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【海外特派員】トルコ狂騒曲~大荒れのトルコ不動産業界

 トルコでは、昨年秋から始まった金融政策の失敗により未だに物価が上昇し続け、3月のインフレ率は前年比61.4%と、20年ぶりの高水準となりました。値上がりしているのは食料品や日用品などの生活必需品だけではなく、家賃と住宅価格も大幅な上昇を続けています。数年前にドル建てやユーロ建てなど外貨での賃貸契約や住宅の販売が禁止されたため、今日のような物価高では、1年後のトルコリラの目減りを見越して契約更新時に前年の2倍の家賃を請求されることも珍しくないそうです。事実、イスタンブールで働いている筆者の長女が下宿しているアパート(日本のマンション)では、3月中旬に、現在長女が支払っている家賃の2倍の金額で契約が成立したとのことです。

<家賃の例>
左側-イスタンブールの日本人駐在員が多く住む地域(10,000TL(約87,000円)~75,000TL(約65万円))

右側-イスタンブールの庶民が多く住む地域(3,000TL(約30,000円)~12,500TL(約11万円))。最低賃金(4,250TL、約37,000円)を超える物件が多い。
出典:sahibinden.com

 

 先週のこと、ロシア人に現在の3.5倍の家賃で貸すため、住んでいるアパートの賃貸契約の更新を拒絶されたという話を、筆者の夫が拒絶された本人から聞きました。件の物件は、その日のうちにロシア人に貸し出されたそうです。筆者はロシア人やウクライナ人に人気がある地中海沿岸の地方都市に住んでいますが、3.5倍とはいくら何でも行き過ぎではないか、誇張があるのではないかと、にわかには信じられませんでした。それから数日後、イスタンブールで家賃が高騰しているというニュースをTVや新聞で見て、それが事実であることがわかりました。報道によると上昇率は前年比で95%~250%。イスタンブールやアンカラのような大都市は、富裕層、中間所得層、低所得層の所得層によって住む場所が異なる傾向がありますが、今回はどの地域でも万遍なく家賃が高騰しているのが特徴です。大都市で値上がりしている影響で、周辺部の都市も家賃が大幅に値上がりしているようです。大都市や観光都市では、外国人に貸し出すために入居を断られたトルコ人が続出しているというのです(これは法律違反です)。一体どういうことでしょうか。

 原因は、物価高の他にロシアによるウクライナへの侵攻があります。2か月前に突然始まったロシアによるウクライナ侵攻により、ウクライナ人だけではなく、国の将来に見切りをつけたロシア人も自国を脱出しています。西側諸国の制裁により、ロシアから西側諸国への航空便は停止されましたが、トルコは中立を守って制裁に加担していないため、現在でもターキッシュエアラインズがモスクワ、サンクトペテルブルクをはじめ、ロシアの数都市からイスタンブールと地中海岸の観光都市、アンタリアへの直行便を毎日運行しており、直前の便はほぼ満員となっています。ロシア人はビザなしでトルコに入国することが可能です。

イスタンブールのマルマラ海沖に浮かぶ軍艦

 

 ロシア人をはじめ、外国人が強制送還されないようにトルコに「合法的」に滞在するには、2つの方法があります。

1.40万ドル相当以上の不動産を購入してトルコの市民権を得る(以前は25万ドル相当でしたが、今年になって最低限度額が引き上げられました)。

 これは外国人の富裕層向けの政策ですが、この制度を利用して、毎年一定数のトルコ周辺の政情が不安定な国の国民が投資向けのアパートを購入して市民権を得ています。報道によると、この2か月間で、ロシア人も何人か40万ドル以上の不動産を購入したようです。

分譲アパートの価格例
イスタンブールの日本人駐在員が多く住む地域 (3,700,000 TL (約3200 万円)~65,000,000TL(約5億6,300万円)

 

イスタンブールにある投資向けアパート

 

2.トルコの滞在許可証を取得する。

 トルコでは、婚姻、労働、留学以外にも、観光目的での滞在許可証を発行していますが、年々取得条件が厳しくなっています。現在、初めて観光目的の滞在許可証を得るには、入国後1か月以内に住む場所を決めて賃貸契約を交わし、契約書を公証人役場で認証してもらってから申請書と共に移民局に提出しなければなりません。つまり、Airbnbなどで契約した滞在型の施設に滞在していたのでは滞在許可の条件を満たせないのです。そこで、何とか1か月以内に住む物件を見つけようと血眼になっているロシア人など外国人の足元を見るかのように、家主が家賃を釣り上げているというわけです。ただし、家主だけが一方的に悪いのではなく、借りる側も家賃の上昇に加担している面もあります。昨日も、裕福なウクライナ人が1か月1,500ドルの家賃を1年分外貨で前払いしたという話を聞きました(違法です)。家主も目減りする一方のトルコリラで支払われるよりは、外貨で、それも一年間前払いしてもらえるのであれば、トルコリラで月払いするトルコ人よりも優先するのは当然でしょう。

 賃貸物件だけではなく、分譲アパートも値上がりを続けています。トルコでは、不動産屋を通さずに売主と買主が直接交渉できるウェブサイトがあります。高級物件の所有者は何とか外国人に不動産を購入してもらおうと必死になっているようですが、そこに付け込んだ詐欺事件も発生しています。中東某国の実業家を装った人物が、売主を高級ホテルで接待して信用させた後、自国にある銀行口座が凍結されているので自国政府に金を払って凍結を解除してもらう必要があるといって数万ドルを送金させ、その後連絡を断ったそうです。報道によると、この手口で今年に入って数十名の人が被害に遭っているようです。

 家賃の高騰により、実際にアパートを借りられない人たちも出てきました。イスタンブールに転勤になった筆者の夫の親戚は、家賃が予算内に収まるアパートがなかなか見つからないと嘆いています。中心部に見つからないのであれば、郊外で借りるしかありませんが、交通費も大幅に値上がりしているため、出費が増えるばかりです。(トルコでは、大企業以外交通費はほぼ自己負担です)。政府は家賃の高騰やアパートの価格高騰に関して厳しく取り締まると息巻いていますが、いつも対策が後手になりがちで、結局は既成事実が作られていくのかもしれません。筆者としては、今年の秋に契約更新する娘のアパートの家賃が大幅に値上がりしないように祈るばかりです。

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PickUp編集部 トルコ特派員