高金利通貨であり、資源国通貨でもあるということで投資家の人気が高まっているメキシコペソ。
そして、地政学的にアメリカとの距離が近く、発展を続けるアメリカ経済に連動することも人気のひとつとなっています。
この記事では相場を確認しながら、メキシコの政治と経済をおさらいします。
2008年から現在までの相場
MXN/JPYの月足(2008年から現在)
2008年から現在までのMXN/JPYの月足表示です。
図には、アメリカのおもな経済イベントを追記しています。
2008年 9月 リーマンショック
2008年11月 QE1開始
2010年11月 QE2 開始
2012年 9月 QE3 開始
2014年 1月 緩和逓減(テーパリング)開始
2014年10月 QE3 終了
2016年11月 アメリカ大統領選挙
2017年 1月 トランプ大統領就任
次に、USD/JPYの月足表示をMXN/JPYの月足表示の横軸(時間軸)にあわせて表示させました。
USD/JPYの月足(2008年から現在)
そうすると、おおよそ山と谷の位置が対応していることがわかります。
例外もありますが、USD/JPYが下っているときには、MXN/JPYも下がり、USD/JPYが上がっているときは、MXN/JPYも上がることが多いということがわかります。
MXN/JPYの高金利を狙っているとはいえ、USD/JPYが上昇しそうなとき、つまり、MXN/JPYが上昇しそうなときにエントリーして、売買差益を狙うようにしましょう。
しかし、いくら高金利で長期保有するからといっても、投資対象について、調べもせずに投資するのはよくありません。
投資をする前には、その投資対象について、しっかり調べて、リスクについて把握するようにしましょう。
そこで、メキシコの政治と経済について確認します。
アメリカ経済とのつながり
メキシコはアメリカと陸続きでつながっていることもあり、アメリカが最大の貿易相手国です。
外務省が公開している基礎データ(2017年)によると、輸入全体の約46%、輸出全体の約80%を、アメリカが占めていることがわかります。
その内訳について、経済産業省の通商白書で調べてみると、電気機器、一般機械、自動車・同部品、鉱物性燃料を輸入し、自動車・同部品、電気機器、一般機械を輸出していることがわかります。
つまりメキシコは、燃料といった資源、電気機器や一般機械といった中間財を輸入し、国内で加工・組み立てを行い、自動車などの最終財をアメリカに輸出しているのです。
アメリカ向けの最終財を製造する「世界の工場」となった理由
メキシコがアメリカ向け最終財を製造する「世界の工場」となったのは、アメリカに近いからだけではありません。
そこには政治的、経済的な戦略があります。
FTA大国メキシコ
メキシコは多くの国々と自由に貿易をするためにFTA(Free Trade Agreement:自由貿易協定)を結んでおり、その数は40以上にも登ります。
日本のFTAおよびEPA(Economic Partnership Agreement:経済連携協定)が16件にとどまっていることから比較すると、メキシコが貿易の関税を引き下げ、資源、電気機器などの中間財を輸入しやすくし、自動車などの最終財が輸出しやすくなるように努力していることがわかります。
企業を誘致するメキシコ
多数のFTAを締結していることで、メキシコで作った製品をアメリカに輸出する際、関税がかかりません。
また、メキシコの人件費は、まだまだ安いので、メキシコで製造するとコストを抑えることができます。
JETROのレポートによると日産、GM、フォルクスワーゲン、フィアット・クライスラー、フォード、ホンダ、トヨタ、マツダ、起亜など、多数の自動車メーカーがメキシコに拠点をもっています。
自動車だけではなく電気機器や服飾などの外国企業も、メキシコに生産拠点をもっています。
このように、メキシコ政府はFTAによる貿易の自由化だけではなく、外国企業への市場開放に積極的なのです。
投資を呼び込むための高金利
メキシコの高金利についても注目しましょう。
一般的に、中央銀行は国内のインフレを抑えるために金利を上昇させます。
メキシコのインフレ率も3%〜4%台で推移しており、低いとは言えませんから、インフレ率対策のための高金利といえますが、それ以上に、海外からの投資を呼び込むための高金利という側面もあります。
外為情報ナビでメキシコとアメリカの政策金利を表示してみます。
メキシコはアメリカの金利に追随する形で金利を連動させていることがわかります。
このように、常にアメリカの金利よりも、ある一定幅の高金利を維持することで、自国への投資を呼び込んでいます。
メキシコへの投資のリスク
さて、メキシコの政治と経済の特徴について説明してきました。
今度はリスクについても確認しておきましょう。
アメリカへ最終財を輸出する「世界の工場」として発展してきたメキシコですが、そのリスクもアメリカにあります。
メキシコはアメリカに最終財を輸出し続けてきたことにより、対米貿易収支は10年以上も黒字です。
アメリカからみると、10年以上も赤字が続いてきたことになり、この貿易不均衡に待ったをかけたのが、ドナルド・トランプ大統領です。
USMCAとは自由貿易(Free Trade)の文言が外れたNew NAFTA
アメリカ国内の雇用を守り、「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ大統領は、大統領選挙戦のときから、1994年に発行したNAFTA(North American Free Trade Agreement:北米自由貿易協定)が貿易赤字の元凶であり、その見直しを選挙の公約に掲げていました。
大統領就任直後にメキシコ、カナダとNAFTAの再交渉を行い、新しい協定USMSA(the United States-Mexico-Canada Agreement:アメリカ・メキシコ・カナダ協定)で合意しました。
この協定は自由貿易(Free Trade)の文言が外されていることからわかるように、アメリカへの自動車輸出台数に数量制限が設けられました。
自由貿易から一歩後退したこの協定は、自動車輸出の観点だけでみれば、メキシコにとっては悪材料でしょう。
さて、最後になりますが、投資をする前には、その投資対象をよく知ることが大切です。
メキシコペソに投資する前には、メキシコの政治と経済の現状を、しっかりと把握するようにしましょう。
メキシコは自由貿易、企業誘致、安い労働力、高金利によって、世界中から投資を呼び込み、自動車などを生産して、アメリカに輸出し、経済を発展させてきました。
しかし、トランプ氏が大統領に就任してから、アメリカはメキシコに対して、強硬な姿勢を隠さないようになりました。
これからトランプ大統領は再選へ向けて、アメリカ第一主義に基づいた政策をどんどん打ち出してくるものと思われます。
メキシコペソに投資する際には、アメリカの対メキシコ政策の動向について、より一層の注意を払うようにしましょう。
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