
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年12月5日 15時40分
FOMC:利下げは織り込み済みで焦点は『その後』、日銀への思惑もあってドル円は動きにくい
米ドル/円、日米金融政策への思惑が交錯
米ドル/円は上値の重い展開でした。本邦の10年債利回りが18年ぶりの高水準をつける中で、日銀の追加利上げ期待や米FRBの追加利下げ観測から154.666円まで下落しました。その後、日銀の利上げペースに大きな変化はないとの見方から156.177円まで反発しました。
しかし、米国の冴えないADP民間雇用者数や、日本政府が日銀の今月利上げを容認する方針であるとの一部報道を受けて、米ドル/円は154.508円まで下落しました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
短期的な動きに振り回されないよう注意
■FOMC:利下げは織り込み済み、焦点は「その後」
来週のFOMCでは、3会合連続となる0.25%の利下げが有力視されています。
ただし、米国では「労働市場の減速」と「インフレの高止まり」という相反する要因が同時に存在しており、FRBは慎重な舵取りを迫られています。
利下げが実施されても、インフレを警戒したタカ派寄りのガイダンスが維持される可能性が高く、利下げペースが加速するとは考えにくい状況です。
■日銀:追加利上げは急がず、円高も限定的
18-19日の日銀会合では0.25%の利上げが確実視されています。もっとも、次回以降の利上げについては「春闘の賃上げ動向」「ガソリンの暫定税率撤廃の影響」「米関税による企業収益への影響」を確認したいとの見方から、追加利上げを急ぐ姿勢は示されないでしょう。
■ドル円:上下ともに伸びにくい「レンジ相場」か
米利下げ発表直後は一時的にドル安(ドル円下落)が出やすいものの、「材料出尽くし」で下げが長続きしない一方、日銀が大胆にタカ派になり切れないため、円高も進みにくいと考えられます。
結果的に、「タカ派寄りの利下げ」と「ハト派寄りの利上げ」が綱引き状態となり、米ドル/円は上方向の重さを感じながらも、限られたレンジで上下動する展開になると考えています。
■リスク要因:トランプ関税の最高裁判断
判決時期は不透明ですが、関税に関する最高裁判断が年内に出る可能性もあり、
突発的なニュースが出ればドル円の値幅が急拡大するリスクがあります。
155.00円中心に短期売買が有効か(テクニカル分析)
米ドル/円は、反発しても直ちに跳ね返されてじりじりと上値を削り、日足一目均衡表の基準線付近まで下げています。ただ、一目の雲の上側を維持しているほか、50日移動平均線が支持線として機能しているなど、トレンドが変化したとは言えない状況です。目先は、21日移動平均線に寄り始めた一目転換線・基準線に絡みながらの推移が見込まれそうです。
155円前後のレンジを前提にした短期売買が有効と考え、157.00円付近で戻り売り(ドル売り)を検討し、153.50円付近で押し目買い(ドル買い)を検討したいと考えています。
【米ドル/円チャート 日足】

出典:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:USD/JPY:153.000-157.000
12/8 週のイベント:

一言コメント
いよいよ、日本時間6日にFIFAワールドカップ(W杯)北中米大会の組み合わせ抽選会が行われます。著名人風に言えば「そうっ!負けられない戦いなんです」と叫びたくなるところですが、来年に向けて最も注目すべきイベントは、米中間選挙よりもむしろワールドカップだと言えるでしょう(あくまでも私的な見解です)。
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