
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年11月7日 15時09分
ポンドは対円で三役逆転となれば下落幅拡大、ユーロは株価次第もレンジか
ユーロ/円・ポンド/円は上値の重い展開
ユーロ/円やポンド/円は上値の重い展開となりました。11月26日の予算案提出を前に、リーブス英財務相が大規模増税を示唆したことで、スターマー政権への批判や成長に対する不透明感が高まり、ポンドが下落。ユーロもつられる形で冴えない展開となり、ポンド/円は199.063円、ユーロ/円は175.704円まで下落しました。世界的に株式市場に調整が入ったこともリスク回避の円買いを誘い、クロス円の上値を抑える要因となりました。その後、ポンド/円は201.37円付近、ユーロ/円は177.21円付近まで下げ幅を縮め、もみ合う展開となりました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研TEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
英12月利下げはデータ次第、ユーロは方向性欠く
ECBによる利下げサイクルは終了したとみられる点は、ユーロのサポート材料となります。ただ、サポート材料はあるが、他要因が不透明で方向感に欠け、ユーロの上値を積極的に買い上げるような展開も見込みにくいです。他地域の政治状況や株式市場の動向に振り回され、方向性は見定めにくい可能性があります。ユーロ/円は、株価動向次第と言えそうです。
一方、英国は先週の金融政策委員会で金利を4.00%に据え置くことを決定しました。声明では「金利は徐々に下がる公算が大きい」とされ、12月の利下げに一歩近づいた印象でした。実際に金融政策メンバー9名のうち、今回は4名が0.25%の利下げを支持しています。
しかしながら、英中銀のベイリー総裁は「会合ごとに金融政策の引き締め度合いを検討する」「インフレの下落傾向がより確たるものとなるのを確認してから、追加利下げを行う必要がある」と述べ、12月の利下げに慎重な姿勢を維持しました。
今後のインフレ指標や、11月26日に発表される予算案公表後の財政政策に対する不透明感が解消されれば、利下げに踏み切るとみられ、まずは来週の労働統計データが注目されます。労働統計で失業率の悪化や賃金インフレの抑制が改めて示されれば、ポンド売りが再燃する可能性があります。
ただし、インフレ鈍化が緩やかであるため、労働統計データだけで12月の利下げを断定できる状況にはなく、下値も限定されるとみています。
ポンド/円、短期反発も三役逆転も警戒(テクニカル分析)
ユーロ/円は方向性が定まらず、限られた値幅での上下動が続いています。期間21日のボリンジャーバンドも横ばいで、次なる方向性も見極めづらくなっています。しばらくは、ボリンジャーバンドの−2σ〜+2σの領域を中心とした値動きが継続するのではないかと考えています。
また、ポンド/円は上値を切り下げる展開が続いているものの、199.70円(執筆時点)付近を推移する100日移動平均線にサポートされて下げ渋る展開となっています。日足一目均衡表の雲もこの先、切り上がる形状をしているため、短期的には203.00円付近までの上昇も想定されます。
ただし、上方向は重いと見られ、同水準からは再び200.00円割れを試す流れが強まると予想しています。今後、200.00円を割り込んでくるようであれば、一目均衡表における強い売りシグナルである「三役逆転」の状態となるため、下落幅が広がる可能性があります。
【ユーロ/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:EUR/JPY:174.000-179.000
【ポンド/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:GBP/JPY:197.000-203.000
11/10 週のイベント:

一言コメント
高市首相は、物価高対策として立憲民主党が掲げる「食料品の消費税率を0%に引き下げる」案について、否定的な見解を示しています。財源などの問題があるため、やむを得ない面もあるのでしょうが、「レジシステムの改修に時間がかかる」との釈明は、そろそろやめた方がよいのではないでしょうか。1989年4月に消費税が導入されてから36年が経つにもかかわらず、いまだに制度面で根本的な問題を抱えているのは、いかがなものかと思います。
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