執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
- ユーロ/円の調整幅不十分? ポンド/円はつれ安注意
- ▼03月28日週のユーロ/円は137.527円、ポンド/円は164.626円まで上昇
- ▼ロシア・デフォルト回避できるのか
- ▼BOEは難しいかじ取りを迫られる
- ▼ユーロ/円の調整終了はまだ早い、ポンド/円も上値重い
- ▼04/04 週のイベント
- ▼一言コメント
執筆日時 2022年04月01日 15時00分
ユーロ/円の調整幅不十分? ポンド/円はつれ安注意
03月28日週のユーロ/円は137.527円、ポンド/円は164.626円まで上昇
長期金利の抑え込みが狙いの日銀による異次元指し値オペがドライバーとなり、ユーロ/円は6年7カ月、ポンド/円は6年1カ月ぶりの高水準を示現しました。しかし、ウクライナとロシアの和平協議に進展があったとのニュースが流れると、急速にそれまでのポジションの偏りが解消に向かい、ユーロ/円は134.517円、ポンド/円は159.050円までそれぞれ失速しました。本来なら、欧州通貨はそのままレンジ上限を広げても良かったようにも感じましたが、ポジションが大きく傾いていたことが災いした様子で、下げ一巡後も安値圏でもみ合う格好になりました。
ロシア・デフォルト回避できるのか
ウクライナとロシアの和平交渉は漸進し、周縁地域の欧州には明るい話題となりました。外部環境の変化や域内のインフレ加速を受けて、再びECBによる年内のマイナス金利解消への期待が膨らみ始めています。ウクライナ情勢のさらなる改善観測は、これまで相当売り込まれていたユーロの大幅リバウンドを誘う期待はあります。しかしながら、ウクライナ情勢が簡単に改善するかどうかは未知数です。単純にみても、和平協定が施行されるまでには、少なくとも両国が平和協定に署名(ステップ①)、首脳会談での最終的な合意(ステップ②)と時間がかかりそうです。
しかも、ウクライナ側は平和協定を国民投票にかける予定ですし、国民投票の実施の条件は2月23日以前の状態へロシア軍が引き上げることとしていますので、施行までこぎつけるにはかなりハードルが高いでしょう。ロシア側も戦闘地域の再拡大の動きをみせているほか、ロシア産天然ガスのルーブル建て代金支払いを強要するなど地政学リスクは完全に後退していません。
また、4月4日は21.3億ドル規模のロシア国債の償還・利払いが控えています。無事通過できなければ、ロシアのデフォルト懸念から欧州経済へ圧力がかかる危険もあり、ユーロの継続的な買い戻しは一筋縄ではいかないように見受けられます。また、4月10日には仏大統領選挙が実施されます。1回目の投票で過半数を得る候補はいない見通しですが、今回のウクライナ情勢への対応で一気に他の候補をリードしたマクロン大統領の再選が有力視されていますので、大きな波乱要因にはなりにくそうです。
BOEは難しいかじ取りを迫られる
2021年の英経済はEU離脱、コロナ禍での減速から大きくリバウンドし成長への不安が後退しました。しかし、コロナ前の水準を取り戻すには至っておらず、EU離脱・コロナの傷は完治しているとは言えません。加えて、足もとウクライナ情勢の悪化を背景にエネルギー価格上昇が家計を直撃する格好になっていますので、再び経済への逆風が強さを増しつつある様子です。実際に2月の小売売上高は前月比0.3%減と、さらなる落ち込みが警戒されています。利上げ期待だけでは継続的なポンド上昇には不十分なようにも思われ、対円を除いてはポンドが二番底をつけにいく展開があっても不思議はなさそうです。経済・金融政策への言及があるかどうかは分かりませんが、4日、カンファレンスに出席するベイリーBOE総裁の発言内容には一応、気を配りたい。
ユーロ/円の調整終了はまだ早い、ポンド/円も上値重い
ドル/円、ポンド/円、豪ドル/円が直近の上昇幅の61.8%幅まで押し戻されるなか、ユーロ/円はまだ23%程度しか押し戻されておらず、下げきった様子はありません。他の対円通貨と同じ傾向をたどるとするなら、132.502円付近とあと3円近く調整が入ってもおかしくなさそうです。値ごろ感からの買い出動は慎重に行いたい。かたやポンド円は、先行して調整した分下げ渋る様子も見受けられますが、160.805円(3月31日時点)レベルの5日移動平均線がレジスタンスとしてワークし始めている様子ですので、ユーロ/円の下げ幅拡大に引っ張られて下値を広げる危険があり、こちらも下方向を警戒したいです。
【ユーロ/円チャート 8時間足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:EUR/JPY:132.500-136.000
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:GBP/JPY:158.000-162.000
04/04 週のイベント
04/04(月) ロシア 21.3億ドル規模の国債償還
04/04(月) 18:05 ベイリーBOE総裁、講演
04/05(火) 17:00 ユーロ 3月 サービス部門購買担当者景気指数(PMI、改定値)
04/05(火) 17:30 イギリス 3月 サービス部門購買担当者景気指数(PMI、改定値)
04/06(水) 15:00 ドイツ 2月 製造業新規受注
04/06(水) 17:30 イギリス 3月 建設業購買担当者景気指数(PMI)
04/06(水) 18:00 ユーロ 2月 小売売上高
04/07(木) 15:00 ドイツ 2月 鉱工業生産
04/07(木) 20:30 ユーロ 欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨
一言コメント
せっかく開花した桜が、昨日の雨で早くも散り始めています。天候が回復し、週末のお散歩タイムまでもってくれるとありがたいです。
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