
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年9月5日 12時45分
日仏の政局不透明感でユーロ/円は方向出にくいか、ポンド/円も新たな材料待ち
ユーロ/円、ポンド/円は複数材料で振幅
ユーロ/円とポンド/円は方向性がつかみづらい展開となりました。氷見野日銀副総裁の利上げに対する慎重発言や、自民党内での「石破おろし」再燃に伴う円売りを受け、ユーロ/円は173.410円、ポンド/円は200.275円まで上昇しました。
しかし、世界的な金利上昇を背景に英国の政府借入コスト上昇が懸念されるとポンド売りが強まり、ユーロ/円は172.620円付近、ポンド/円は198.320円付近まで押し戻されました。
その後、本邦超長期ゾーンを中心とした金利上昇が意識され、ユーロ/円は173.215円、ポンド/円は199.817円まで値を戻す局面もありましたが、米国が日本への相互関税および自動車関税をともに15%へ見直す大統領令に署名し、関税不透明感が和らいだことで上値は抑制されました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研TEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
日仏で政治が混乱、次の方向見極め
フランスでは9月8日に国民議会で信任投票が行われます。一方、日本では同日、自民党党員を対象に臨時総裁選実施の是非を問う意思確認日となります。
フランスも日本も首相の信認が低下しています。フランスでは政権崩壊時にマクロン大統領が新たな首相を指名するか解散総選挙に踏み切る可能性がありますし、日本でも石破首相が解散総選挙を打って出る可能性があります。両国の政局不透明感からユーロも円も取り扱いづらい状況です。円については日米関税合意で見通しの不確実性が緩和され、日銀が利上げに前向きになるのではとの観測も浮上しており、円の方向性をさらに見極めにくくしています。
こうした状況が落ち着くまでは、ユーロ/円は方向性を定めにくく、不安定な推移が続くと考えています。
一方、英国ではリーブス財務相が秋季予算案を11月26日に公表すると発表しました。従来は10月に予定されていましたが、約1か月遅延した格好です。
同氏は「インフレと借入コストを引き下げる必要がある」「日常的な支出を厳しく管理し、財政ルールを徹底し実現する」と述べ、借入コスト上昇を抑え、市場を落ち着かせました。
10月の提出前にこうした展開を予想していましたが、このタイミングは想定より早く、投資機会を逃したように感じています。ただ、予算案を巡る議論の中で11月に向け同様の事態が再度起こる可能性もあり、英国の動向を注視したいと考えています。
来週は目立った独自材料が少ない中、米ドルと円の綱引きが続き、明確な方向性は見えにくいだろうと予想しています。
ユーロ/円の支持帯は厚め、ポンド/円の買いは支持線まで引き付けたい(テクニカル分析)
ユーロ/円は50日移動平均線や日足一目均衡表の雲に下から支えられる支持帯の厚みが増しており、7月高値の173.893円超えが期待できます。この水準を突破すれば、2024年7月高値の175.423円が意識されるでしょう。目先の高値付近である173円半ば超えでは売りで構えるつもりですが、174.000円突破後に175.000円を意識すると、ポジションは少額にとどめたいと考えています。一方、下落時は多少のオーバーシュートがあっても心理的節目の170.000円付近で下げ止まると見ています。
ポンド/円は今年4月安値の184.381円を起点とする支持線が機能しており、全体として上方向を試す流れが続きやすいと感じています。ただし、日足一目均衡表の雲の上限低下でサポート力は限定的となり、短期的には調整局面を挟む可能性があります。高値圏での積極的な買い進みは厳しく、少なくとも支持線に沿う198.000円付近まで下落を待って買いを検討したいと考えています。このレベルを割り込めば、雲の上限推移付近の197.000円で再度買いを検討し、そこも下回れば売り目線に転じる方針です。
【ユーロ/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:EUR/JPY:169.000-175.000
【ポンド/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:GBP/JPY:196.00-202.000
9/8 週のイベント:

一言コメント
ペイパーというのは台風15号の名称です。名前をつける主な理由は、複数の台風が発生した際の混乱を防ぎ、情報を正確に伝達するためだそうですが、長年、台風を番号で呼んできた私にとっては、かえって分かりにくく感じます。和名ならもっと覚えやすいのでしょうが、そうするといじめなどの問題もあり、そうできないのでしょうね。
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