米雇用統計とCPIの結果でドル揺れ動く - メキシコ大統領選の余波でペソ安リスク【マット今井 実践トレードのつぼ】
収録日:2024/6/13
元邦銀ディーラーの今井雅人氏が現状の世界経済を詳細に分析し、今後の為替相場動向まで踏み込み見通しを示します。
時間がない方向け「ポイント要約」
目次
0:00 今回のダイジェスト
0:26 米雇用統計・CPI結果とドルの動向
1:19 FOMC:劇的な変化なくして利下げなし
2:31 弱い指標でのドル売りは買いチャンス
3:33 メキシコ大統領選:与党大勝でペソ安に拍車
5:11 【PR】口座開設特別キャンペーン
動画要約・まとめ
米雇用統計・CPI結果とドルの動向
今週は、アメリカの経済指標について注目すべき点がいくつかありました。まず、先週の金曜日に発表された雇用統計では、失業率は予想より悪い4.0%となりましたが、非農業部門の就業者数は予想を大きく上回る27万人以上の増加を示しました。また、平均時給も前月比0.4%のプラスと、こちらも予想を上回る結果となりました。これらの強い数字を受けて、ドル買いが進みました。
次に、昨日発表されたCPIは、年率換算で3.3%のプラスとなり、予想の3.4%を若干下回ったため、今度はドル売りが優勢になりました。しかし、その後に行われたFOMCでは、再びドルが戻す展開となりました。
FOMC:劇的な変化なくして利下げなし
FOMCでは、パウエルFRB議長が、インフレの停滞を理由に、利下げにはかなりの時間を要するだろうと述べました。これらの3つの出来事は、今後の市場を占う上で非常に重要だと考えています。
現在のFRBは、インフレが大幅に下がるなど劇的な変化が起きない限り、利下げに踏み切ることはないでしょう。つまり、たとえ一時的に弱い経済指標が出たとしても、それだけでは利下げ時期が早まることはないと言えます。
弱い指標でのドル売りは買いチャンス
このような環境下では、昨日のように弱い数字が出てドルが売られた場面は、むしろドルを買うチャンスと捉えることができるかもしれません。今年は常に、アメリカの利下げ時期が注目されていますが、FOMCの様子からは、年内の利下げも確実ではありません。したがって、一つや二つの少し弱い経済指標でドル下げトレンドが始まると考えるのは難しいでしょう。つまり、ドルが下がったところを買っていくという戦略は、今後も有効だと思われます。
メキシコ大統領選:与党大勝でペソ安に拍車
一方、メキシコペソについては、大統領選挙で与党が大勝したことを受け、今後、中国に似た独占的な経済政策が取られるのではないかと懸念されています。これはメキシコ経済にマイナスの影響を与える可能性があり、ペソ安の原因となっています。
これまでペソを安心して買ってスワップ金利を稼いでいた投資家たちも、先行きに不安を感じ始めているため、ペソの動きは不安定になっています。
ただし、今回の選挙結果だけでペソが大幅に下落するとは考えにくいものの、これを機に、これまで安易にペソ買いを続けてきた投資家心理が変化しつつあります。したがって、以前のようにペソ安になると素早く買い戻される、という力強さは今回は期待できないかもしれません。当面は、1メキシコペソ=8円付近がペソ安の下限になると予想されますが、その水準で攻防が続く可能性があるため、注意が必要です。

今井雅人 氏
1962年生まれ、岐阜県下呂市出身。上智大学卒業後、1985年に三和銀行入行、1987年よりディーリングの世界に入る。1989年から5年間シカゴに赴任、その間多くの著名トレーダーと出会う。日本に戻ってからは為替部門に従事。2004年3月までUFJ銀行の為替部門の統括次長兼チーフディーラーを勤めていたが、同年4月に独立。内外の投資家にも太いパイプを持ち、業界を代表するトレーダーとして活躍するが、2009年8月第45回衆議院選挙に立候補し、初当選。現在は、経済アナリスト活動など多忙な毎日を送る。元東京外為市場委員会委員、東京フォレックスクラブ理事歴任。株式会社マットキャピタルマネージメント代表取締役。
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