このレポートの概要:米国株式市場と外国為替市場の最新動向と分析
金融マーケットで永く情報発信を行っている田嶋智太郎氏が、米国株式市場の最新動向を詳しく解説します。(04/28 07:00執筆)
市場の不安心理は緩む
前回更新分の本欄で「いずれ、行き過ぎた悲観の反動が生じてもおかしくない」と述べたが、実際、先週の国際金融市場ではアンワインドの動きが一面に示現した。
先週末のS&P500種の終値は5525ポイントと、2月21日以降ずっと上値を押さえていた25日移動平均線を上抜けた。22日以降、ハイテク株を買い戻す動きが強まったことで、ナスダック総合指数やS&P500種のリバウンドがNYダウ平均よりも大きく出た格好である。ことに個人投資家の買いが目立っていた模様で、色濃く漂っていた市場の不安心理はだいぶ緩んできている。少なくとも、前回「ここから下に攻めに行くことには慎重でありたい」と述べたことは、あながち的外れではなかった。
いずれ米中は交渉の場に
どうやら、ベッセント米財務長官によるトランプ米大統領への“進言”が相当に効いている模様。その結果、トランプ氏による「前言撤回の雨あられ」が、市場に「米国のトリプル安」からの反動をもたらしている。
今にして思えば、例の「米連邦準備理事会(FRB)議長解任」の話題は“失笑”するしかない。一方、中国政府が「中国と米国は関税に関する協議や交渉を行っていない」、「米国は協議に関して国民をミスリードするべきではない」などと表明していることについては、やはり一定の警戒が求められよう。トランプ氏は「中国の習近平国家主席から電話があった」などと述べているが、それもハナから信用するわけには行かない。
とはいえ、米政権にとって「中国政府によるレアアースの輸出管理」の問題が深刻な弱点となっていることも事実。背に腹は代えられないという部分もあり、遅かれ早かれ両国はともに協議・交渉の場を設けようとするに違いない。
S&P500は半値戻し達成
つまるところ、米国株の下値余地は一頃よりだいぶ限られてきている。S&P500種は先週末までに2月高値から4月安値までの下げに対する半値戻しの水準を超える動きとなっており、このあたりで一旦戻り一巡となる可能性もないではない。むろん、一段の戻りを試す可能性も十分にあり、その場合は次に61.8%戻し=5645ポイントあたりが一つの上値の目安となり得る。ただし、5500~5800ポイントの価格帯は3月初旬から4月初旬にかけてもみ合ったところでもあり、相応に上値が重くなりやすいということも心得ておきたい。
円買いポジションは一旦巻き戻し
なお、先週は日米財務相会談が行われ、それに相前後してベッセント米財務長官の方から「具体的な通貨目標を追求するつもりはない」との発言があった。それを受けて市場では円が急速に売り戻されることとなり、週末26日にはトランプ米大統領が「日本との合意に近づいている」との発言もあったことで、ドル/円は一時的にも144円台を試す動きを見せている。ひとたび、過去最大に積み上がった投機筋による円買いポジションの巻き戻しが始まると、その影響とパワーは相応に大きいと見ておく必要もあろう。
とまれ、一連の緊張緩和によって「ドル/円が140円処の重要な節目を明確に割り込んで23年6月ごろから形成されている『ヘッド・アンド・ショルダーズ・トップ(三尊天井)』を完成させる」という事態がひとまず回避されたことは特筆に値する。同時に「22年10月高値と以降の高値を結ぶラインと、それに平行するアウトラインとで形成されている上昇チャネル」を明確に下放れするといった事態もひとまずは回避された。
4月分以降の米経済指標には駆け込みの反動も
とはいえ、当面のドル/円の戻りは自ずと限られよう。やはり、144―145円処というのは、当面の上値の壁として意識されやすいところである。ユーロ/ドルも、今のところは「1.15ドル台での値固めから一段上を試す」という状況には至っていない。ただし、上値追いの流れが完全に絶たれたというほどではなく、いずれ再び1.15ドル処を試す動きとなる可能性は十分にあると見ておきたい。
なにしろ、今後はトランプ米政権が相互関税を発動してからそれ(4月分)以降のハードデータを順次目の当たりにすることとなるのである。これまで確認された1―3月分のデータは、むしろ“駆け込み”によって持ち上げられていたところがあり、その反動は決して小さくないものと推察される。
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田嶋智太郎氏
経済アナリスト 慶應義塾大学を卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、経済アナリストに転身。現場体験と綿密な取材活動をもとに、金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産掲載まで幅広い範囲を分析・研究。 WEBサイトで経済・経営のコラム執筆を担当し、株式・外為・商品などの投資ストラテジストとしても高い評価を得ている。 また、「上昇する米国経済に乗って儲ける法」など書籍も手掛けるほか、日経CNBCレギュラーコメンテーターも務める。
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