
2026年に向けて円安は続く?カギを握る米金利と日本の不確実性
年末にかけてのドル/円相場は、「日米金利差の継続」と「高市政権の経済政策」が、引き続き円安(ドル高)に進みやすい要因となっています。しかしその一方で、アメリカの景気減速の兆しや、米連邦準備制度理事会(FRB)が追加の利下げに慎重な"様子見"の姿勢を示していることから、ドル高の勢いを打ち消す場面も増えそうです。今後の方向性は、発表される米国の経済指標の結果次第で変わりやすいでしょう。
FRBは12月の金融政策を決める米連邦公開市場委員会(FOMC)で、追加の利下げについては慎重に判断する姿勢を強めました。同時に、市場へのお金の流れをスムーズにする仕組み(常設レポ)を強化し、金融システムを安定させる措置を講じました。これは資金調達への安心感につながり、株価などリスクのある資産への投資意欲を支え、結果として円安が進む後押しとなる可能性があります。
ただし、アメリカの消費者心理の悪化や、片山さつき財務相による「行き過ぎた円安は望ましくない」「介入はフリーハンド」といった発言や、実際に円買い介入を行うリスクには注意が必要です。年末年始は市場参加者が少なく取引が閑散としやすいため、ドル円レートが上下に大きく振れる可能性があります。
ドル/円の主役はやはり「日米金利差」
為替相場を動かす最も大きな要因は、日本とアメリカの金利差、特にアメリカの長期金利の動向です。12月後半の米10年金利は4.1%台で推移しており、高い水準を維持しています。この金利差が縮まらない限り、円が本格的に買われる力は弱いままとなりそうです。
もっとも、様々な通貨に対する米ドルの総合的な価値を示すドル指数(DXY)は、年初から見ると下落傾向にあります。年末にかけては市場で「ドル安・株高」のムードが徐々に強まりました。世界的にドルが売られやすい雰囲気が戻ってくると、ドル/円の上昇の勢いも弱まる可能性があります。
パウエル議長が重視するものは?FRBの次の一手とは?
12月のFOMC終了後、FRBのパウエル議長は「これまでの利下げで、金利は景気を熱しすぎず冷やしすぎない適切な範囲に入った」と述べ、今後の追加利下げは経済データ次第で判断するという"様子見"の姿勢を強調しました。同時に、市場へのお金の流れをスムーズにする仕組み(常設レポ)の強化に言及し、金融システムの安定化を図りました。これにより、年末年始の資金不足への懸念が和らぎ、相場が安定しやすくなる可能性があります。
米国の景気は減速?雇用・消費の最新データから読み解く
- 雇用: 11月の失業率は4.6%と、前年から上昇しました。雇用の勢いは緩やかに弱まっていますが、急激な悪化は避けられています。この状況は、FRBが追加利下げを急ぐ決定的な理由にも、利下げをやめる理由にもなりにくい、絶妙なバランスの上にあります。
- 需要・心理: 12月の米コンファレンスボード消費者信頼感指数は89.1と5か月連続で低下しました。 今後の収入や雇用に対する不安が強く、年末の消費にブレーキをかける可能性があります。これは米長期金利の上昇を抑える要因となり、結果的にドル/円の上昇を抑える力にもなります。
年末相場の円安バイアスと潜むリスク
年末の相場は、市場参加者が減って取引量が少なくなる中で、「金利が下がれば、株価が上がり、投資家は積極的にリスクを取りやすくなる(リスク選好)」という関係が強まる傾向があります。12月のFOMCで金融システムの安定化策が示されたことで、年越しの資金繰りに対する安心感が広がれば、短期的には金利の低い円を売って金利の高いドルを買う動き(円キャリー取引)が続く追い風となります。
一方で、日本は財政、金利、経済成長の面で課題を抱えており、政府・日銀がどこまで円安を許容するのか、市場の様々な憶測を呼んでいます。政府・日銀関係者からの円安けん制発言が出た際は、円安の勢いを鈍らせる要因になります。
IMMポジションを見ると、投機筋の「円売り」ポジションが徐々に増え、直近では「円買い」を凌駕しました。これはさらなる円安が進むエネルギーになる一方で、政府・日銀による為替介入やアメリカの弱い経済指標、地政学的な問題などをきっかけに、一気に円を買い戻す動きが強まると、急速な円高が進む可能性もはらんでいます。

出所:外為どっとコムサイト
【重要カレンダー】注目すべき経済指標とイベント日程
- 12/30:米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
- 2026/1/7:12月米ADP雇用統計
- 2026/1/9:12月米雇用統計
- 2026/1/13:12月米消費者物価指数(CPI)
- 2026/1/27–28:FOMC(政策金利会合/28日に会見)
テクニカル分析 - USD/JPY日足チャートの詳細解説
(2025年12月29日時点)
現在、ドル/円は156円台で方向感を探る「保ち合い」の状態です。日々の値動きを見ると、短期的な上昇傾向を示す10日移動平均線(MA10)を上回って推移しており、上昇の勢いはまだ残っています。相場の過熱感を示すRSIという指標は中立的な水準にあり、強い勢いはありませんが、失速のサインも出ていません。
結論として、短期的な上昇の目安である「10日移動平均線」と、当面の上値の壁となっている「157円台後半」のどちらを終値で抜けるかが、次の方向性を決める重要な局面と言えます。
ドル/円、上がる?下がる?2つの値動きパターン
- 上昇パターン: 10日移動平均線を下回らずに推移し、157円台後半を終値で明確に上抜けると、上昇の勢いが強まったと判断できます。その場合、次の目標は158円台半ばあたりが考えられます。
- 下落パターン: 10日移動平均線を終値で割り込むと、調整局面に入る可能性が出てきます。そうなると、下値の目安として155円台後半から154円台後半の価格帯を試しにいく展開が考えられます。
初心者でもわかる!具体的なドル/円の売買戦略と注意点
具体的な売買戦略としては、まず上昇を狙うのであれば、重要な抵抗線である157円台後半を終値で明確に上抜けたことを確認してから、その流れに乗る「順張り」が有効と考えられます。もし短期的な上昇の目安である10日移動平均線を終値で割り込むような動きが見られた場合は、一旦撤退を考えるなど慎重な判断が求められます。
一方、下落を狙う戦略としては、これまで支持線として機能していた10日移動平均線を割り込み、その後、同線が上値の抵抗として働くことを確認した後の「戻り売り」が考えられます。その際の利益確定の目安は155円台後半、次の目標は154円台後半に設定することが考えられるでしょう。
いずれの戦略を取るにせよ、特に年末年始は市場参加者が減り、価格が予期せぬ動きを見せやすい時期です。リスク管理として、あらかじめ売買価格を指定しておく「指値注文」や損失を限定する「逆指値注文」を設定しておくことが重要です。また、一度に大きな金額で取引せず、時間を分けて売買するなど、慎重な対応を心がけましょう。
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