
作成日時:2026年8月13日 11:20
予想期間:2026年8月13日〜8月20日
監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 小野直人
金(ゴールド)は4,400ドル台へ反発し、4,500ドルの200日線が焦点となっています。今週は「ETF資金回帰」と「株式集中リスクの回避」という2つの買いが重なり、押し目が浅い展開が想定されます。本記事では、今後1週間の予想レンジ(4,285〜4,600ドル)、上昇・下落の分岐点、重要イベントを整理し、あなたの取引判断に役立つ視点をまとめます。ご自身がどの材料を最も重く見るかを意識しながら読み進めていただければと思います。
今後1週間の予想レンジ:4,285~4,600ドル
足元の金相場動向|米CPI通過で4,400ドル台を回復
まずは、足元の上昇がどこを起点に始まったのかを押さえておきます。
金相場は8月上旬に4,000ドル付近で下げ止まり、下降トレンドラインを上抜けたことで反発基調を強めました。そこへ7日発表の7月米雇用統計が予想を下回り、9月の米追加利上げ観測が後退したことで上昇に弾みがつき、6月中旬以来となる4,300ドル台を回復しました。さらに12日発表の7月米消費者物価指数(CPI)が市場予想に沿った内容となったことで、水準は4,400ドル台まで切り上がりました。総合CPIは前年比3.4%と6月の3.5%から鈍化し、FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを急ぐ根拠は薄れたとの受け止めが広がっています。7月のFOMCでは政策金利を据え置いた一方、3人が0.25%の利上げを主張するなど、インフレへの警戒姿勢が確認され、これが金価格の重しとなっていましたが、その圧力がいったん緩んだ格好といえるでしょう。
金価格を押し上げる2つの資金流入
加えて、今回の上昇には米利上げ観測の後退以外の材料も散見されます。性質の異なる2つの買いが同時に重なっている点が、今回の特徴です。
投資需要|欧州主導で金ETFに資金が回帰
一つは、実際の資金の流れが変わり始めたことです。長く金を売り越してきた投資家が、金ETFへ資金を戻し始めました。世界の現物裏付け型ETFには7月に約30億ドルが流入し、5月・6月の2カ月連続流出から流れが転換しています。ただ、その主役は欧州で約20億ドル、北米は7,100万ドルの小幅流入に転じた段階にすぎません。「欧米勢が一斉に買い戻した」というより、これまで金価格の重しだった資金流出が止まり、押し目を拾う資金が戻り始めた局面とみるのが実態に近いでしょう。それでも、売り手だった主体が買い手に回る変化は、相場の下値を固くする方向に働きます。
機関投資家|株式の集中リスクから金へ資金が向かう
もう一つは、金そのものへの評価というより、株式側の事情から生まれている買いです。米株が高値圏を維持するなか、株式への資金集中を警戒する動きも金の支えになっています。WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)は7月の金ETFへの資金回帰について、半導体株やモメンタム株の調整、混み合ったポジションの巻き戻しを背景に、投資家がポートフォリオの集中リスクを見直し、金などの分散資産へ資金を移した可能性を指摘しています。「株が上がれば必ず金も上がる」という恒常的な順相関ではありませんが、株式が高値圏にあるからこそ分散目的の金買いが生じ、株と金が同時に上昇する局面は十分にあり得ます。株高=金売り、という4月以降の見方のままでは、足元の値動きを読み違えやすい点に注意したいところです。
金相場の上昇トレンドを覆す3つの要因
ここまでは上昇を支える材料を見てきましたが、反対側の目線も確認しておきましょう。
短期的な利益確定売りに押される局面は想定されるものの、上昇トレンドを覆すような構造的な売り材料は、現時点では見当たりません。中長期で相場が下向きに転じるとすれば、その引き金となり得るのは①米インフレの再加速②米株市場の急落(現金化のための金売り)③中央銀行による金買いの明確な鈍化の3点です。いずれも現時点で差し迫った兆候は確認しにくいものの、①については13日の米PPIが直接的な確認材料となるほか、20日公表の7月FOMC議事要旨では、当局者がインフレ上振れリスクをどの程度警戒していたかが注目されます。なお、ホルムズ海峡を巡る緊張から原油価格が上昇している点は、目先の安全資産買いを支える一方、先々のインフレ再加速につながれば①のリスクに転じ得る両面性を持っています。
金スポットテクニカル分析|100日線・200日線・RSIから見る上昇余地
こうした需給の後押しは、日足チャート上ではどう表れているのか。移動平均線とRSIから節目を整理します。

日足では、75日移動平均線(赤)が4,285ドル付近、100日移動平均線(緑)が4,385ドル付近、200日移動平均線(青)が4,500ドル付近に位置しています。14日RSIは80.1と、過熱を示す水準です。
メインの想定は、100日線を支えに200日線の突破をうかがう展開。ただし買われすぎの反動から、いったんは同水準で上値が重くなりやすいとみています。
金相場の視点と、シナリオの組み立て方
以上を踏まえ、筆者の見立てと、判断を切り替える目安を整理します。
筆者のメインシナリオは、100日線4,385ドルを下値の目安としながら、200日線4,500ドルの攻防に持ち込む展開です。性質の異なる2つの買いが同時に働いている以上、下押しは調整の範囲にとどまりやすく、8月27日からのジャクソンホール会議までは目線を上向きに置いて臨める地合いとみています。
上方向へ修正する条件は、4,500ドルを日足終値で明確に上抜け、その水準を維持することです。この場合、買われすぎを理由にした戻り売りが踏み上げられ、4,600ドルまで一気に距離が縮まりやすくなります。下方向へ修正する条件は、4,385ドルを終値で割り込むこと。金ETFへの資金流入が細る兆しが重なるようなら、4,285ドル付近までの調整も想定に入れておきたいところです。
買い持ちの方にとって、RSI80台という数字は落ち着かない材料かもしれません。ただ、過熱は反転の合図というより値幅の出やすさを示すもので、4,385ドルが保たれている限りは想定の内側といえます。売り持ちの方は、戻り売りの根拠が過熱感だけに偏っていないか、いま一度確認しておきたいところです。今回の上昇には資金の流れという実体が伴うだけに、4,500ドルを終値で上抜けた時点が、シナリオを見直す一つの区切りとみられます。
【あなたの見通しは?】
- 上昇(4,500ドル超え):金ETFへの資金回帰とリバランス需要が続き、200日線を突破すると考える
- 横ばい(4,385~4,500ドル):買われすぎの調整と押し目買いが拮抗し、往来が続くと考える
- 下落(4,385ドル割れ):過熱の反動が勝り、75日線付近まで調整すると考える
今後の重要イベント
- 8月13日(木)21:30 米国 7月卸売物価指数
- 8月13日(木)21:30 米国 新規失業保険申請件数
- 8月14日(金)21:30 米国 7月小売売上高
- 8月14日(金)23:00 米国 8月ミシガン大学消費者態度指数・速報
- 8月17日(月)08:50 日本 4-6月期GDP1次速報
- 8月17日(月)11:00 中国 7月小売売上高・鉱工業生産
- 8月19日(水)27:00 米国 FOMC議事要旨(7月28-29日分)
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小野 直人
株式会社DZHフィナンシャルリサーチでの情報配信業務、上田ハーロー株式会社での調査・市場部門を経て、2021年より外為どっとコム総合研究所へ参画。ニュースベンダーとFX会社で培った「情報の目利き力」と「市場実務の経験」を武器に、個人投資家へ有益な情報を発信している。ドル円などの主要通貨に加え、トルコリラ・メキシコペソなどの新興国通貨、日経平均・NYダウといった株価指数(CFD)まで、幅広い金融商品の分析を得意とするマーケットアナリスト。
