24年ぶりでドル売り&円買い介入が行われたドル・円相場は、介入が行われた週は高値145.90、安値140.35と値幅5円55銭の大相場を演じたが、先週は打って変わって静かな週となり、値幅は高値144.90、安値143.15の1円75銭に留まった。
米国10年債利回りが一時4%を超えるなど米金利の上昇が止まらず、債券安(金利上昇)、株安、そしてドル高となりポンドは1.0326と史上最安値を更新し、ユーロも安値0.9536を付けてドル高&主要通貨安の動きが顕著な週となった。
ドル・円相場は依然としてファンダメンタルズ(日米金利差拡大と日本の国際収支悪化)に則ったドル買い&円売り圧力と、介入警戒感が相まって動きづらい状態となっている。
先週の為替市場で円に取って代わった主役はポンドである。
市場はトラス新政権が打ち出した大規模減税と財政支出による債務増加を懸念して大きくポンドと債券が売られてポンドの暴落と長期金利上昇を見たが、イングランド銀行が20年超の長期債を無制限に購入すると発表すると両者共に大きく買い戻されて金曜日にはポンドは1.1234迄買い戻されることとなった。
安値1.0326から実に凡そ9%の急騰であった。
(9月からのポンド・ドル・日足・ローソク足チャート。)
今回のポンドの急激な戻しはイングランド銀行が、暴落する債券相場(急騰する長期金利)に対して無制限の債券買いをアナウンスしたことによるが、どうやら我が国がドル売り&円買い介入を行った構図と似ていなくもない。
為替であれ、債券であれ、相場が当局が想定する一定のレベルを逸脱したら介入でレベル訂正を計ること(想定するレベルに戻そうとする。)には何の違和感も感じない。
英国の場合は良く分からないが、我が国の場合はあのまま放っておけば一気に147円をも突破したであろうドル・円を取り敢えず5円下落させてロケットの発射台を下げたことは間違いない。
先週の終値は144.90で心理的なレベルでもある145.00に近付いているが、又介入を行って投機筋をぎゃふんと言わせれば良いと思う。
財務省が9月30日に発表した為替介入実績によるとどうやら今回凡そ2兆8千億円買って、ドル売り介入を行った。
145円で換算すると凡そ193億ドルとなるが、これは現在我が国が保有する外貨準備1兆3千億ドルの凡そ1.5%でしかない。
先週も述べたが1998年にMr.Yenがドル売り&円買い介入を行って“このままだとあと10回介入したら外貨準備が枯渇する。”と慌てられた時とは訳が違う。
巷では“あれだけ介入しても余り効果は無かった。何れ当局はギブアップするだろう。”などの意見が聞かれるが、勝手な推測でしかないが筆者はそうは思わない。
“彼ら(我が国金融当局)はそんなに馬鹿ではないよ。”とだけ言っておきたい。
余談であるが先週シンガポールに滞在して円安の悲哀を味わった。
シンガポールでの一般の物価も上がっているのだが、円は対シンガポール・ドルでここ1年の間に80円から100円へと円安が進み、円換算すると全ての物価がべらぼうに高いのである。
詰まらない例で恐縮であるが、孫の為に買った紅茶で有名なTWG.のトリュフ・チョコレートが前回の時はSGD.30×@80円で2400円であったのが、今回はSGD.40×@100円で何と4000円!
もう殆ど2倍になった感覚である。
ホテル代となるとそのダメージはもっと大きい。
昔我が国が輸出立国で円安が経済にとってプラスだった時代は終わった。
現在は貿易収支が1年以上も赤字で、輸入立国である。
円安は輸入物価を押し上げ、益々我々の懐を痛める。
我々一般人にとって円安なんて何のメリットも無い。
なるべく早くこの行き過ぎた円安の訂正が起きることを望むだけである。
今週のテクニカル分析の見立てはドルの買われ過ぎを警戒しながらも145.25を上切ると145.75までの上昇を示唆。
143.05を下切ると142.00までの下落も有り。