
中東に位置するトルコの通貨リラを取り巻く環境を分析し、トルコリラの今後の値動きを予想した。
執筆:株式会社外為どっとコム総合研究所 シニア為替アナリスト 神田卓也 X(Twitter)
インフレ鈍化で財務相が経済回復に自信...政治リスクはくすぶり続ける
今週4日に発表されたトルコの7月消費者物価指数(CPI)は前年比+33.52%と、2021年11月以来の水準に伸びが鈍化した。2022年10月に85.51%に達していたインフレ率は、2023年に入りトルコ中銀が利上げに転じるなど、当局が金融政策や財政政策を引き締めたことでようやく落ち着きつつある。7月には中銀が利下げを再開。大手格付け会社ムーディーズは利下げの翌日に、金融政策の信頼性向上や、物価上昇率の鈍化、経済不均衡の縮小を理由にトルコの格付けを「B1」から「Ba3」に引き上げた。
こうした中、トルコのシムシェキ財務相は今週6日、あらためて今年末のインフレ率が中銀予測の19~29%(中央値24%)の範囲内に収まるとした上で、インフレ率は2年以内に1桁台に向けてディスインフレ(物価鈍化)が進むとの見通しを示した。一方で、今年の経済成長率は中期目標の4%をやや下回ると予測したが、「一時的な減速であり、急激な経済後退ではない」と説明した。
財務相の見立て通りに経済の修復が進めば、当面は中銀の利下げが継続することになるだろう。もっとも、インフレを加味した実質政策金利は現時点でほぼ+10%に上昇しており、そうした中での利下げはリラ売り材料にはなりにくいと考えられる。ただし、トルコ経済が回復しても、リラの重しのひとつである「政治リスク」が低下する訳ではない。2028年5月までに行われる総選挙に向けて、エルドアン大統領が政治や経済の分野で強権を発動するリスクはくすぶり続けるだろう。
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株式会社外為どっとコム総合研究所 シニア為替アナリスト神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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