本日の日銀金融政策決定会合では、物価上昇が続く中でも金利据え置きの見通し【外為マーケットビュー】
動画配信期:公開日から2週間
外為市場に長年携わってきたコメンテータが、その日の相場見通しや今後のマーケット展望を解説します。
市場予想動画の要約・まとめ
アメリカの経済指標詳細
昨日のアメリカの雇用統計(ADP)は予想を大きく下回り、14.7万人から6.2万人へと減少
市場予想は11.4万人だったため、かなり弱い数字となった
ただしこのADP雇用統計は、公式の雇用統計との整合性が必ずしも一致しないため、マーケットではあまり大きな反応はなかった
明日発表される雇用統計がより重要視されている
アメリカのGDP成長率の詳細分析
第1四半期のGDPは予想の3%を大きく下回り、-0.3%となった
2024年のGDP成長率の推移:
第1四半期:1%台
第2四半期:3%
第3四半期:3%
第4四半期:2.4%
2023年も2.8%、2.4%、4.3%、2%と好調だった
2025年第1四半期にマイナス成長となったことで、トランプ大統領は就任後の経済減速についてバイデン前政権を批判
マイナス成長の主要因は輸入の大幅増加で、GDPを約5%押し下げた
これはトランプ政権の関税引き上げ前の駆け込み輸入による一時的な影響と考えられる
内訳:
個人消費:1.8%(前期の4%から低下)
投資:21.9%(非常に強い数字)
政府支出:減少(政府職員の人員削減の影響)
中古住宅販売保留:6.1%(強い数字)
債券市場の動向
アメリカの2年債利回りは3.658%から3.613%へと低下
10年債利回りも4.174%から4.167%へと小幅低下
4月初めの「トリプル安」(債券、米株式、ドルが同時に下落)の際には4%台中盤まで落ち込んだが、その後は順調に低下
長期債の利回り低下傾向が続き、市場は落ち着きを取り戻している
株式市場の状況
日米ともに決算発表シーズン中
決算発表後の株価動向:
NYダウ:GDPの弱い数字を受けてオープン直後に下落したが、その後反発し、1日で3.5%の上昇
S&P500:同様に下落後に上昇、前日比1.5%上昇
ナスダック100:下落後に大幅反発
主要企業の決算:
メタ:第1四半期決算で広告収入が好調、売上高が市場予想を上回る
マイクロソフト:第3四半期決算で売上高が市場予想を上回る、特にクラウドコンピューティングサービスの「Azure」が好調
クアルコム:決算は市場予想を下回る
注目ニュース
日経新聞:米国と資源開発協定を署名、復興基金を共同設立
ブルームバーグ:米国第1四半期マイナス成長の要因分析
関税前の駆け込み輸入の影響
政府職員の人員削減による政府支出の減少
トランプ大統領はバイデン前政権のせいと発言
欧州系銀行のトレーディング収益が好調というニュースも
日銀の金融政策と展望レポート
本日は日銀の金融政策決定会合と展望レポート発表
金利は据え置きの見通し
前回1月の展望レポートの内容:
GDP成長見通し:25年度1.1%、26年度1.0%(変更なし)
消費者物価指数:25年度1.9%→2.4%(大幅上方修正)
コアコア指数:25年度1.9%→2.1%(上方修正)
26年度消費者物価指数:1.9%→2.0%(小幅上方修正)
東京都区部の消費者物価指数は既に3%を超えており、物価上昇が続いている
本来なら物価上昇を受けて利上げが必要な状況だが、複数の要因で判断が難しい:
トランプ政権の関税をめぐる日米交渉の不透明感
4月初めの市場の不安定化(トリプル安)
利上げによる更なる市場不安定化のリスク
植田日銀総裁の取るべき姿勢:
ハト派(緩和的)になりすぎると円安が進行するリスク
物価上昇を重視しつつも成長鈍化を考慮した判断が必要
利上げを先送りする可能性が高いが、どのようなメッセージを発するかが重要
為替市場(ドル円)の詳細分析
昨日は月末のロンドンフィキシングでドル買いが強まり、高値を付けた
米国GDPの弱い数字にもかかわらずドルが下落せず、堅調な動きを見せている
日銀の金融政策決定会合と明日の米雇用統計を控え、方向感が出づらい状況
現在の重要な価格帯:
上値:144円(一昨日の高値)- この水準を超えると145円台へ
下値:142円(重要なサポートライン)
当面は142円~144円のレンジ内での推移が予想される
今後の動向はこのレンジを「抜ける」方向性によって決まる
詳細な結論
アメリカ経済は第1四半期に-0.3%と予想外のマイナス成長となったが、これはトランプ政権の関税引き上げ前の駆け込み輸入による一時的な影響と考えられる。個人消費は減速しているものの、投資は依然として強く、基調的な経済の弱さを示すものではない可能性が高い。
日銀は物価上昇が続く中でも、市場の不安定要素や日米関係、そして経済成長への影響を考慮し、当面は利上げを見送る可能性が高い。石破首相の経済政策と植田日銀総裁の金融政策の方向性がどのように調和していくかが今後の焦点となる。植田総裁が本日の会見でどのような見通しを示すかが市場の注目点である。
債券市場は落ち着きを取り戻しており、株式市場も決算発表を受けて底堅い動きをしている。特にテクノロジー企業の業績は堅調で、クラウドサービスやAI関連の成長が継続している。
ドル円相場は当面142円~144円のレンジで推移する見通しだが、日銀の金融政策や明日の米雇用統計の結果によっては、このレンジを抜ける可能性もある。144円を上抜ければ145円台へと進むシナリオ、下抜ければ142円を割り込む展開も考えられる。いずれにせよ、当面は日米の経済指標と政策動向に左右される相場展開が続くであろう。
バイデン前政権からトランプ政権への移行期における経済の一時的な調整局面と捉えることができるが、アメリカのファンダメンタルズは依然として強く、長期的な景気後退の兆候は見られない。日本としては、物価上昇と経済成長のバランス、そして円安への対応が引き続き課題となるだろう。
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外為市場に長年携わってきたコメンテータが、その日の相場見通しや今後のマーケット展望を解説します。

株式会社ADVANCE代表取締役 米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行で、20年以上にわたり、為替ディーラーとして活躍。現在は投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨をはじめとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また、海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。YouTubeなどで個人投資家に対して為替に関する情報を発信しており、人気を博している。
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