市場はスタグフレーションリスクを懸念【マット今井 実践トレードのつぼ】
収録日:2025/3/6
元邦銀ディーラーの今井雅人氏が現状の世界経済を詳細に分析し、今後の為替相場動向まで踏み込み見通しを示します。
動画要約・まとめ
トランプ大統領の発言による相場の乱高下について
相場が連日乱高下しており、トレードが非常に難しい状況になっている
主な原因はトランプ大統領の発言による市場の振れが大きくなっている
トランプ大統領は以前から円安がアメリカの雇用を奪っているという発言をしていた
最近では「中国や日本のような通貨安にしている国には関税をかける」と明確に発言した
この発言を受けて、市場はリスクオフの展開となり、円高に急激に動いた
市場参加者は「いよいよ来たか」という反応を示している
過去の類似事例と比較
1990年代に貿易摩擦の問題があった際、アメリカからのプレッシャーで急激な円高が進んだ
当時はドル円が1ドル80円程度まで下落する展開となった
現在の状況は当時を彷彿とさせる動きであり、140円に向かって下落するのではないかという懸念も出ている
トランプ大統領の対応の特徴と戦略
発言がコロコロ変わる(アメリカ、カナダ、メキシコへの関税措置を1カ月延期したり、自動車関税の適用を遅らせたりと一貫性がない)
これはポリシーがないというよりも、貿易交渉の材料として発言を戦略的に使っている
半分は脅しや駆け引きとして機能している
円安是正を求めているというよりも、アメリカに工場を作らせるための圧力としての発言と考えられる
このような交渉術は、彼の基本的な戦略の一部となっている
市場への具体的な影響
トランプ発言が二転三転するため、相場も上下に大きく振れる「猫の相場」状態が続いている
市場参加者はトランプ大統領の発言に振り回される形となっている
方向感が出ない展開が当面続く可能性が高い
全体的には若干ドル安が進んでいる状況
ユーロ/ドルや豪ドル/ドルなどでポジション調整が発生している
関税の影響に関する市場の見方
関税がかけられる場合、二つの影響経路が考えられる
一つ目は輸入物価の上昇によるインフレ進行、それに伴う金利上昇とドル高という展開
二つ目は貿易戦争による経済全体の縮小と物価高騰が同時に起こる「スタグフレーション」
現在の市場は後者のスタグフレーションリスクをより懸念している
このことがドル全体の弱含みの背景になっている
今後の経済指標と見通し
3/7金曜日アメリカの雇用統計が発表される予定(失業率4.0%、非農業部門就業者数16万人増加、平均時給前月比0.3%増の予想)
通常なら金融政策に大きな影響を与える重要指標だが、現在はトランプ大統領の発言の影響力の方が大きい
そのため、雇用統計の影響度は例年より小さくなると予想される
発言次第で相場が急変する可能性があるため、注意が必要
FX投資家へのアドバイス
方向感のない相場が続くと予想されるため、振り回されないよう注意が必要
上昇しても直ぐに下落、下落しても直ぐに上昇する展開が続く可能性が高い
このような不安定な相場環境では、慎重なポジション管理が重要
トランプ大統領の発言に過度に反応せず、冷静な判断が求められる
結論
現在の相場は、トランプ大統領の一貫性のない発言に左右される「猫の相場」となっており、方向感が出にくい状況が続くと見られる。関税を巡る懸念からスタグフレーションリスクも意識されており、ドル全体としては若干弱含み。従来なら重視される雇用統計よりも、トランプ大統領の発言の方が市場に大きな影響を与える状況となっている。投資家はこの状況に振り回されないよう、慎重な取引姿勢を維持することが重要である。
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今井雅人 氏
1962年生まれ、岐阜県下呂市出身。上智大学卒業後、1985年に三和銀行入行、1987年よりディーリングの世界に入る。1989年から5年間シカゴに赴任、その間多くの著名トレーダーと出会う。日本に戻ってからは為替部門に従事。2004年3月までUFJ銀行の為替部門の統括次長兼チーフディーラーを勤めていたが、同年4月に独立。内外の投資家にも太いパイプを持ち、業界を代表するトレーダーとして活躍するが、2009年8月第45回衆議院選挙に立候補し、初当選。現在は、経済アナリスト活動など多忙な毎日を送る。元東京外為市場委員会委員、東京フォレックスクラブ理事歴任。株式会社マットキャピタルマネージメント代表取締役。
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