日銀会合後の植田総裁発言で3月マイナス金利解除の可能性が出てきた、マーケットも混乱状態【マット今井 実践トレードのつぼ】
収録日:2024/1/25
元邦銀ディーラーの今井雅人氏が現状の世界経済を詳細に分析し、今後の為替相場動向まで踏み込み見通しを示します。
目次
0:00 今回のダイジェスト
0:24 日銀会合振り返り 3月マイナス金利解除の可能性
4:40 ドル円見通し 円安シナリオに黄信号
6:41 メキシコペソの見通し 値上がり益は期待しづらい状況
7:02 【PR】口座開設特別キャンペーン
要約
日銀会合振り返り 3月マイナス金利解除の可能性
22日~23日に日銀の政策会合がありましたが、正直申し上げて少し驚きました。端的に言うと、今後の金融政策について、かなり具体的なところまで踏み込んだなという印象です。
今回、金融政策は据え置きということで、これは予想通りだったんですけれども、展望レポートと言われる物価の中長期見通しのようなものが発表されました。その中に、今目標としている安定的なインフレの状況、つまり年率2%程度が安定的に続くかどうかということの見通しについて、かなり確度が高まってきたという表現がレポートに載っていました。その後の会見では、日銀の植田総裁がいろいろと質問に答えていくんですが、「なぜ確度が高くなったんですか?」「その根拠は何ですか?」という記者の質問に対して、「前回点検をしました」と。いろいろな経済指標を見てチェックをしているということですね。それで、「そういう基調に乗っているんじゃないかと思ったけれども、まだ確実ではないので、今回2回目の点検をしました。それで2回目も同じような結果が出たので確度が高まった、つまり自信を強めた」ということを話をしたということです。
それに加えて、今後賃金がどうなっていくかが重要なんですが、賃金はもう既に春闘で労使側ともに今年は昨年以上の賃上げをするというような発言が出てきています。春闘は恐らくいい結果になる、既にもうそういう効果が表れていると。そして、中小企業や零細企業はどうなんだということに対しても、「経済全体がよくなってきているので、そういうところの賃上げも今後期待できる」というような説明をしてこられました。これは何を意味しているかというと、「春闘を待たずしても、春闘はいい結果になるのがわかっているので、動く可能性もありますよ」ということを言っているように聞こえます。
それから、今実質賃金が20カ月連続でマイナスなんですけれども、これがプラスにならないと政策変更はできないのか、という質問を受けましたが、これに対しては「もちろんプラスになるのが一番良いけれども、マイナスの状態であっても今後プラスに向かう可能性が極めて高いという見通しが立った場合には、その時点でマイナスであったとしても金融の正常化を妨げるものではない」というような言い方をしていました。つまり、実質賃金の問題もそうですし、全体の名目賃金の動向もそうなんですが、実際に事が起きる前に見通しを見込んで行動することもありますよ、ということを言っているわけです。
それと2カ月後にある3月の日銀会合を前に、いろいろなデータや判断材料があるのかということだったんですけれども、「色々なヒアリング等をしていく中で、十分な情報を得られる。ただ、それをもって動くかどうかというわけではないけれども」ということでした。総合して考えると、3月の日銀会合でマイナス金利を解除するとか、こういうことをする可能性が出てきたということです。それをちょっと匂わせるような発言がいろいろなところで垣間見えたということが、今回の会見のポイントだったと思います。
ドル円見通し 円安シナリオに黄信号
当面は円安が続くという風に基本的にシナリオを作っていましたが、植田総裁がここまで踏み込んだ発言をしたということで、3月のマイナス金利解除の可能性を意識せざるを得なくなってきたということです。ただ、すると決まっているわけではないので、これをもってどんどん円高に進んでいくというわけではないと思いますけれども、円売りを安易にしていくのはなかなか難しくなってきたなという印象です。
マーケットの反応も非常に複雑で、最初に「現状維持」と出たときには円安になり、その後の総裁発言を聞いてガーッと円高になりました。一旦はそれを消化してまた円安方向に戻って、ドル円も148円台後半まで戻ったんですが、昨日、中身を改めてマーケットが吟味して、「これはちょっと金融政策の変更が早目に起きるかもしれないな」という評価になったんですね。長期金利もちょっと上がったりして、その結果株も下がり、円高になるというような反応をしました。引けにかけてニューヨークで少し戻って終わっていますが、かなりマーケットも混乱している状態です。
今後はかなり方向感がなくなってくると思います。非常に難しくなってくると思いますので基本的には今のレンジ、ドル円は147円台~148円台のところでもみ合いに入ってしまう可能性が非常に高いと思っています。来週FOMCがありますので、そこも一つの山場になるんですが、円相場ということに関してはなかなか難しい展開になってきたということだと思います。
メキシコペソの見通し 値上がり益は期待しづらい状況
メキシコペソも一時期上がりかけたんですが、今モタモタしています。こんな相場が続くと思いますので、金利を稼ぐという人はそれでいいと思いますが、なかなか値上がり益というのは期待しづらい状況に変化したということだと思います。
今井雅人 氏
1962年生まれ、岐阜県下呂市出身。上智大学卒業後、1985年に三和銀行入行、1987年よりディーリングの世界に入る。1989年から5年間シカゴに赴任、その間多くの著名トレーダーと出会う。日本に戻ってからは為替部門に従事。2004年3月までUFJ銀行の為替部門の統括次長兼チーフディーラーを勤めていたが、同年4月に独立。内外の投資家にも太いパイプを持ち、業界を代表するトレーダーとして活躍するが、2009年8月第45回衆議院選挙に立候補し、初当選。現在は、経済アナリスト活動など多忙な毎日を送る。元東京外為市場委員会委員、東京フォレックスクラブ理事歴任。株式会社マットキャピタルマネージメント代表取締役。
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