【告知】20時から開催 米雇用統計ライブ解説
更新日時:2022年12月05日 14時50分
執筆日時:2022年12月01日 17時30分
執筆者 :株式会社外為どっとコム総合研究所 小野 直人
米FRBの政策調整観測で米ドル/円の方向性は?12月2日の米国雇用統計の予想と戦略
目次
1.はじめに
2022年12月2日(金)、日本時間22時30分に米国の11月雇用統計が発表されます。パウエルFRB議長は11月30日、米国の利上げサイクルについて、「ペース減速」と同時に「最終到達点の上振れ」、「高水準での金利据え置き」になるとの道筋を示しました。為替市場は、「利上げ幅縮小」により反応しドル売りとなりましたが、反応しなかった後半部分も見過ごせません。雇用統計が今回消化しきれなかった部分に光を当てるのか、注目されます。では、早速、前回の振り返りからです。
2.前回のおさらい
・12月FOMC、0.75%利上げ織り込み進まず
11月4日に発表された、米国の10月非農業部門雇用者数(NFP)は26.1万人増と、市場予想の20.0万人増を上回りました。また、失業率は3.5%から3.7%へ悪化し、時間給は前月比で0.4%と9月の0.3%から増加するなど内容はまちまちでした。内訳を見ると、建設業が減速した一方で、ヘルスケア、小売業、運輸倉庫がヘッドラインの数字押し上げに貢献しました。市場では底堅い数字と受け止めつつも、とりわけ12月0.75%利上げを織り込まなければいけないほど強い数字でもないとの見方が優勢のようです。
図表1.分野別新規雇用者数(千人)※出所:米国労働省
結果を受けた米ドル/円は、瞬間148.178円まで上昇したものの、米長期金利が頭打ち傾向を示すと、NY終盤には146.549円まで低下しました。米国株式市場では、ダウ工業株30種平均は5営業日ぶりに反発し、前日比401.97ドル高い32403.22ドルで引けました。
図表2.前回発表前後のドル円の動き
米ドル/円 30分足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
3.今回の見どころ
・NFPより時間給
・利上げペースダウンでドル高調整加速
求人件数が高水準で労働需要が引き続き旺盛なため、雇用環境が急速に悪化するとは考えにくく、全体的に底堅いとの評価に留まると考えるのが妥当でしょう。しかし、失業率の悪化や、先行して冷え込んだ住宅市場に加え、ハイテク企業の人員削減計画など、今後の雇用拡大ペースの鈍化を示唆するニュースも出ており、見通しに対して楽観的になれません。このような環境下では、新規の雇用者数(NFP)が市場予想を上回っても、誤差のうちと吐き捨てられてNFPへの市場の反応は限定される可能性はあります。NFPが雇用統計の一番の注目データであることに変わりはありませんが、そればかりに一喜一憂せず、それ以外の数字にも気を配り全体的は判断が求められそうです。
では、次にどの辺りに注意すればよいのかと言えば、それは時間給の動向と考えています。ここで簡単に9月FOMC時に公表されたメンバーの経済見通しを簡単に振り返りたいと思います。FOMC参加者の今年末の見通しの予想中央値は、失業率が3.8%、コアインフレ率が4.5%、FF金利が4.4%でした。これに対し、11月20日時点での最新データは失業率が3.7%、コアPCEデフレーターが5.1%、FF金利が3.75-4.00%です。インフレ率を除けば概ね見通しに沿った形で、FRBにとってはある程度好感できる内容と言えそうですが、インフレ率が未だ見通し近くへ低下していないことがむしろ目立つ格好となっており、FRBにとって未だインフレが最大の問題であることが分かります。
図表3.米FRBの見通しと実績 ※Data:Bloomberg
問題のインフレはと言えば、供給網の改善、需要鈍化から、モノへの物価上昇圧力は緩んで製造業分野でのインフレ圧力は緩和しています。しかし、粘着性の高い家賃や人件費など遅行性のある分野では、金利上昇分を十分に価格転嫁できておらず、インフレ圧力は残っていると見られます。今後は、よりサービス分野に近いところでの物価上昇圧力が低下してくるかどうかがポイントになり、それ故、時間給の動向が注目されると考えます。この部分が緩んでくれば来れば、FRBのタカ派姿勢がより後退し利上げ停止時期の前倒し観測も高まりそうです。
さて、結果と反応ですが、NFPの市場予想は20.0万人、時間給の前月比は0.3%とどちらも10月から弱含む見通しです。そこで場合わけは少し複雑になりますが、①はNFP、時間給ともに予想以上、②NFPは強いが時間給は予想以下、③NFPは弱く時間給は予想以上、④時間給もNFPともに予想以下の場合に分けたいと思います。
① の場合は、FRBの見通しからのかい離が意識されて、FRBの積極的なタカ派姿勢が継続するとの思いから米ドル高が再加熱し、②の場合は利上げペースダウンとターミナルレート(金利の最高到達点)に引き上げが混在しながらも、米ドルが小幅反発、③は米経済のリセッション観測からドル高調整が加速、④は米経済の減速観測で金利低下から、米ドル安が加速すると考えています。
☆想定するシナリオ
パターン | NFP(万人) | 想定される米ドル/円の値動き | 理由 |
① | NFP、時間給とも予想以上 | 発表後、1.5円上昇 | 積極的タカ派継続 |
② | NFPは予想以上、時間給は予想以下 | 発表後、70銭上昇 | 利上げスピードダウンと ターミナルレート引上げが混在 |
③ | NFPは予想以下、時間給は予想以上 | 発表後、70銭下落 | 引き締めペース鈍化 |
④ | NFP、時間給とも予想以下 | 発表後、1.5円下落 | 成長鈍化不安 |
※本指標発表後、1時間の値幅(過去3カ月):平均91銭
図表4.[雇用統計の実績と予想]
年月 | 非農業雇用者数変化(万人) | 失業率(%) | ||||
予想値 | 実績値 | 修正値 | 予想値 | 実績値 | 修正値 | |
2022年11月 | 20.0 | 26.3 | – | 3.7 | 3.7 | – |
2022年10月 | 20.0 | 26.1 | 28.4 | 3.5 | 3.7 | – |
2022年08月 | 26.0 | 26.3 | 31.5 | 3.7 | 3.5 | – |
2022年08月 | 29.8 | 31.5 | 29.2 | 3.5 | 3.7 | – |
2022年07月 | 25.0 | 52.8 | 53.7 | 3.6 | 3.5 | – |
2022年06月 | 26.8 | 37.2 | 29.3 | 3.6 | 3.6 | – |
年月 | 平均時給/前月比(%) | 労働参加率(%) | |
予想値 | 実績値 | 実績値 | |
2022年11月 | 0.3 | 0.6 | 62.1 |
2022年10月 | 0.3 | 0.4 | 62.2 |
2022年09月 | 0.3 | 0.3 | 62.3 |
2022年08月 | 0.4 | 0.3 | 62.4 |
2022年07月 | 0.3 | 0.5 | 62.1 |
2022年06月 | 0.3 | 0.4 | 62.2 |
◇関連の経済データ実績
年月 | ISM製造業雇用指数 | ISM非製造業雇用指数 |
2022年11月 | 48.4 | - |
2022年10月 | 50.0 | 49.1 |
2022年09月 | 48.7 | 53.0 |
2022年08月 | 54.2 | 50.2 |
2022年07月 | 49.9 | 49.1 |
2022年06月 | 47.3 | 47.4 |
出所:Bloomberg、外為どっとコム「経済指標カレンダー」
4.今回の戦略
発表前の水準によっては調整が必要ですが、需要後退による企業の採用意欲の頭打ち感があるものの、賃金引上げの流れは継続していることから、③をメインシナリオと考えています。支持線と見られる200日移動平均線(134.428円;執筆時点)に向かって上値をまずは切り下げていきそうです。ただ、時間給の上昇が想定以上に大きければ、下押しもそこそこに切り返す可能性もあります。
図表5.米ドル/円チャート-2時間足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
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