中東に位置するトルコの通貨リラを取り巻く環境を分析し、トルコリラの今後の値動きを予想した。
執筆:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也 X(Twitter)
個人のリラ買い急増! マイナー通貨特有のリスクに注意
外為どっとコム顧客のトルコリラ/円の買い持ちが増加している。相場が過去最安値を付けたのは9月17日(4.082円前後)だが、リラ買い・円売りポジションはそれ以前から増え始めており、8月以降の3カ月で30%超増加。前年比では実に3倍に膨らんでいる。
個人FX投資家が足元でリラを選好する背景としてまず考えられるのは、トルコの超高金利だろう。かつてトルコではエルドアン大統領が提唱する「金利を下げればインフレも下がる」との異説に従って低金利政策をすすめたところ大幅なリラ安が進行。通貨安でインフレが制御不能となり、経済が混乱した。その反省を踏まえた中銀は2023年6月に金融引き締めに転じ、政策金利を8.5%から50.0%へと大幅に引き上げた。これが奏功してインフレはひとまず鈍化傾向にあり、それに伴って通貨安圧力も沈静化しつつある。そうした中で、日本との金利差に着目した、いわゆる「キャリートレード」が個人FX投資家の間で人気化しているようだ。
トルコ中銀は、インフレが目に見えて低下するまで引締めスタンスを維持する姿勢を示していることから、当面は個人FX 投資家のリラ選好姿勢も維持される公算が大きい。ただ、トルコリラは世界の為替取引におけるシェアが0.2%程度しかない「マイナー通貨」である点には注意が必要だろう。ドルやユーロなどの「メジャー通貨」に比べると市場流動性が薄いため値動きが荒くなりがちだ。特にリラ/円は世界的に見ても個人FX投資家がメインプレーヤーであり、そのポジションは圧倒的な買い超に傾いている。このため、ひとたび悪材料が出るとストップロスを巻き込みながら想定以上に大きく下落するリスクを孕んでいる。リラ/円は、「もしも」に備えたリスク管理が必要な通貨ペアであることを意識しておくべきだろう。
トルコリラ/円(TRY/JPY) 日足チャート
ドル/トルコリラ(USD/TRY) 日足チャート
ユーロ/トルコリラ(EUR/TRY) 日足チャート
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神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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