ドル/円米雇用統計FX売買戦略!9月相場を徹底分析 2025/9/5 #外為ドキッ(2025年9月5日(金) 12:00~13:00)
FX実践解説、相場分析&リアルトレード、ドル円などの注目材料(2025年9月5日(金) 21:00~23:00)
執筆日時:2025年9月4日 13時00分
執筆者 :株式会社外為どっとコム総合研究所 小野 直人
9月5日のアメリカ 雇用統計の予想と戦略「9月利下げ幅見通しが固まるか、ドル円は下押し局面で買い」2025年9月号-By 外為どっとコム総研 #外為ドキッ
はじめに-FRBの利下げへの積極性を見極め
2025年9月5日(金)、日本時間21時30分に米国で8月分の雇用統計が発表されます。7月分の結果はFRBが注視するインフレと労働市場のリスク・バランスに一石を投じ、FRBのこれまでのインフレ注視スタンスを変化させ、利下げ再開に道を開く形になりました。雇用統計の数字次第で、FRBが9月会合でどこまで積極的に利下げに動くか市場の見解が固まることになりそうです。では、振り返りからです。
前回のおさらい-利下げ再開観測が急上昇
・政府部門は減速
8月1日に発表された米国の7月非農業部門雇用者数(NFP)は、市場予想の10.4万人に対して7.3万人と、予想を大幅に下回る結果となりました。加えて、5月分のNFPは初回発表値の13.9万人から1.9万人へ、6月分は14.7万人から1.4万人へと下方修正されるなど、雇用ペースの著しい鈍化が明らかになりました。
失業率は4.2%と小幅な悪化となったものの、これは労働参加率が6月の62.3%から62.2%へ低下したことが、失業率の悪化を一部相殺したためとみられます。仮に労働参加率が前回と同水準であれば、失業率は4.3%に達していた可能性があります。
図表1.分野別新規雇用者数(千人)※出所:データ米国労働省
各市場の反応
【為替市場】
米ドル/円は3円超の急落となりました。
米労働市場の減速を受けて、米金融当局による利下げ期待が高まり、米ドル/円は150.50円付近から149.25円付近まで急落。その後も売り圧力が強い中、NY終盤には147.29円まで下げ幅を広げました。長期金利の指標となる米10年債利回りも、4.40%付近から4.21%付近まで低下しました。
【株式市場】
労働市場の軟化を受けて、米国の経済成長に対する警戒感が高まり、主要株価指数は揃って下落しました。決算内容が嫌気されたアマゾン・ドット・コムの下落も相場の重しとなりました。
- ダウ平均:前日比 -1.23%(-542.40)の43,588.58ドル
- ナスダック総合:前日比 -2.24%(-472.32)の20,650.13
- S&P500種:前日比 -1.60%(-101.38)の6,238.01
【金市場】
株安・金利低下などリスクオフの流れが強まり、安全資産とされる金に買いが集まりました。スポット価格は3,364ドル付近まで上昇し、その後も高値圏でもみ合いながら、週の取引を終えました。
図表2.前回発表前後のドル円の動き
米ドル/円 5分足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
今回の見どころ-NFPの大幅悪化は回避
・ブレークイーブン雇用者数低下で弱めのNFPでも評価が分かれることも
・イベント後は9月9日のベンチマーク改定へ視線が移る
非農業部門雇用者数(NFP)の3カ月平均は約3.6万人へと急減速し、安定的な雇用創出に要するとされる新規雇用者数(ブレークイーブン雇用者数)10~15万人を明確に下回っています。これは雇用創出ペースの鈍化が持続していることを示し、パンデミック後の回復局面から「減速を伴う新たな均衡」へと移行しつつある可能性を示唆しています。労働力人口の減少で、新たなブレークイーブン雇用者数は3~8万人へ低下しているとの指摘もあります。こうした中、9月5日公表の8月分雇用統計は、企業の大規模レイオフを回避する動きが続く一方、AI活用による生産性向上・コスト削減を背景に採用は抑制されやすい状況から、トレンドは総じて「緩やかな減速」を示すと見込まれます。
図表3.雇用関連データの推移

雇用動態調査の表
出所:各種公表データを基に外為総研が作成
金融政策を巡っては、コアPCEが基調的なトレンドを崩していない一方で、FRBはインフレの粘着性と雇用減速リスクを天秤にかける局面にあります。雇用統計が「極端に強い」結果でない限り、9月FOMCでの利下げ観測は維持される公算が大きいでしょう。さらに、雇用・賃金が想定以上に弱ければ、0.50%の利下げや「年内毎会合での利下げ」論が浮上する余地も残ります。
図表4.雇用関連データの推移

出所:各種公表データを基に外為総研が作成
NFPの弱含み・失業率の上振れ・賃金の鈍化が揃えば、米金利低下、株式はディフェンシブ優位、ドルは重くなる展開が想定されます。一方、賃金が想定以上に加速すればスタグフレーション懸念が再燃し、利下げ幅が限定的になるとの観測から、金利反発・株安・ドル高に振れやすいと考えます。また、ブレークイーブン雇用者数の上限付近での着地となれば、雇用市場は想定ほど傷んでいないと評価され、FRBへのハト派な見方が後退し、米ドルを押し上げるでしょう。コンセンサスは、雇用者数7.0万人、失業率4.3%と見込まれており、前回より弱めの着地がメインシナリオです。
リスク要因としては、過去分の改定の方向と規模、労働参加率の低下による失業率悪化の過小評価の可能性、ベンチマーク改定への警戒感などがあります。ベンチマーク改定は9月9日まで待つ必要がありますが、指標結果を受けた当初の反応が、時間経過とともに変化するリスクも考えられ、油断はできません。
個人的には、ADP雇用統計発表前ではあるものの、NFPの大幅悪化は回避される一方で、市場コンセンサスには届かないとの思いから、当初、米ドル/円は売りで反応すると考えていますが、米国のインフレがジワリと広がりつつあることから、FRBに利下げを急がせる結果にならず、結果的に米ドル/円の下げ幅も限定されると考えています。
図表5.ドル/円チャート

米ドル/円 日足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
付随データ
図表6.[雇用統計の実績と予想]
| 年月 | 非農業雇用者数変化(万人) | 失業率(%) | ||
| 予想値 | 初回結果 | 予想値 | 初回結果 | |
| 2025年08月 | 7.0 | 2.2 | 4.3 | 4.3 |
| 2025年07月 | 10.4 | 7.3 | 4.3 | 4.2 |
| 2025年06月 | 11.0 | 14.7 | 4.3 | 4.1 |
| 2025年05月 | 13.0 | 13.9 | 4.2 | 4.2 |
| 2025年04月 | 13.0 | 17.7 | 4.2 | 4.2 |
| 2025年03月 | 13.5 | 22.8 | 4.1 | 4.2 |
| 年月 | 平均時給/前月比(%) | 労働参加率(%) | |
| 予想値 | 初回結果 | 初回結果 | |
| 2025年08月 | 0.3 | 0.3 | 62.3 |
| 2025年07月 | 0.3 | 0.3 | 62.2 |
| 2025年06月 | 0.3 | 0.2 | 62.3 |
| 2025年05月 | 0.3 | 0.4 | 62.4 |
| 2025年04月 | 0.3 | 0.2 | 62.6 |
| 2025年03月 | 0.3 | 0.3 | 62.5 |
◇関連の経済データ実績
| 年月 | ISM製造業雇用指数 | ISM非製造業雇用指数 |
| 2025年08月 | 43.8 | 46.5 |
| 2025年07月 | 43.4 | 46.4 |
| 2025年06月 | 45.0 | 47.2 |
| 2025年05月 | 46.8 | 50.7 |
| 2025年04月 | 46.5 | 49.0 |
| 2025年03月 | 44.7 | 46.2 |
出所:Bloomberg、外為どっとコム「経済指標カレンダー」
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