執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
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今週の振り返り
今週の豪ドル/円は93.02円前後で、ニュージーランド(NZ)ドル/円は84.25円前後で週初を迎えました。市場の大きな注目が米国の関税政策の行方や米景気動向に向く中、10日には米3大株価指数(NYダウ平均、S&P500種、ナスダック総合)がそろって大幅に下落。翌日の日経平均株価もこの流れを引き継ぎ、序盤に大きく低下した場面では、リスク回避の動きが強まり、豪ドル/円は91.82円前後、NZドル/円は83.31円前後まで下落する場面も見られました。その後は米ドル/円が146円台半ばから149円台前半まで反発したこともあり、豪ドル/円、NZドル/円も上昇に転じる場面もありましたが、米国の貿易戦争が世界経済を悪化させるとの懸念が根強く、上値は限られました(執筆時)。
豪ドルは円や米ドルの動向に注意
来週は20日に豪2月雇用統計が発表されます。豪州の労働市場を見ると、新型コロナのパンデミック前の5年間(2015-2019)の雇用者数は平均2.2万人の増加だったのに対して、2022年以降は平均3.8万人の増加となっています。過去3カ月でも市場予想が1.5~2.0万人増にとどまる中、平均4.44万人増と依然として強い状態が続いています(表1)。また、労働参加率は1月に過去最高となる67.3%を記録しています。今回の雇用者数変化の市場予想は2.8万人増(執筆時)となっていますが、まだエコノミストの予想が出そろっていないため、予想値は変化するでしょう。2月の豪準備銀行(RBA)理事会の議事録では「労働市場のさまざまな指標も引き続き堅調であることを示している」とも指摘しています。そのため、市場も今回の豪2月雇用統計は堅調な結果になるとの見方が優勢のようです。市場予想を下回る弱い結果だった場合、市場のバイアスが上方向にかかっているため、短期的には豪ドル売りの要因になると見ています。ただ、その結果だけでRBAが追加利下げを前倒しするとは考えにくいです。
【表1. 豪雇用者数変化の推移 】
RBAは2月の理事会で4年3カ月ぶりの利下げを実施しましたが、追加利下げに関しては慎重な姿勢を示しました。その一因として、米国を中心とした関税合戦が「多くの国で経済活動に悪影響を及ぼす可能性がある」とRBAは挙げています。トランプ政権の関税の影響から、米国では景気後退懸念が台頭しており、米主要株価指数がこの1週間で大幅に下落しています。米国に報復関税を課したカナダでは、関税合戦が長引けば国内総生産(GDP)成長率が2~4%押し下げられる可能性があるとエコノミストは予想しています。資源国通貨で景気動向に敏感な豪ドルは関税への懸念が残るため上値の重い展開が続きそうです。
豪ドル/円のテクニカル分析
豪ドル/円の目先の上値目途は週足一目均衡表の基準線となりそうです。その上の水準では週足一目均衡表の転換線がレジスタンスとして意識されそうです。
一方、下値は今週安値(91.82円前後)3月4日安値(91.86円前後)がある、91.80円台が目先のサポートして意識されそうです。その下の水準では2024年8月5日安値の90.08円前後や心理的な節目となる90.00円前後が下値目途になりそうです。
【豪ドル/円 週足・一目均衡表】
予想レンジ:AUD/JPY:91.00-95.00、NZD/JPY:82.00-86.00
3/17 週のイベント:
03/17 (月) 11:00 中国 2月小売売上高
03/17 (月) 11:00 中国 2月鉱工業生産
03/19 (水) 06:45 NZ 10-12月期四半期経常収支
03/20 (木) 06:45 NZ 10-12月期四半期国内総生産(GDP)
03/20 (木) 09:30 豪 2月雇用統計
03/21 (金) 06:45 NZ 2月貿易収支
一言コメント:
先週末は北関東へ温泉旅行へ行ってきました。山が近くて景色がとてもよかったのですが、夕方から夜にかけては雪が降る寒さ。ただ、寒い中入る露天風呂は最高でした。
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中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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