中東に位置するトルコの通貨リラを取り巻く環境を分析し、トルコリラの今後の値動きを予想した。
執筆:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也 X(Twitter)
市場は金融・財政引締めによるインフレ鈍化を好感 リラ急落リスク低下
7月3日に発表されたトルコの6月消費者物価指数(CPI)は前年比+71.60%と、2022年11月以来の高水準だった前月の+75.45%から伸びが鈍化した。かねてより6月以降に物価の伸びが急速に鈍化するとの見通しを示していたトルコ当局の見立てにある程度沿う結果となった。経済政策を指揮するシムシェキ財務相は「ディスインフレ(インフレ鈍化)プロセスが始まった」とXに歓迎のコメントを投稿した。
市場にも当局の金融・財政引き締めの効果と見られるインフレ鈍化を好感する動きが見られた。同国の10年物長期金利は25%台へ1%近く低下。また、トルコの債務不履行に対する保険料と位置付けられる5年物CDS(クレジットデフォルトスワップ)は260bp(ベーシスポイント)台に低下している。なお、同CDSは昨年5月に債務不履行の「危険水域」とされる700bpを一時上回っていた。CDSの水準は依然として「要注意」とされる200bpを上回っているものの、足元の低下はトルコに対する国際金融市場の信用が回復基調にあることを示している。
為替市場では、いまのところリラを買う動きはそれほど強まってはいない。足元の対円での上昇もそのほとんどは円安によるものだ。とはいえ、過去数年にわたり度々見られたようなリラ急落のリスクは大きく低下したと言えるだろう。
トルコ5年物CDS日足チャート
※Bloombergより抽出したデータをもとに作成
トルコリラ/円(TRY/JPY) 日足チャート
ドル/トルコリラ(USD/TRY) 日足チャート
ユーロ/トルコリラ(EUR/TRY) 日足チャート
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神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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