【外為総研 House View】
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
目次
▼ユーロ/円
・ユーロ/円の基調と予想レンジ
・ユーロ/円 9月の推移
・9月の各市場
・9月のユーロ/円ポジション動向
・10月のユーロ圏注目イベント
・ユーロ/円 10月の見通し
ユーロ/円
ユーロ/円の基調と予想レンジ
ユーロ/円 9月の推移
9月のユーロ/円相場は137.345~145.638円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.6%上昇した(ユーロ高・円安)。ユーロは対ドルで約2.5%下落したが、ユーロ以上に円が対ドルで下落したためユーロは円に対して強含んだ。
欧州中銀(ECB)が75bp(0.75%ポイント)の利上げを行い、独連銀総裁らが追加利上げに前向きな姿勢を示すと12日には約8年ぶりに145.64円前後まで上昇したが、その後はウクライナ情勢の悪化などを背景にユーロ圏の景気先行き不安が広がったため失速。25日のイタリア総選挙で欧州連合(EU)に懐疑的とされる右派連合が勝利したこともあって、26日には約1カ月ぶりに137.30円台へと下落した。
月末にかけてはショートカバーが入ったことなどから持ち直したが、景気後退(リセッション)を巡る懸念に上値を抑えられて142円前後で伸び悩んだ。
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
6日
ドル/円が1998年以来の142円台へと上伸する中、ユーロ/円も141円台へと上昇。ただ、米8月ISM非製造業の好結果などからドルが全面高となり、ユーロ/ドルが軟化したためユーロ/円はやや伸び悩んだ。なお、独7月製造業新規受注は前月比-1.1%と市場予想(-0.7%)を下回り、6カ月連続でマイナスとなった。
8日
ECBは大方の予想通りに政策金利を0.50%から1.25%に引き上げると発表。声明で「この大きな一歩は現在のきわめて緩和的な政策金利水準から、インフレ率を適切な時期に目標の2%に戻す金利水準への移行を前倒ししたものだ」「今後数回の会合でのさらなる利上げを想定している」などと表明した。
また、ECBは経済・物価見通しで今年、来年、再来年のインフレ予測を上方修正した一方、成長見通しを下方修正した。ラガルドECB総裁は理事会後の記者会見で「インフレは極めて高い」としながらも「次回の利上げは75bpである必要はない、75bpは標準ではない」と発言した。
12日
前週末に独連銀のナーゲル総裁が、ECBが8日に75bpの大幅利上げを決めたことについて「明確なサインだった」とした上で「インフレの状況に変化がなければ、さらにはっきりした対応が必要だ」と述べたことや、ウクライナ軍が北東部ハルキウ州で領土を奪還したと伝わったことからユーロが上昇。
その後、デギンドスECB副総裁が「75bpの利上げを今後も続けていくことを目指す」と発言したことを受けて2014年12月以来となる145.64円前後まで上昇した。
13日
独9月ZEW景況感調査の期待指数は-61.9と予想(-59.5)を下回り約14年ぶりの水準へと落ち込んだ。同時に発表されたユーロ圏9月ZEW景況感調査は-60.7だった(前月-54.9)。
21日
ロシアのプーチン大統領は「西側はロシアを破壊したがっている」と発言。「ドンバスで戦う志願兵に法的地位を与えるよう政府に命じた」として軍の部分動員令に署名したことを明らかにした。ウクライナ情勢の一段の悪化が懸念され、一時リスク回避のユーロ売り・円買いが強まった。
23日
独9月製造業PMI・速報値は48.3(予想48.3)、同サービス業PMI・速報値は45.4(予想47.2)となり、いずれも好不況の分かれ目となる50を下回った。その後に発表されたユーロ圏9月製造業PMI・速報値は48.5(予想48.8)、同サービス業PMI・速報値は48.9(予想49.1)と3カ月連続で50を下回った。
26日
独9月Ifo企業景況感指数は84.3と予想(87.0)を下回り、2020年5月以来の低水準となった。Ifo経済研究所は「今後数カ月への悲観は決定的に強まった。ドイツ経済はリセッションに突入しつつある」との見解を示した。
27日
ロシアの欧州向けガスパイプライン「ノルドストリーム」のガス漏れが見つかったことを受けて欧州天然ガス価格が上昇。ユーロ圏の景気先行きへの不安からユーロが軟化。前例のない規模のパイプライン損傷が報告されたことについて、ドイツや米国は「破壊工作」があったとの見方を示した。
30日
ユーロ圏9月消費者物価指数(HICP)・速報値は前年比+10.0%と予想(+9.7%)を上回り、前月の+9.1%から加速。ロシアのウクライナ侵攻などを受けてエネルギーや食品の価格が高騰したことが大きく影響し、伸び率は過去最大となった。
9月の各市場
9月のユーロ/円ポジション動向
【情報提供:外為どっとコム】
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10月のユーロ圏注目イベント
ユーロ/円 10月の見通し
ユーロ/円相場は10月も方向感が出にくい相場展開が続きそうだ。欧州中銀(ECB)は27日の理事会で75bp(075%ポイント)の追加利上げに動く公算が大きく、 資産縮小(量的引締め=QT)を巡る議論を本格的に開始すると見られる。ただ、ウクライナ情勢に好転の兆しが見えないことなどから欧州市場の天然ガス価格は高止まりしており、エネルギー供給不安が強い中でのECBの金融引き締めは、むしろ景気後退(リセッション)への懸念を強めかねない。少なくとも、ECBの利上げでユーロが対ドルで大きく反転して上昇する可能性は低そうだ。
一方、対円では引き続き円安主導でユーロ高基調が継続することも考えられる。ドル/円の145.00円前後では、本邦当局による円買い介入への警戒感がくすぶるが、短期筋による介入催促の動きが強まれば147円台への上伸も視野に入る。仮にドル/円が急伸すればユーロ/円もつれて上昇する公算が大きい。とはいえ、ユーロ/ドルの軟調推移による上値の重さを払拭することはできないだろう。
なお、イタリアの政局については、旧ファシスト党の流れを汲む強硬右派「イタリアの同胞」のメローニ党首を新首相とする新政権が10月中に発足する見通しだ。ポピュリスト(大衆迎合)のイメージとは裏腹に、メロニー氏はEUとの協調を打ち出しており、欧州復興基金を巡りEUの規律を遵守する方針を示している。安定政権になる可能性も指摘され始めており、少なくとも発足当初はユーロの不安を助長する材料にはならないと考えられる。
(予想レンジ:137.000~146.000円)
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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