組み立てていますか?
松崎:- ええ。感覚で取引することは私にはあり得ない事ですね。もちろん、ここから上に行くだろうとか、そういった「勘」ですとか「インスピレーション」は信じていますよ。ただ、自分のなかでファンダメンタルズの裏付けがないと絶対にポジションは取りません。
編集部:- 「勘」を信じたうえで、それを補強するファンダメンタルズの裏付けまで取れないとポジションを持たないという事でしょうか?
松崎:- 例えば、ポンドが上がりそうだなといったときに、「BOE(イングランド銀行)でマイナス金利導入があるかもしれない」「政治的な混乱があるかもしれない」など、上がらない理由をまずは考えるようにしています。じゃあ、それに勝る買い材料は何かと色々考えていって、そうするとマイナス金利ってほぼ織り込み済み?じゃあマイナス金利にBOEメンバーの何名が前向きな発言をしているのか・・・といった具合に掘り下げて調べていくんです。
そのように、自分で頭の中で見通しを組み立てていって、それで納得してはじめて「よし、これはポンド買いだ」と判断しています。
編集部:- ありがとうございます。情報をキャッチしてから、相場の見通しを立てる事になるかと思いますが、やはり数分間は熟考の時間になりますか?
松崎:- いえいえ、私は週足を見ているので2~3日は考えています。そのあと、週末にチャートをチェックして、月曜日あけた時にオーダーを出す感じでしょうか。 どうしてもここでエントリーしたいって時は成行注文を出しちゃう事も稀にありますが、そうしたときはOCO注文を出しています。
あと、負けているポジションのナンピンは絶対しませんが、儲かっているポジションのナンピン、いわゆる利乗せはしますね。
編集部:- FX初心者はトレード手法ばかりに目が行きがちな傾向があると思っていますが、やはりしっかりとした相場分析が必要だということが、お話を聞いているとよくわかります。
松崎:- あと私はずっとレートは見ているんですが、チャートのローソク足は週に1回しか見ないですね。日足・週足を見て、今週はこんな感じだったんだなぁと。
編集部:- えっ、それはチャートを見なくても頭の中で描ける感じでしょうか?
松崎:- そうですね。毎日レートは見ているので、ここは跳ねるだろうなぁと何となくわかるんです。これは現役時代に素晴らしいトレーダーに出会えたからだと思っています。 相場の見方自体は教えてくれませんでしたが、毎日のように「騙されたと思って、プライスボードを見ていろ!必ず何か得るものがあるから」と言われていましたね。
私の時代だと、ロンドンのディーリングルームのディーラーの画面にチャートなんてありませんでした。みんなずっとレートとブルームバーグ、ロイターの情報だけ見ている感じです。
編集部:- そうなるとチャートを見ているヒトは、もしや二流・・・?
松崎:- それはもちろん場所によっても違いますよ。私が働いていた環境がそうだっただけです。 でも、私はプライスボードを見るのは大事だと思っています。
編集部:- なるほど。本日は長時間にわたり、ありがとうございました。
PickUp編集部より
昨日の自分より今日の自分。今日の自分より明日の自分。他人と比べることなく、マイペースで取り組む事が大事であること。ロングインタビューを通してPickUp編集部の心にも深く刺さりました。 また、ファンダメンタルスの裏付けがないとポジションをとらないとのことや、トレード手法よりも相場の分析が重要であることもわかるインタビューとなりました。
【前編】
【中編】
【投資の真髄がここにある!伝説のディーラー列伝 インタビュー記事まとめ】
元外銀ディーラー
松崎 美子(まつざき・よしこ)氏
1988年に渡英、ロンドンを拠点にスイス銀行・バークレイズ銀行・メリルリンチ証券で外国為替トレーダーとセールスを担当。現在は個人投資家として為替と株式指数を取引。ブログやセミナーを通して、”ロンドン直送”の情報を発信中。