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S&P500や日経平均を買う前に知りたい! 分散投資でリスクがおさえられる理由

(画像=PIXTA)

 分散投資は、投資リスクを効果的に抑える方法のひとつです。なぜリスク軽減に分散投資は役立つのか、金融工学の理論に基づき、図表を使いながら、わかりやすく解説してみます。あわせて、S&P500や日経225など、投資初心者が取り組みやすい「株価指数」投資が、分散効果が高く、オススメできる理由についてもご紹介します。

分散投資とは

 分散投資とは、資金をひとつの株式に集中させず、複数の異なる銘柄に分けて投資する方法のことです。ハイテク株、生活必需品株、エネルギー株、金融株といった業種や特徴の異なる複数企業の株式に資金を配分します。そうすると、特定の企業や業種の株価が下落したときに、その影響を全体で吸収し、リスクを抑えることができます。

 投資対象を複数の銘柄に分けることで、資産全体のバランスを取ることができる点が、分散投資の大きな強みです。すべての投資先が同じタイミングで悪い結果になることは少なく、ポートフォリオ全体を安定させる効果が期待できます。

「リスクを抑える」という意味

 投資において「リスクを抑える」とは、単に損失を回避することではありません。金融工学の視点では、リスクとはリターンの「不確実性」という「収益の振れ幅(変動性)を数値で捉えたもの」を指します。将来のリターンが「どれだけ予測通りに得られるか」や「どれほど予想を外れる可能性があるか」を測る尺度として、標準偏差などが用いられます。

 まず、金融工学におけるリスクとリターンの基本的な考え方を整理してから、なぜ分散投資を行うことでリスクが軽減されるのかを紹介してみます。

①金融工学の「リターン」

 金融工学において「リターン」とは、ある金融資産に投資した際に得られる利益、または損失の割合を数値で表したものを指します。より厳密には、一定期間における資産価値の変化率を意味しています。「どれだけの収益性を投資対象が持つか」を評価するための基本的な指標です。

 たとえば、ある株式を1株100円で購入し、1年後に120円で売却できた場合、そのリターンは次のように計算されます:

 この場合、1年間で20%のリターンを得たことになります。逆に、売却価格が80円であれば、-20%の損失、すなわちマイナスのリターンです。

「リターン」と「期待リターン」の違い

 投資では、「過去にどれだけリターンを上げたか」ということよりも、「将来どれだけリターンが期待できるか」が重要になります。この将来の見通しを「期待リターン」と呼びます。

 期待リターンの算出方法は、「資本資産評価モデル」や「配当割引モデル」などいくつかあります。S&P500や日経平均のような株価指数の期待リターンには、一般的に「ヒストリカルデータ方式」が利用されています。

 これは過去数年分(10年間や20年間など)のリターンの平均を求め、それを将来の期待リターンとする考え方です。株価指数は数十年にわたる過去データが整備されており、サンプル数も多いので、将来の期待リターンを過去平均から算出する合理性が高いためです。

③金融工学のリスク

 金融工学において「リスク」とは、単に「危険」や「損失の可能性」といった感覚的な意味ではなく、リターン(収益)の「不確実性」を数値で捉えたものを指しています。「どのくらい収益が予測から外れるか」「リターンがどれほどブレるか」を統計的に測定する概念なのです。

 この「リターンのブレ」の度合いは、主に標準偏差という指標で表現されます。標準偏差とは、過去のリターンが平均リターンからどれくらい離れていたかを数値化したもので、値が大きければ大きいほど、実際の収益が期待から外れる可能性が大きい。つまり、「リスクが高い」と判断されます。

 :各年のリターン
 :リターンの数(期間の年数)
平均:すべてのリターンの平均値(期待リターン)

 たとえば、ある資産Aが年平均5%のリターンを持つとしても、ある年には+20%、別の年には-10%というようにばらつきが大きければ、Aは「リスクが高い」資産とされます。一方、ある資産Bも年平均5%のリターンですが、毎年ほぼ5%前後で安定していれば、Bは「リスクが低い」資産です。

 金融工学では「リスク」は「リターンの標準偏差」と考えられており、収益の安定性を評価するための客観的な尺度として用いられます。

④リスク・リターン図

 このように「期待リターン」とは、投資によって得られる成果の見込みであり、「リスク」とは、その成果がどれだけ不確実であるかを示す尺度です。このリターンとリスクの関係を視覚的に捉えるために用いられるのが、「リスク・リターン図」です。


リスク・リターン図

 このように、リスクを横軸、リターンを縦軸にとった二次元グラフ上に、資産やポートフォリオを配置すると、それぞれが、どの程度のリスクを取り、どの程度のリターンが期待できるかを、一目で把握することができます。

分散投資の効果

 さて、ここからは分散投資の効果について考えます。たとえば、ローリスク・ローリターンの金融商品50%、ハイリスク・ハイリターンの金融商品50%の配分で分散投資した場合、そのポートフォリオのリスクとリターンはどうなるのでしょうか。上述したリスク・リターン図に緑色の丸印で表示してみました。

分散投資(50:50)の合成リスク・リターン

 

 2つの金融商品を50%:50%の配分で保有した場合、実際にその合成リターンと合成リスクは、上記の図表のように2つのリスクとリターンを内分する点になるのでしょうか?

 実は、次の図表のように合成リターンの部分は上記のように配分比率によって内分する点になりますが、合成リスクは配分比率で計算されるリスクよりも小さくなります。

実際の分散投資(50:50)のリスク・リターン

 単純に配分比率で計算された合成リスクよりも、実際のポートフォリオのリスクが小さくなる。これが「分散投資効果」なのです。分散投資効果は、複数の金融商品がどのくらい同じ方向に動くかを示す「相関」の程度で強さが変化します。ただし、基本的にリスクを小さくする方向に働きます。

 この効果は資産の数が増えると、さらに大きくなります。たとえば、n個の異なる資産に分散投資すると、各資産の固有リスクは、お互いに打ち消し合うように働きます。結果として、ポートフォリオ全体のリスクは、単純に資産を足し合わせたリスクよりも小さくなり、資産の数が増えるほどリスクはなだらかに逓減します。

手っ取り早い「株価指数投資」

 この分散投資効果を手軽に得る方法が「株価指数」投資です。株価指数(S&P500や日経平均株価など)は、数百社の株式を組み合わせたものなので、各企業ごとの固有リスクを打ち消したものになっています。

つまり、株価指数への投資は、上場企業全体に幅広く分散投資しているのと同じことになるので、それだけで強力な分散投資効果が得られて、ポートフォリオのリスクを小さくすることができるというわけです。

分散投資よりも「お化け株」の集中投資?!

一方で、世の中には分散投資に対する反論として、以下のような意見もあります。それは、「グーグル(Google)やアマゾン(Amazon)、エヌビディア(NVIDIA)のような『お化け株(将来的に大きく成長する株)』を早い段階で見つけて、そこに集中投資したほうが、株価指数よりも早く資産が増やせる」というものです。

 確かに分散投資を行うと、ハイリターンの資産とローリターンの資産を一緒に組み合わせるので、全体のリターンは両者の平均になります。だからハイリターンの資産単独の場合と比較するとリターンは低く見えます。

 もしあなたが未来を完璧に予測できるのであれば、分散投資ではなく、急成長株に集中投資するのが、もっとも高いリターンを得る手段でしょう。

 しかし、世の中に存在するさまざまな企業の中から、将来大きく成長する企業を早期に見つけるのは非常に難しく、そのために必要な情報収集と企業分析を、本業があり、毎日忙しい生活を送る私たちが継続的に行うのは、時間もコストもかかるので大きな負担になります。

 仮に「お化け株」がうまく見つけられたとしても、資産を大きく増やすにはその株を長期間保有し続ける覚悟が必要です。特にスタートアップまもない企業は規模も小さく、株価が急成長していても、業績のブレや市場環境の変化で、株価が大きく乱高下するリスクを抱えています。一時的な下落に耐えられず、途中で売却してしまえば、せっかくの成長の果実を手にすることはできません。

このように「お化け株」への集中投資には、

・探し出すための高いハードルを超える
・見つけた銘柄を保有し続けるための強い忍耐力

この2点が求められるため、相応のリスクと覚悟が伴うのです。

株価指数投資が合理的な理由

 これに対して株価指数投資は非常に合理的です。

・調査コストがほとんどかからない
・すでに数百社への分散投資が完了
・長期的には市場平均と同じリターンが期待できる
・個別企業の不調に強く、安定感がある

 特に投資経験が浅い初心者は、コストを抑えながら、パッシブに市場全体を保有することになる「株価指数投資」を選ぶことが、自分が求める「期待リターン」を再現する一番の戦略ではないでしょうか。

株価指数で資産を育てながら「お化け株」への夢を持つ

 まずは株価指数へのパッシブ運用で、着実に運用資産を育てることが最優先です。リスクを抑えながら堅実に資産形成を進めることができます。

 その一方で「お化け株」も探してみましょう。次のグーグル(Google)、アマゾン(Amazon)エヌビディア(NVIDIA)を探す夢を、完全に諦める必要はありません。

 日頃から市場や企業動向にアンテナを張り、将来の成長企業を見つけるための調査や分析を地道に続けていくことも重要です。

 そして、有望な成長株を見つけた場合は、株価指数投資で獲得した資金の一部を、その個別株に配分してみましょう。資産の本体は株価指数投資で守りながら、個別株への投資はリスクを限定して挑戦する。このバランス感覚こそが、長期的に成功する投資家への道を開くでしょう。

(本文ここまで)

岩田仙吉(いわたせんきち)氏
株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。