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米雇用統計の予想とドル円展望|5月NFPは9万人前後、160.00円挟んだレンジ継続か【外為総研】2026年6月4日

 

米雇用統計見通し2026年6月

執筆日時:2026年6月4日 17時50分

執筆者 :株式会社外為どっとコム総合研究所 小野 直人

2026年6月5日に発表される米5月雇用統計は、ドル円相場の方向感を見極める重要イベントです。市場では、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比9万人前後、失業率は4.3%前後、平均時給は前月比+0.3%程度と予想されています。雇用や賃金が強すぎればFRBの追加利上げ観測が意識され、弱すぎれば景気減速懸念が高まりやすくなります。本稿では、5月米雇用統計の予想、前回結果、FRBの政策判断、ドル円見通しを整理します。

米5月雇用統計、利上げ期待高めず雇用の底堅さ維持がベター

2026年6月5日21時30分に5月分の米雇用統計が発表されます。

5月分米雇用統計の最大の焦点は、従来の「いつ利下げが始まるか」ではなく、「インフレ再燃で追加利上げの時期が早まるのか」、それとも「利下げは遠のくが高金利据え置きの長期化で踏みとどまるのか」という分岐点を見極めることにあります。では、前回の振り返りから見ていきましょう。

4月米雇用統計(NFP)の結果とドル円相場の反応

2026年4月分の米国雇用統計は、雇用情勢の底堅さを示す結果になりました。非農業部門雇用者数(NFP)は11.5万人増と、3月の18.5万人(17.8万人から上方修正)に続き、2カ月連続で10万人を超えました。

ヘッドラインである非農業部門雇用者数が強い伸びを示したことで、2月に高まった「労働市場の急減速=景気後退懸念」は大きく後退し、FRBの年内利下げ期待は高まりませんでした。ただし、労働参加率は前月から小幅低下し、低下基調が意識されました。供給側の縮小傾向は気掛かりで、将来的な需給の歪みが生じる懸念もありました。

図表1.分野別新規雇用者数(千人)出所:米国労働省

産業別 2025年4月 2026年2月 2026年3月 2026年4月
全体 108 -156 185 115
財生産部門 -4 -21 33 10
鉱業・林業 2 -1 2 3
建設 -2 -21 16 9
製造 -4 1 15 -2
民間サービス部門 103 -127 157 113
卸売 4.9 8.4 6.5 6
小売 4.1 -0.3 18.6 21.8
運輸 -16.3 -45.5 21.5 30.3
公益(電気・ガス・水道) -1.3 1.6 -0.6 1.9
情報 -2 -23 -6 -13
金融・保険 4 2 -19 -11
専門・企業向け 13 4 26 7
民間教育・医療サービス 84 -49 91 46
娯楽・接客 13 -31 29 14
その他のサービス 0 6 -10 10
政府分野 9 -8 -5 -8

各市場の反応

【為替市場】

ドル円は、当社チャートでは指標発表直後に156.521円~156.797円で振幅。当時は地政学リスクなど他の材料も意識されており、値動きは比較的限定的でした。

【株式市場】

米国の現物株式市場は上昇しました。

  • ダウ平均:前日比+0.02%(+12.19)の49,609.16ドル
  • ナスダック総合:前日比+1.71%(+440.88)の26,247.08ポイント
  • S&P500:前日比+0.84%(+61.82)の7,398.93ポイント

【金市場】

NY金先物(中心限月)の終値は、4,730ドル付近となりました。

図表2.前回発表前後のドル円の動き
米雇用統計のドル円5分足チャート(2026年4月)
ドル円 5分足
出所:外為どっとコム「ネオチャート

米5月雇用統計の予想と市場への影響

過熱も崩壊もない、雇用市場を示せるかがカギ

現在の米労働市場を一言で表すと、過熱も崩壊もしていない状態といえます。新規失業保険申請件数が5月を通じて21万件前後で横ばい推移し解雇急増の兆候がない一方、消費者マインド調査では「仕事が豊富にある」と答える割合の低下が続いています。また、4月のJOLTS求人件数は761.8万件へ増加しており、求人需要そのものが消えているわけではありませんが、採用件数は弱く、企業側が実際の採用拡大には慎重になっている可能性があります。

こうした歪みの背景には移民流入の急減速(純増ペースの頭打ち)で企業が既存の従業員を囲い込まざるを得ない構造があるほか、調査手法が関連していると見られます。

図表3.雇用者数変化に関連するデータ

項目 1月 2月 3月 4月 5月
NFP 万人 16 -13.3 18.5 11.5 -
ADP民間雇用者数 万人 1.1 6.6 6.1 10.5 12.2
ISM製造業雇用指数 48.1 48.8 48.7 46.4 48.6
ISM非製造業雇用指数 50.3 51.8 45.2 48.0 47.9
JOLTS求人件数 万件 724.0 692.2 688.7 761.8 -
新規失業保険申請件数 万件 21.0 20.8 20.5 21.4 21.0
失業保険継続受給者数 万人 181.9 183.3 181.9 178.5 178.6

出典:各種公表データを基に外為総研が作成
※失業保険データは、雇用統計調査週の分


企業の給与データを基にする「事業所調査(NFP)」は“雇用者数”というより“雇用の件数”に近く、複数職を持つ人は複数回カウントされるため、家計調査の雇用者数とは乖離しやすいです。一方、家計調査では、労働力人口の減少や経済的理由によるパートタイム就業者の増加が見られ、ヘッドラインほど強くない面もあります。つまり、NFPが実際の雇用者数の強さを過大に見せている可能性があり、歪みの解消にはまだ時間が必要と見られます。このような状況では、労働市場の過熱感は高まりにくいです。

図表4.消費者信頼感指数(コンファレンスボード)

項目 1月 2月 3月 4月 5月
消費者信頼感指数 89.0 91.0 92.2 93.8 93.1
      現況 121.8 118.7 124.1 124.4 121.2
      期待 67.2 72.6 71.0 73.4 74.4
   雇用が十分 25.8 26.7 27.4 26.9 25.5
   就職が困難 19.0 21.0 21.3 19.4 18.6

出典:公表データを基に外為総研が作成

FRBの反応を見極める二つの物差し

また、表面上は持ちこたえているが内側で二極化が進む労働市場は、5月下旬に発足したばかりのウォーシュ新FRB体制の舵取りにも影響します。議長交代直後で市場との対話に不確実性が残る中で、投資家にとって、発表される数字をFRBがどのように受け止めるかを考えておくことは重要です。そこで、想定される二つの物差しを見ておきたいと思います。

一つは、NFPが10万人台半ば以上に上振れ、平均時給も再加速すれば、利上げリスクが意識されやすくなります。一部の連銀総裁が言及する「必要なら追加利上げも排除しない」というタカ派リスクが現実味を帯び、市場は、早ければ夏・秋にも利上げへ動くシナリオを織り込み始めます。

もう一つはNFPが予想通りの9万人前後、時給(前年比)も+3.4%付近に収まった場合、労働市場が過熱していないためFRBが追加利上げを急ぐ理由はなくなります。同時に、労働市場の耐性により経済が完全に崩れてもいないため、利下げを急ぐ必要もありません。市場は「早期利下げは期待できないが、利上げの恐怖もない」という、現在の高い政策金利(3.50%〜3.75%)をより長く据え置く方針(Higher for Longer)の継続を確信します。 

強すぎる米雇用統計は相場の混乱要因?ドル円のレンジ見通し

では、6月5日の本番はどちらの物差しが適用されるかですが、5月分の雇用統計は「大幅な上振れや下振れは起きにくく、コンセンサスに近い結果」に着地する可能性が高いと考えています。あくまでも雇用者数単体ではなく、賃金、労働参加率などトータルの評価であると断っておきます。

そのため、市場のリアクションとしては、追加利上げ観測が一段と強まるリスクがひとまず抑えられ、高金利据え置きの長期化シナリオが意識されやすいと考えられます。高金利据え置きの長期化観測が補強され、過度な景気後退懸念はいったん後退しやすいです。また、ドル円は日米金利差が縮まらないことから下値は限定され、158円台後半から160円台後半というレンジでの推移が継続する可能性が高いです。


インフレ期待上昇:ドル買い・債券売り(金利上昇)・株はバリュー優位

インフレ期待高まらず・底堅い成長を示唆:レンジ戦略・株インデックス買い

インフレ期待低下:ドル売り・債券ロング・株はディフェンシブ優位

今回の米雇用統計は、「利下げサイクルがいつ再開するか」という視点から、「利上げ観測が再燃するのか、それとも比較的安定した高金利据え置きシナリオにとどまるのか」を見極めるイベントです。「当日にドカンと大きくトレンドが変わる可能性は低く、現在の高金利据え置きシナリオが淡々と強化されるだろう」と、冷静に構えておくことが理にかなった投資戦略と考えています。

図表5.ドル円チャート

ドル円 8時間足/25・100本移動平均線/RSI(14) 2026年6月4日

ドル円 8時間足/25・100本移動平均線/RSI(14) 外為どっとコム「外貨ネクストネオ」

 

ドル円 8時間足
出所:外為どっとコム「ネオチャート

米雇用統計の実績・市場予想と関連経済指標データ

図表6.[雇用統計の実績と予想]

年月 非農業雇用者数変化(万人) 失業率(%)
予想値 初回結果 予想値 初回結果
2026年05 9.2 - 4.3 -
2026年04月 6.2 11.5 4.3 4.3
2026年03月 6.5 17.8 4.4 4.3
2026年02月 5.5 -13.3 4.3 4.4
2026年01月 7.0 13.0 4.4 4.3
2025年12月 7.0 5.0 4.5 4.4

 

年月 平均時給/前月比(%) 労働参加率(%)
予想値 初回結果 初回結果
2026年05月 0.3 - -
2026年04月 0.3 0.2 61.8
2026年03月 0.3 0.2 61.9
2026年02月 0.3 0.4 62.0
2026年01月 0.3 0.4 62.5
2025年12月 0.3 0.3 62.4

 

◇関連の経済データ実績

年月 ISM製造業雇用指数 ISM非製造業雇用指数
2026年05 48.6 47.9
2026年04 46.4 48.0
2026年03月 48.7 45.2
2026年02月 48.8 51.8
2026年01月 48.1 50.3
2025年12月 44.9 52.0

出所:Bloomberg、外為どっとコム「経済指標カレンダー
市場予想は弊社経済カレンダーより、2026年6月3日 現在

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外為どっとコム総合研究所
小野 直人
株式会社DZHフィナンシャルリサーチでの情報配信業務、上田ハーロー株式会社での調査・市場部門を経て、2021年より外為どっとコム総合研究所へ参画。ニュースベンダーとFX会社で培った「情報の目利き力」と「市場実務の経験」を武器に、個人投資家へ有益な情報を発信している。ドル円などの主要通貨に加え、トルコリラ・メキシコペソなどの新興国通貨、日経平均・NYダウといった株価指数(CFD)まで、幅広い金融商品の分析を得意とするマーケットアナリスト。
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