
このレポートの概要:米国株式市場と外国為替市場の最新動向と分析
金融マーケットで永く情報発信を行っている田嶋智太郎氏が、米国株式市場の最新動向を詳しく解説します。
一段落しつつある関税問題
先週のS&P500種は5日続伸し、連日の史上最高値更新となった。想定以上に堅調な企業決算や経済指標&データ、通商協議の進展などが、やや過熱気味とも思われる相場の目先的な高値警戒感を打ち消す格好となっている模様。筆者は「これらの買い材料が一つ一つ出尽くしになって行くことへの警戒は怠れない」と個人的には考える。
ことに今週は、トランプ関税の一時停止期限が終了し、上乗せ関税が発動となる8月1日を迎える。それまでには、米国と主要な貿易相手国との間で一定の合意が締結され、ひとまずは市場に安堵感が広がることもあろうが、その時点で「想定していたよりも関税率が引き下がった」などという“買い材料”は一旦出尽くしとなる。そして、その後はトランプ政権発足前よりも高い関税という“現実”と向き合って行くこととなるのである。
S&P500日足チャート

いずれ“決算プレイ”も一巡
今週は米主要企業の決算発表も本格化する。アップルやアマゾン、マイクロソフト、メタといった大手テクノロジー企業の発表も控えており、大いに楽しみなところではあるものの、いわゆる“決算プレイ”が市場を賑わすのも一時のこと。来週7日までには主要企業の決算発表も大方一巡し、以降はしばらく目立った“材料”が提供されなくなる。
確かに、筆者を含む慎重(弱気)派にとって、この数週間が非常に長く感じられるものとなったことは事実である。そして、そうした状態は今しばらく続く可能性もあるが、そう遠くない将来において一旦終わりを迎えるに違いない。
テクニカル的にもそろそろ上げ一服?
ここで、テクニカル分析の手法の一つとして高い評価を得ている『エリオット波動理論』に基づいて、S&P500種のここ数年の値動きについての分析を試みたい。すると、今年4月の安値からの上昇波というのは、2000年安値から構成されてきた5波構成の強気相場における最後の衝撃波=「第5波」と捉えることもできることがわかる。
ちなみに、今年4月につけた安値というのは「2000年安値とその後の主だった安値を結ぶ直線(=サポートライン)」の延長線上に位置している。つまり、S&P500種が今後どこかで一旦下げに転じた場合には、再びこのサポートラインの延長線上が当面の下値の目安になる可能性が高いということになる。
石破首相の進退が焦眉の急
振り返れば、先週は参院選の結果において与党が過半数を割り込んだことや、日米間で通商協議が合意に至るなど、ビッグなサプライズが幾つもあった。
その結果として生じているのが一つに日本国債の利回り急上昇であり、10年物国債に至っては1.60%台を幾度も試す動きとなった。その背景には、一つに参院選で敗北を喫した自民党内で「石破おろし」の動きが加熱していることがある。石破首相の続投方針に反発する一部勢力は総裁選前倒しの実現に向けた国会議員の署名集めを完了させたという。本日(28日)開かれる両院議員懇談会において「総会」の開催が決まり、その時点で首相が辞任する可能性もないではない。目下は、石破首相の進退問題が焦眉の急。それ自体が政局を不安定化させるうえ、仮に辞任となれば次は積極財政派が首相の座に就くとの憶測も日本国債の価格下落につながり、足元では円安材料視されている。
巨額な対米投資の影響についても要考察
折からの貿易協議で日米が合意に至ったことは、欧米間の協議にも合意をもたらし、結果的に関税が米インフレに及ぼす影響の度合いなどが、これまでよりもずっと想定しやすくなる。それにより、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)、日銀も当面の政策方針を定めやすくなり、すでに市場では「日銀が年内に利上げできる環境が整う可能性」との報道が伝わったりもしている。
とはいえ、日・欧がともに通商合意の“代償”として差し出すことを余儀なくされる投資支援の巨額さを軽視することもできない。赤沢経済財政・再生相いわく「トランプ米大統領の任期中」に最大5500億ドルもの円売り・ドル買いが生じることを、今後どう織り込んでいくのかについても徐々に考察せねばなるまい。
ドル円週足チャート

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田嶋智太郎氏
経済アナリスト 慶應義塾大学を卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、経済アナリストに転身。現場体験と綿密な取材活動をもとに、金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産掲載まで幅広い範囲を分析・研究。 WEBサイトで経済・経営のコラム執筆を担当し、株式・外為・商品などの投資ストラテジストとしても高い評価を得ている。 また、「上昇する米国経済に乗って儲ける法」など書籍も手掛けるほか、日経CNBCレギュラーコメンテーターも務める。
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