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「Brexit交渉 最後の追い込み」ポンド/円 9月見通し 松崎美子

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2019年のマーケットの主役は、ポンドであった。2020年も引き続き、主役を引き渡すつもりはなさそうである。
そこで早速、最新のポンドを取り巻く注意点をまとめてみたい。

▼注目点①:ボリスの失点と辞任の噂 
▼注目点②:Brexit交渉
▼注目点③:英中銀の動き
▼ポンド見通し

注目点①:ボリスの失点と辞任の噂

ボリス・ジョンソン首相(以下、ボリス)が冴えない。英国政府のCOVID-19対応が遅すぎたため、多くの不要の死者を出した。その後、首相自身が感染してしまったが、退院後にボリス内閣が打ち出した保健や教育政策は国民の怒りをかう内容が多く見られ、首相の支持率はずっとマイナスのままである。

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https://savanta.com/coronavirus-data-tracker/

そしてとうとう8月末には、「6ヵ月後に辞任するらしい」という観測記事が、英タイムズ紙に小さく載り、マーケット関係者は度肝を抜かれた。首相官邸は即座に否定したが、ボリスは普段から「怠け者 Lazy」と呼ばれ精力的にバリバリ動くタイプではない。そこに新型コロナ感染による後遺症で苦しんでいるという噂も重なり、早期辞任は当たらずとも遠からずという印象を受けたのは、私だけではないだろう

注意すべき点:

さすがに半年後に辞任するとは思わないが、新型コロナ感染の後遺症の重さは、本人にしかわからない。もし本当に毎日の執務に支障をきたすようであれば、思わぬタイミングで辞任というリスクも、頭の片隅に留めておきたい。

注目点②:Brexit交渉

8月17日からスタートした第7回交渉は、散々な結果に終った。EUのバルニエ主席交渉官の記者会見を聞く限り、今後の合意の可能性が完全になくなったという印象を受けた

しかし、実は報道されているほど絶望的ではなく、意外と上手くいっているという話しも聞こえてくるから、どちらの話しを信じてよいのか迷うばかりである。政府としては、悲観色一色にしておき、最後の最後で合意を発表し、自分達の手柄を自慢しようという作戦だという話しまで出てきている。

今後の工程表

出典: 欧州委員会

https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/905831/New_Addendum_to_the_Terms_of_Reference_on_the_UK-EU_Future_Relationship_Negotiations.pdf

注意すべき点:

先月のコラム記事でも書いたが、英国に住んでいて感じるのは、政府は合意なき離脱を前提に動き始めているのかもしれない。

もちろん、最後の最後で逆転合意する可能性は残っているが、私自身は合意なき離脱を受け入れる覚悟をしている。

ポンドはBrexitに関する悪材料をかなり織り込んでいるが、実際に英国に住む人間としては、2021年1月1日以降、私達の生活がどう変わるのか?全くわからない。その点については全く織り込んでいないだけに、合意なき離脱が決定された場合、来年以降のポンドの動きは恐怖しかない。

注目点③:英中銀の動き

8月6日、英中銀金融政策理事会でベイリー総裁は、「現時点でのマイナス金利導入は、 景気刺激という目的に対して、さほど効果が認められない可能性がある。そうは言っても、経済全般、そして銀行のバランスシート内容が景気刺激策により改善した場合、改めてマイナス金利の(良い/悪い)効果について、多岐に渡る要因を考慮し判断することになるだろう 。」と語った。

3月就任以来ずっと一貫して、「マイナス金利の可能性なし!」と言い続けた総裁が、はじめて政策手段の1つとして認めた瞬間であった。

注意すべき点:

先月のコラムでも指摘したが、英国の雇用市場は政府の給与保証が打ち切られる10月末以降、一気に悪化するリスクがある。その場合、早ければ11月の理事会でマイナス金利導入という決定があるかもしれない

ポンド見通し

ポンド/ドルはかなり際どいレベルにいる。このチャートは、ポンド/ドル月足、今月のローソク足が確定した時点で、次の動きを探ることになるだろう。

ポンド米ドルチャート

レジスタンス(紫のライン)が、今月は1.30ミドルを通っている。8月末のローソク足終値がこのレベルを上抜けして終了すれば、ターゲットとして「1.35/36ミドル(黄色ハイライト)」を考えている。もし上抜けしなければ、ピンク・ハイライトの上限: 1.26ミドルと1.30ミドルのレンジを想定している。

9月はBrexit交渉の最後の追い込み時期であり、合意は無理と言うセンチメントが続けば、当然ポンドの頭を押さえることになる。しかし、予想外の合意となれば、ポンドはユーロと比較して割安感があるため、一気に上昇トレンドに乗るだろう。

問題は、11月以降の失業率がどのくらい悪化するか?相当悪ければ、英中銀の追加緩和期待が出てくる。

テクニカル 対 ファンダメンタルズ。どちらに軍配があがるか、楽しみだ。

f:id:gaitamesk:20191106165135p:plain 元外銀ディーラー
松崎 美子(まつざき・よしこ)氏
1988年に渡英、ロンドンを拠点にスイス銀行・バークレイズ銀行・メリルリンチ証券で外国為替トレーダーとセールスを担当。現在は個人投資家として為替と株式指数を取引。ブログやセミナーを通して、”ロンドン直送”の情報を発信中。