
トルコリラ円の現状と重要トピック
トルコ中央銀行(TCMB)は12月11日、政策金利を39.5%から38.0%へ引き下げました。これは、最近の物価上昇(インフレ)が少し落ち着いてきたと判断したためです。実際、11月の消費者物価指数(CPI)は前年比+31.07%(月間では0.87%増)と、伸びが鈍化しています。
為替市場では、ドル/トルコリラ(USD/TRY)が42リラ台後半で小動き、リラ/円(TRY/JPY)は3.6円付近を中心に推移しています。ただし、年末年始は治安関連のニュースや取引参加者が減ることによる急変動に注意が必要です。
【政策金利】38.0%へ利下げ実施、次回は「様子見」の可能性も
今回実施された150bp(1.50%ポイント)の利下げは、市場の予想よりも少し早めの対応でした。金利は下がりましたが、物価の落ち着きが続くのであれば、これが「緩みすぎ(=リラ安要因)」とは判断されにくい状況です。中央銀行は「毎回データを見て決める」という姿勢を崩していないため、次回会合では利下げ幅を小さくする、あるいは一旦様子を見る可能性もあります。
【トルコ経済】インフレ率は改善中、ただし「年明けの値上げ」に警戒
11月の物価上昇率は+31.07%と、10月よりも改善しました。月単位の上昇率も+0.87%と小幅です。しかし安心はできません。年明け(1月)には最低賃金の改定や公共料金、エネルギー価格の見直しが控えており、これによって再び物価が上がるリスクがあります。今後は、変動の大きい食品などを除いた「サービスの価格」や「コア指数(基礎的な物価)」が本当に落ち着いているかが焦点になります。
【外貨準備高】「金額」だけでなく「中身」に課題あり
トルコが持っている外貨(外貨準備高)や銀行の資金データを見ると、金額自体は増えています。しかし、その中身が「短期間で返さなければならない資金」に頼りすぎている点は不安材料です。短期資金が多いと、いざという時に市場を安定させるための余力が読みづらく、リラが売られやすい地合いが残ります。特に年末は市場の取引量が減るため、少額の注文でも相場が大きく動きやすい点にご注意ください。
【地政学リスク】治安ニュースによる「短期的なリラ売り」
年末に向けて、過激派組織に関連する摘発や衝突のニュースが増えています。大きな事件が報じられると、「観光客が減るのでは?」「ビジネスが停滞するのでは?」という懸念から、短期的にリラが売られやすくなります。ニュースが出た際は慌てず、続報や政府の公式発表を確認してから動くのが無難です。
【相場予想】ドルリラ・リラ円の今後のレンジ
現在、ドル/トルコリラ(USD/TRY)は42リラ台後半で動きが小さくなっています。利下げは「リラ安」要因ですが、物価の落ち着きが支えとなり、大きく崩れることも急騰することもない状態です。
これを踏まえたトルコリラ/円(TRY/JPY)の予想レンジは以下の通りです。
- 予想レンジ:3.60円台後半 〜 3.70円近辺
基本スタンスは「やや慎重」に。重要イベント前は保有ポジションを小さくするのが現実的な戦略です。
今後の重要イベント予定
- 1月5日(月):12月消費者物価指数(CPI)
- 1月22日(木):トルコ中銀 政策金利発表
これだけは押さえたい!3つのポイント
- 金利は下がったが、「物価の落ち着き」が続くかが運命の分かれ道。
- 外貨準備は量だけでなく「質」に注意。短期資金頼みなら警戒が必要。
- 治安ニュースと年末の取引量低下による、急な値動きに注意。
TRY/JPY テクニカル分析と売買ポイント(2025/12/30時点)

現在のトレンド:今は「戻り売り」が優勢
9月〜10月は弱含みでしたが、11月には一時3.704円前後まで上昇しました。しかし11月後半からは「高値も安値も切り下がる」形になっており、12月に入ってからは「上がっても10日移動平均線(10MA)で頭を抑えられる」展開です。現在、ローソク足は10MAの下にあり、RSI(相場の勢い)も50以下の40台(弱気)で推移しています。秋頃は「下がったら買い」が正解でしたが、12月現在は「上がったら売り」が有利な地合いに変わっている点に注意してください。
【重要】価格の壁となる「上値メド」と「下値メド」
上値抵抗線
- 3.61〜3.65円(10日移動平均線と、直近で上がったところ)
- 3.68円(12月前半の高値)
- 3.70〜3.704円(11月の最高値。ここを超えるまでは本格的な上昇とは言えません)
下値支持線
- 3.60円(キリの良い数字・多くの注文が集まる価格)
- 3.585円(直近で安値をつけた場所)
- 3.56〜3.57円(過去にもみ合った価格帯の下限)
- 3.51円(今年の中での安値圏・最終防衛ライン)
今後の値動きシミュレーション
上昇(回復)パターン
終値で10日移動平均線をしっかり超えて、RSIが50以上で安定した場合。
→ 3.65円 → 3.68円へと順に上がる可能性があります。3.70円台を維持できれば、下落トレンド終了のサインです。
下落(続落)パターン
反発が弱く、終値で3.60円を割ってしまった場合。
→ 3.585円を試しに行きます。ここも割り込むと3.56円〜3.57円、勢いがつけば3.51円方向への下落リスクが高まります。
具体的な売買戦略
① 押し目買いを狙う場合(条件付き)
- 買うタイミング:終値で「10日移動平均線」を超えたのを確認してから。または、3.60〜3.59円まで下がってすぐに戻した(下ヒゲが出た)時。
- 利益確定の目安:3.65円 → 3.68円。強ければ3.70円手前。
- 損切りライン:3.585円を明確に割るか、3.60円を終値で割った時。
② 戻り売りを狙う場合(現在の相場向き)
- 売るタイミング:3.61〜3.65円付近まで上がったが、勢いが止まった(上ヒゲや陰線が出た)時。
- 利益確定の目安:3.60円 → 3.585円。割れれば3.56円台へ。
- 損切りライン:3.68円を終値で超えた時。
【結論】
チャートの形状を見る限り、現状は「移動平均線の下にいる=売り有利」です。流れが変わるサインは「終値での10日移動平均線越え」と「RSIの50超え」です。これが揃うまでは、買いは慎重に、売りは細かく利益を確定するスタンスが有効でしょう。
2025年のトルコリラ円振り返り
なお、2025年のトルコリラ円は、12/29(14時)段階で3.633円であり、年間の下落幅は約0.77円となった。2024年の0.31円に比べると下落の幅は大きいが2年連続で1円未満のトルコリラ安・円高となった。
| 年 | 年初始値 | 年末終値 | 下落値幅(円) |
|---|---|---|---|
| 2015 | 51.320 | 41.175 | 10.145 |
| 2016 | 41.076 | 33.140 | 7.936 |
| 2017 | 33.049 | 29.666 | 3.383 |
| 2018 | 29.577 | 20.650 | 8.927 |
| 2019 | 20.634 | 18.216 | 2.418 |
| 2020 | 18.252 | 13.864 | 4.388 |
| 2021 | 13.763 | 8.686 | 5.077 |
| 2022 | 8.360 | 6.988 | 1.372 |
| 2023 | 6.966 | 4.746 | 2.220 |
| 2024 | 4.715 | 4.401 | 0.314 |
| 2025 | 4.406 | 3.633(12/29時点) | 0.773(12/29時点) |
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