【告知】20時30分から開催 米雇用統計ライブ
更新日時:2023年6月5日 14時20分(結果を追記)
執筆日時:2023年6月1日 14時00分
執筆者 :株式会社外為どっとコム総合研究所 小野 直人
米ドル/円142円台に向け滑走出来るか!3月雇用統計の再来には注意-6月2日の米国雇用統計の予想と戦略 2023年6月号-By 外為どっとコム総研
目次
1.はじめに
2023年6月2日(金)、日本時間21時30分に米国の5月雇用統計が発表されます。直近の米消費者物価指数(CPI)と個人消費支出(PCE)デフレーターとで、まったく逆のインフレ動向が示され、市場は米金融当局による利上げサイクルの道筋を正確に掴み切れていません。今回の雇用統計の結果がFRBの今後の姿勢について、市場に対しどのようなイメージを形成させるのか注目されます。
2.前回のおさらい
・前月分の下方修正は気がかり
5月5日、米労働省が発表した4月の非農業部門雇用者数(NFP)は25.3万人増と、市場予想(18.0万人)を上回る伸びとなり、人手不足がいまだ継続している様子を示しました。また、時間給も前月比で0.5%と伸びが加速し、インフレ圧力の兆候も確認できました。
ただ、こうした好調な面以外に少し気になったのが、前月分が23.6万人から16.5万人へ大きく下方修正された点です。これによりNFPの3カ月平均は22.2万人まで低下し、IT関連を中心としたレイオフの影響を感じさせる部分もありました。
図表1.分野別新規雇用者数(千人)※出所:米国労働省
134.20円台で推移していた米ドル/円は、結果を受けて135.123円まで急騰しました。その後は、米国の債務上限問題への不安もあって、134.80円台へ押し戻されて越週しました。また、米長期金利は3.44%まで上昇し、そのほかでは株式市場も堅調でした。インフレ加速よりも雇用拡大が景気を下支えするとの思いが勝ったほか、米中堅銀行の株式が下げ過ぎ感から反発したことを好感して、ダウ平均は546.64ドル高い33674.38ドル、ナスダック総合は269.01ポイント高い12235.41ポイントで引けました。
図表2.前回発表前後のドル円の動き
米ドル/円 30分足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
3.今回の見どころ
・時間給の伸びに底打ち感
・昨NFPは前月と同規模の好調さ
パウエル米FRB議長は5月19日、「長期にわたり続けてきた金融引き締めで、政策姿勢は景気抑制的となりつつある」として、6月の利上げ休止の可能性に言及しました。同月3日のFOMC後の会見では「インフレ低下には時間がかかる」との認識を示していた点から、少しハト派に傾いたように見受けられました。この変化は、ひょっとしたら、同10日に発表されたCPIで住宅以外のコアサービス価格が0.1%上昇と20年7月以降で最小の伸びとなったことが要因と考えられます。
しかしながら、CPIと同様にインフレ動向を示す4月PCEデフレーターからは、住宅・エネルギーサービスを除くサービスの価格指数が前月比0.4%上昇と、1月以来の高い伸びとなったもようで、足もとではFRBの利上げの道筋が定まりづらくなっています。1週間前まで、6月FOMCで利上げをスキップして7月に0.25%利上げし、そこで利上げサイクルを停止させるとの見方が優勢でしたが、数日前には6月に0.25%利上げして、その段階で打ち止めにすると、利上げ前倒し観測が強まっていました。しかし、6月1日の段階では6月は利上げを見送り、そして7月に利上げして打ち止めと以前の見方へ戻すなど、市場の思惑はまだ定まっていないようです。
図表3.市場のFOMC見通しの推移
出所:外為どっとコム総研
加えて、労働市場のひっ迫が強いようなら、6月・7月の連続利上げやさらにはそれ以上の利上げも選択肢として浮上してくるかもしれず、予断を許さない状況です。6月FOMCを巡っては、最終的には直前に発表される5月CPIを確認するまでは決められませんが、今回の雇用統計は、FOMCが十分にデータを見極めるだけの時間を与える指標となるか注目されます。何れにしても、複数の思惑が交錯しているため、結果後の為替相場の振幅は大きくなることは間違いないでしょう。
6月FOMCでの政策決定を見通す上では、特に時間給の動向が重要と考えます。時間給の伸びは3月に前年比4.3%まで低下しましたが、4月は4.4%へ持ち直し、底打ち感の兆しが出始めています。また、雇用コスト指数もピークアウト感はあるものの、依然として高水準であることに変わりありません。時間給が今月も底堅い伸びが示されるようなら、FRBによる6月利上げへの期待感が強まり、米ドルを押し上げそうです。一方で、時間給が市場予想(前月比0.3%)に届かないようだと、6月利上げを織り込んでいる投資家からの米ドルの投げが入り、3月の雇用統計のように下落するかもしれません。
また、NFPについても足もとでは3カ月平均が22.2万人へ減速しているものの、「安定的」な雇用と解釈される10-15万人程度を依然として上回っています。平均値を上回るNFPは将来的なインフレの芽が育っているとの解釈もできるため油断は禁物です。NFPや求人件数は鈍化傾向を示していますが、雇用統計の調査週と重なる週の新規失業保険申請件数はほぼ同程度だったため、市場予想(19.0万人)ほど雇用が鈍化していない可能性はあります。
図表4.雇用関連指標一覧
出所:外為どっとコム総研
※各データにおいて修正が入ったものは修正後を表示
☆想定するシナリオ
※本指標発表後、5分の値幅(過去3カ月):平均75銭
出所:外為どっとコム総研
4.今回の戦略
NFPの市場予想は19.0万人、時間給は前月比で0.3%とNFP、時間給とも前月から伸びが鈍化する見込みです。個人的には、直近の雇用データを踏まえると、急速に雇用者数が減少するとは考えにくいほか、消費の底堅さから時間給もある程度しっかりしていると見られ、FOMCの利上げ見送り観測に抵抗する結果になるのではないかとの思いから、指標発表直後の米ドル/円は上向きに反応するのではないかと見ています。
図表5.米ドル/円チャート-日足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
図表6.[雇用統計の実績と予想]
年月 | 非農業雇用者数変化(万人) | 失業率(%) | ||
予想値 | 初回結果 | 予想値 | 初回結果 | |
2023年05月 | 19.5 | 33.9 | 3.5 | 3.7 |
2023年04月 | 17.8 | 25.3 | 3.6 | 3.5 |
2023年03月 | 24.0 | 23.6 | 3.6 | 3.5 |
2023年02月 | 21.5 | 31.1 | 3.4 | 3.6 |
2023年01月 | 19.0 | 51.7 | 3.6 | 3.4 |
2022年12月 | 20.0 | 22.3 | 3.7 | 3.5 |
年月 | 平均時給/前月比(%) | 労働参加率(%) | |
予想値 | 初回結果 | 初回結果 | |
2023年05月 | 0.3 | 0.3 | 62.6 |
2023年04月 | 0.3 | 0.3 | 62.6 |
2023年03月 | 0.3 | 0.3 | 62.6 |
2023年02月 | 0.3 | 0.2 | 62.5 |
2023年01月 | 0.3 | 0.3 | 62.4 |
2022年12月 | 0.4 | 0.4 | 62.3 |
◇関連の経済データ実績
年月 | ISM製造業雇用指数 | ISM非製造業雇用指数 |
2023年05月 | 51.4 | ― |
2023年04月 | 50.2 | 50.8 |
2023年03月 | 49.9 | 51.3 |
2023年02月 | 49.1 | 54.0 |
2023年01月 | 50.6 | 50.0 |
2022年12月 | 50.8 | 49.4 |
出所:Bloomberg、外為どっとコム「経済指標カレンダー」
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