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「明暗が分かれる欧米の回復経路」ナットウエスト・マーケッツ証券 劔崎 仁氏 新型コロナショック

新型コロナショック

米国は3四半期連続のマイナス成長となる可能性も

米国では、足元で1日当たりの新型コロナ新規感染者数が6万人を越え、第2波が到来しているといっても過言ではない。そうした中、7~9月期以降の欧米の回復経路は明暗が分かれる可能性が高まっている。これまで、新規感染者数の推移は、娯楽施設への人の移動が平常時からどの程度減少するかに大きく左右されてきた。図表1は米国の両者の関係を示しているが、足元の新規感染者数の増加傾向を減少に転じさせるためには、娯楽施設への人の移動を平常時から80~90%程度減少させる必要があることを示している。これは、米国で4月に行われた都市封鎖の2倍に及ぶ厳格なもので、4月のスペイン、イタリア、フランスレベルの都市封鎖を意味する。

仮に、米国の娯楽施設への人の移動が8月に平常時から80%、9月に50%減少するケースを想定すると、7~9月期の同移動は4~6月期から20%程度一段と減少することになる。コロナショック以降の成長率は娯楽施設への人の移動に大きく規定されていることを考えれば、7~9月期に同移動が前期差20%減となることは、同四半期の成長率が前期比・年率マイナス20%台後半となる可能性を示している(図表3参照)。現在、7~9月期の実質GDP成長率の市場予想はプラス18.0%だが、今後、多くの州が第2波を収束させるべく、積極的な都市封鎖に踏み出した場合、3四半期連続でマイナス成長となる可能性も否定できないだろう

米国では後述のユーロ圏と異なり、第1波以降、一度も新規感染者数の減少ペースが娯楽施設への人の移動の増加ペースを上回る状況とならなかった。また、新規感染者数と娯楽施設への人の移動が同様の動き方になり始めてから2ヵ月間は明確な第2波が到来しなかった。以上を総合すると、8月に4月よりも厳格な都市封鎖を実行したとしても、その後に新規感染者数の減少ペースが娯楽施設への人の移動の増加ペースを上回る状況とならなければ、2ヵ月おきに新規感染者数の増加の波が訪れる可能性もあり、10~12月期にプラス成長に戻ったとしても、3四半期連続のマイナス成長後としては極めて緩慢な回復にとどまるかもしれない

図表1: 米国:1日当たりの新型コロナ新規感染者数と娯楽施設への人の移動 (左軸:人、右軸:%)

図表2: ユーロ圏:1日当たりの新型コロナ新規感染者数と娯楽施設への人の移動 (左軸:人、右軸:%)

ユーロ圏は想定以上の回復となる可能性も

一方、ユーロ圏では、第1波以降、新規感染者数の減少ペースが娯楽施設への人の移動の増加ペースを上回る状況が続いてきた。ただ、6月末以降、両者は同様の動きになり始めている(図表2参照)。ただ、米国で新規感染者数と娯楽施設への人の移動が同様の動きになり始めてから2ヵ月間は明確な第2波が到来しなかったことを考慮すると、少なくとも9月までは明確な第2波がユーロ圏に到来しない可能性がある。

仮に、7月前半におけるユーロ圏の娯楽施設への人の移動が9月まで続くと仮定すると、7~9月期の同移動は4~6月期から35%程度増加することになる。米国と同様、コロナショック以降の成長率は娯楽施設への人の移動に大きく規定されていることを考えれば、7~9月期に同移動が前期差35%増となることは、同四半期の成長率が前期比プラス15%程度となる可能性を示している(図表4参照)。現在、7~9月期の実質GDP成長率の市場予想はプラス8.7%だが、9月の新規感染者数の増え方には依存するものの、7~9月期の成長率は市場予想を上回る可能性があろう

ただ、7~9月期に比較的強い回復を見込めるユーロ圏も、9月頃から新規感染者数が増え始める可能性を考慮すると、10~12月期には再び娯楽施設への人の移動を制限する必要が出始め、同四半期の成長率は再びマイナスに転じる可能性も否定できない。とはいえ、第1波を1000人前後の1日当たりの新規感染者数まで収束できたことを考えれば、米国と比較して第2波も限定的となる可能性があり、10~12月期の成長率のマイナス幅も4~6月期と比較して極めて限定的にとどまるかもしれない

図表3: 米国:娯楽施設への人の移動と実質GDP成長率 (左軸:前期差・%ポイント、右軸:前期比・年率・%)

図表4: ユーロ圏:娯楽施設への人の移動と実質GDP成長率 (左軸:前期差・%ポイント、右軸:前期比・%)

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ナットウエスト・マーケッツ証券
ジャパン・チーフエコノミスト 劔崎 仁氏

慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了後、2004年4月に日興シティグループ証券(現シティグループ証券)に入社。シティではエコノミストとして日本経済指標の予測、日本経済に関するレポートの執筆、日本・海外経済に関する機関投資家向けプレゼンテーションに従事した。2013年4月からアール・ビー・エス証券会社東京支店(現ナットウエスト・マーケッツ証券会社)において、外国債券ストラテジスト、2015年7月からシニアエコノミスト、2019年9月からチーフエコノミストとして海外経済・金利・為替(主 に米国、欧州、中国)の調査・分析を担当するとともに、2016年1月以降はナットウエスト・マーケッツの日本経済見通しの責任者も務め、年間200件の機関投資家向けプレゼンテーションに従事している。