一昨年の教訓から学ぶ、日本の為替介入が市場に与える長期的影響【マット今井 実践トレードのつぼ】
収録日:2024/5/16
元邦銀ディーラーの今井雅人氏が現状の世界経済を詳細に分析し、今後の為替相場動向まで踏み込み見通しを示します。
時間がない方向け「ポイント要約」
目次
0:00 今回のダイジェスト
0:31 米CPI発表と市場の反応
1:07 早期米利下げ織り込みの変化
1:45 日本の為替介入と市場への影響
2:32 一昨年の介入と今後の相場見通し
3:17 メキシコペソ円・ユーロドルの見通し
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要約
米CPI発表と市場の反応
昨日、アメリカの消費者物価指数(CPI)が発表されました。結果はほとんど予想どおりでしたが、先月分の総合指数が前月比で0.3%上昇し、予想の0.4%を若干下回りました。ただし、年率では大きな変化はなく、予想どおりの結果となりました。わずか0.1%の違いですが、市場はこの結果を受けて、ドルが下落し、金利も低下、株価は上昇するという展開になりました。
早期米利下げ織り込みの変化
この反応の理由を探ると、最近は早期の米利下げを織り込まなくなってきたことがわかります。これまでは利下げを早期に織り込む傾向があり、利下げがない状況ではドル高になりがちでした。しかし、最近はその傾向が和らぎ、利下げをあまり織り込まない状態でCPI発表を迎えたため、市場は利下げ期待を若干取り入れる動きを見せたのだと考えられます。
日本の為替介入と市場への影響
ここで注目すべきは、日本の為替介入の影響です。先日も言及しましたが、日本は9兆円から10兆円規模の円買い・ドル売り介入を実施しました。これにより、市場の需給バランスが歪んでいる可能性があります。介入前は円売りが優勢でしたが、どこかで限界がきてしまいます。つまり、円売りのポジションが飽和状態になりつつあるのです。介入の影響が出始めたこの1週間は、円安方向への動きが続きましたが、やがて調整の円買いが発生し、円高方向への反転が起きてくると思います。
一昨年の介入と今後の相場見通し
これは一昨年にも見られた現象です。一昨年も合計9兆円規模の介入を行い、その影響がしばらく長引きました。同様の状況が今年も続くと予想されます。したがって、今後の為替相場は上下動を繰り返すことになるでしょう。現時点で円高要因は限定的ですが、円安方向への動きも制限されるため、方向感の乏しい展開が予想されます。これは相場の難易度が高まることを意味します。このような環境下では、適切なレンジを設定してトレードしないと、大きな損失を被るリスクがあります。
メキシコペソ円・ユーロドルの見通し
そんな中、メキシコペソ/円は比較的安定した動きを見せているので、ポジションを絞ってロングを維持するのが得策かもしれません。他の通貨ペアは不安定な動きが予想されるため、レンジ設定を慎重に行う必要があります。
また、ユーロ/ドルは上昇傾向にありますが、私の予想では1.09-1.10ドル付近が上値目標であり、もう少し伸びるかもしれませんが、そのあたりで限界が来るのではないかと思われます。
いずれにせよ、今後の相場は不安定な動きが予想されるため、その前提でトレードに臨むことが重要です。

今井雅人 氏
1962年生まれ、岐阜県下呂市出身。上智大学卒業後、1985年に三和銀行入行、1987年よりディーリングの世界に入る。1989年から5年間シカゴに赴任、その間多くの著名トレーダーと出会う。日本に戻ってからは為替部門に従事。2004年3月までUFJ銀行の為替部門の統括次長兼チーフディーラーを勤めていたが、同年4月に独立。内外の投資家にも太いパイプを持ち、業界を代表するトレーダーとして活躍するが、2009年8月第45回衆議院選挙に立候補し、初当選。現在は、経済アナリスト活動など多忙な毎日を送る。元東京外為市場委員会委員、東京フォレックスクラブ理事歴任。株式会社マットキャピタルマネージメント代表取締役。
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