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過去最悪の水準に達した失業率と高止まりする香港ドル「日本人の知らない香港情勢」戸田裕大

日本人の知らない香港情勢

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、発表された報道や現地の声、公表された経済データなどをもとに、香港の最新の情勢について迫っていきます。中国や香港とのビジネスや投資、人民元・香港ドルといった通貨の売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第20回は「過去最悪の水準に達した失業率と高止まりする香港ドル」でお届けいたします。

それでは、さっそく本題に入っていきます。

目次

1.キャセイ・パシフィック航空が大型リストラを発表
2.一方でテック企業の株価は好調
3.香港ドル相場について

1.キャセイ・パシフィック航空が大型リストラを発表

みなさんは香港のキャセイ・パシフィック航空(以後キャセイと略します)のフライトに搭乗したことはございますか?私はインドからの香港経由の戻りで何度か搭乗したことがあるのですが、総じて快適でして、香港のフラッグ・キャリアは素晴らしいと感じていました。

そのキャセイですが、新型コロナウイルスの影響をもろに受けており、先日大規模なリストラを発表しました。全従業員の24%にあたる8500人を削減するリストラ計画で、且つ子会社のキャセイ・ドラゴン航空の運航も即日停止と衝撃的な内容になっています。

当然ながら、キャセイだけでなく旅行代理店や観光産業など周辺産業への影響も懸念されます。こうした中で、一部の病院が、キャセイを解雇になった従業員に対して、ナース業務のトレーニングを無料で提供するなど、雇用の受け皿として申し出る企業も出てきているようです。

しかしながら香港の失業率は改善の兆しがまだみられません。長引く新型コロナウイルスの影響で、9月の失業率は過去最悪の6.4%を記録しました。

香港の失業率

香港に限った話ではありませんが、新型コロナウイルスの影響が長引けば長引くほど、経済、そして、経済と連動する金融市場の潜在的なリスクは高まっていくことになります。ダウンサイドのリスクには十分に備えておくべきではないでしょうか。

2.一方でテック企業の株価は好調

本シリーズで香港の代表的な株価指数であるハンセン指数が、日本や中国や米国の代表的な株価指数に比べて株価の回復が芳しくないことについて、何度か触れてきました。この傾向は今も続いており、特に国家安全維持法が施行された5月・6月ごろから顕著に株価が低迷を続けています。

ところが、本シリーズの第8話で触れました有望テック企業30社を集めたHang Seng Tech Indexは、反対に5月・6月ごろから好調な動きをみせています。この指数にはメッセージアプリのWeChatで有名な「テンセント」、史上最高額を調達すると見込まれるアントグループの実質的な親会社である「アリババ」など合計30のテックジャイアント企業が組み込まれているのですが、将来的な企業価値が上がると想定され、投資が積み上がっています。

Hang Seng Tech Index

最近、アント・グループなど、中国テック企業が香港に上場する話が市場を賑わしていますが、これは香港に対するポジティブなニュースであると捉えています。

一方で、テック企業は大きな雇用を生み出すことがないので、その点は国家にとってはなかなか悩ましい問題です。株価の二極化(伝統銘柄の低迷とテック企業の台頭)がすすみ、収入の二極化がすすむと、社会も二極化が進み、まさに今の米国のように、問題が噴出するわけであり、これも将来的には大きなリスク要因としてくすぶりそうです。

永遠に株価は上がると信じている人も多いですが、あくまで経済が成長を続けていく中での話であって、基本的には経済活動が縮小すれば全体的には株価は下がっていくことになりますので、盲信的に株に投資するのは少し考えた方が良いのかもしれません。

3.香港ドル相場について

さて香港ドルですが、引き続きレンジの下限である7.75香港ドルで張り付いています。香港ドルの金利が米ドルよりも高い点や、中国テック企業の香港上場を控えて、香港ドルが買われやすい地合いが継続しています。

香港ドル米ドル

一方で対円に関しては、ドル円とあまり大きくは変わりませんが、じりじりと下落しており、現在は1香港ドルが13.50円まで下落してきています。こちらは、ほぼドル円と同じ動きをしますので、引き続き香港ドル安、円高の動きを想定しています。これは主に米国の量的緩和と低金利政策、円が過度に安く評価されていることが理由です。

香港ドル円と香港ドル米ドルの年初来推移

米大統領選までいよいよあと一週間、どのような相場展開になるか、政治イベントの予想は難しいですが、為替市場の値動きに注目していきたいと思います。

本日はここまでとなります。

引き続き注目度・影響度の高い、中国本土・香港の情報について皆様にご報告させて頂きたく思っております。ご支援のほどよろしくお願いいたします。

それでは、またの機会にお会いしましょう。

戸田裕大

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【インタビュー記事】

【過去記事】

 

<参考文献・ご留意事項>

日経新聞:nikkei.com

South China Morning Post: scmp.com

香港失業率:Census and Statistics Department of HK
https://www.censtatd.gov.hk/home.html

相場データ:Investing.com

株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、 日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は法人向けにトレジャリー業務(為替・金利・資金)に関するサービスを提供するかたわら、為替相場講演会に多数、登壇している。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022 年)。