
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年10月31日 15時01分
155円到達で短期調整も、米国内情勢に視点移るか?
米ドル/円、154円台へ上昇
米ドル/円は上昇しました。26日に米中貿易摩擦への懸念が後退したことを受け、週明けは日経平均の5万円台乗せに伴い米ドル/円は153.262円まで上昇しました。その後、米財務省の発表で「ベッセント長官は片山財務相と為替について協議した」「インフレ期待を安定させ、為替レートの過度な変動を防ぐ上で健全な金融政策の策定と対話が果たす役割を強調した」とされたため、日銀の追加利上げが意識され米ドル/円は151.540円まで下落しました。しかし、0.25%利下げとなった米FOMC後の会見でパウエル議長が12月利下げ期待を牽制したことや、金融政策を現状維持とし利上げに慎重な日銀の姿勢を背景に円売り・米ドル買いが進み、米ドル/円は154.448円まで上昇しました。(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
米暫定予算の行方に目が向く危険も
本来なら米雇用統計が発表される週のはずですが、ご存知のように米政府機関が閉鎖されており、発表延期の可能性が高まっています。トランプ米大統領の外遊もあり、予算案を巡る協議はほとんど進んでいません。11月1日から補足的栄養支援プログラム(SNAP)が停止されるほか、航空便の遅延や欠航が増えるなど、市民生活にも議会の停滞による影響が広がりつつあります。SNAPを巡っては20州以上の連合体がトランプ政権に対して訴訟を起こしており、今後抗議活動が活発化する可能性もあります。中には暴動に発展するケースも想定され、それによる社会不安がリスク回避の流れを強める展開も考えられます。日米の金融政策を経て、今度は暫定予算を巡る議論に市場の目線が向かうかもしれません。また、次期FRB議長候補として選考に残っているボウマンFRB理事やウォラー理事の発言にも注意したいところです。
加えて、経済指標では雇用統計を補完する意味合いの民間データであるADP雇用統計やチャレンジャー社の人員削減数が発表されます。ADPは労働市場の鈍化が底を打ち始めた可能性があるとの見解を示しており、これを裏付けるようなデータであれば米国の12月利下げ期待がさらに後退し、米ドルをサポートする可能性があります。労働市場の悪化が懸念される中、これらの結果は注目されます。また、円安是正に消極的な高市政権と利上げに慎重な日銀の姿勢により円売り圧力が継続するとみられ、円の上値は抑制されやすいでしょう。こうした点を踏まえると、米ドル/円は本邦の円安許容度を試しつつ、じりじりと上値を試す展開が想定されます。
155円台到達で、短期調整も(テクニカル分析)
米ドル/円は21日移動平均線の上昇に支えられ、底堅い推移が続いています。ただ、昨年7月3日に付けた高値161.949円から引いたレジスタンスライン付近で上昇が一服しています。ここを突破すれば、その次は上昇チャネルの上限付近の約155.00円や、10月1日の安値146.583円を起点とするフィボナッチエクスパンションの100%ラインである156.067円が意識されてきます。ただし短期的に上昇ペースが速いため、155円台に入ると短期的な調整が入る可能性が高いと考えています。
【米ドル/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:USD/JPY:151.500-155.500
11/03 週のイベント:

一言コメント
APECではトランプ米大統領の暴言は聞かれず、金融市場には安堵感が漂っています。しかし、彼はトランプ大統領ですから、状況が変われば再び「トランプ節」が聞かれるでしょう。
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