先週末の海外市場でドル円は、植田日銀総裁会見後、市場では「次の利上げには時間がかかる」との見方が広がり、円を売る動きにつながった。取引終了間際には一時157.78円と11月20日以来約1カ月ぶりの高値を付けた。片山財務相の円安けん制発言で156.94円付近まで下押しする場面もあったが、反応は一時的だった。ユーロドルは、NY時間に付けた1.1703ドルから1.1738ドルで取引された。ユーロ円は一時184.75円と1999年のユーロ導入以来の高値を更新した。
本日の東京時間でのドル円は、底堅い動きになりそうだ。先週行われた日銀の金融政策決定会合では市場予想通りに25ベーシスポイントの引き上げ、1995年以来となる0.75%へ利上げが決定された。また、事前報道通りに、声明文では今後も金融引き締め継続が示唆された。しかし、中立金利の水準について具体的な言及もなく、市場の予想範囲内だったこともあり円安が進みやすい地合いだ。
先週の植田日銀総裁の会見では、「中立金利についてはなお距離がある」と言及された。しかし市場は、今後の利上げスピードが速くなることや利上げ幅が広がることはないと捉え、円安が進んだ。円安は対ドルでは約1カ月振り程度の水準だが、対ユーロでは1999年のユーロ導入以来、対ポンドでは2008年8月以来、ランド円は2015年8月以来など円が独歩安。なお、早朝のオセアニア市場では、クロス円は先週よりもさらに円安が進行している。
債券市場では、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが1999年以来の2.02%に乗せている。長期金利上昇に為替市場が追随できない(円買いにならない)理由としては、債券売りは日銀の金融引き締めだけではなく、高市政権の財政拡張路線に対する懸念が強いからだ。また、高市首相が所信表明演説で示した「責任ある積極財政」の「責任ある」という文言については、海外勢を中心に疑念を呈している。
もともと、日本の純債務残高は比較可能な84カ国で最低水準だったが、高市政権は見かけをよくするために、その純債務残高を「債務から年金積立金を差し引く経済協力開発機構(OECD)基準」へとゴールポストをずらす策を進めた。OECD基準は年金積立金を債務から差し引くことができるのだが、実際は年金積立金を債務返済に利用することはできないため、財政面では非常に問題がある。国内の政権支持率とは裏腹に、国際的には財政政策については支持されていない。幸い日経平均は堅調でトリプル安にはなっていないが、本邦の債券売り(利回り上昇)、円売り地合いは変わらないだろう。
しかしながら、利上げを継続した場合でも円売りが圧力が止まらない場合は、外圧も加わり円の買い戻しが進むリスクには警戒したい。10月の日米財務相会談後に米財務省は、「為替レートの過度な変動を防ぐ上で、健全な金融政策の策定とコミュニケーションが果たす重要な役割を強調した」と発表。今年の6月5日に公表された「外国為替報告書」でも、日本銀行の金融政策について、ドル高・円安を是正する観点から引き締め政策の継続が必要との見解を示した。トランプ政権が、日銀の利上げと円安を阻止しようとしているのは明らかだ。
ただ、ドル安政策を表立って進めると、年央に起きたような米国のトリプル安が懸念されることで、各国に対しドル高の軌道修正を個別に行っている可能性がある。また、米最高裁でトランプ関税を違憲とした場合には、貿易不均衡を為替で調整する可能性もあり、今後の展開には要注意になりそうだ。
なお、週末に公開されたエプスタイン・ファイルでは、司法省のウェブサイトから、トランプ大統領の顔写真やその他多くのファイルが削除されたことが問題視されている。また、今回公開されたファイルは部分的なもので、残りの文書がいつ公開されるかなどは未定のまま。民主党党員だけでなく、一部共和党員も司法省の動きに対して不満を表明する事態になっている。もっとも、今後の展開次第だが、エプスタイン・ファイルがすぐにトランプ政権及び市場に影響を与える動きにはなりにくいだろう。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
