「ドル>ユーロ>円の流れに変化なし」外為総研 House View ドル/円・ユーロ/円 2022年4月

【外為総研 House View】

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執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也

目次

▼ドル/円
・ドル/円の基調と予想レンジ
・ドル/円 3月の推移
・3月の各市場
・3月のドル/円ポジション動向
・4月の日・米注目イベント
・ドル/円 4月の見通し

▼ユーロ/円
・ユーロ/円の基調と予想レンジ
・ユーロ/円 3月の推移
・3月の各市場
・3月のユーロ/円ポジション動向
・4月のユーロ圏注目イベント
・ユーロ/円 4月の見通し

ドル/円

ドル/円の基調と予想レンジ

ドル/円の基調と予想レンジ

ドル/円 3月の推移

3月のドル/円相場は114.649~125.083円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約5.9%の大幅高(ドル高・円安)だった。

米連邦公開市場委員会(FOMC)が約3年ぶりの利上げに踏み切った上に、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が利上げペースを加速させる可能性を示唆。一方で、日銀は黒田総裁が大規模金融緩和を維持する姿勢を強調した。こうした中、「日米金融政策の方向性の違い」を意識したドル買い・円売りが中旬以降に活発化した。日銀が「連続指値オペ」で長期金利の上昇を強くけん制した28日には、122.00円付近から125.08円前後まで3円超急伸して2015年8月以来の高値を付ける場面もあった。

ただ、日本の年度末と海外の四半期末が重なる月末にかけては持ち高調整と見られるドル売り・円買いが強まり上げ幅を縮小した。それでも、月間の上昇率は2016年11月以来の大きさとなった。

ドル/円 3月の推移

ドル/円 3月の4本値
出所:外為どっとコム

2日
パウエルFRB議長は下院金融員会で半期に一度の議会証言をい、ロシアのウクライナ侵攻による短期的な影響は不確定としながらも、「高インフレと非常にタイトな労働市場の状況を踏まえ、月内に開く会合でFF金利の誘導目標引き上げが適切だ」などと発言。質疑応答では「25bp(0.25%ポイント)の利上げを提案し、支持する方向に傾いている」とし、「インフレが高まる、あるいは高い状態がより長引けば、一度の会合、もしくは複数の会合でFF金利を25bpより大きな幅で引き上げるもっと積極的な行動へ準備を整えるだろう」とも述べた。

4日
米2月雇用統計は、非農業部門雇用者数67.8万人増、失業率3.8%と市場予想(42.3万人増、3.9%)より良好だったが、平均時給は前年比+5.1%と予想(+5.8%)を下回る伸びにとどまった。ウクライナ危機を巡る懸念が広がる中、米雇用統計に対する市場の反応は薄く、米国株が下落して始まるとドル/円は反落した。

10日
米2月消費者物価指数(CPI)は前年比+7.9%と予想通りに前月(+7.5%)から伸びが加速し、約40年ぶりの高水準を記録。食品やエネルギーを除いたコアCPIも前年比+6.4%と予想通りに加速した。これを受けて米長期金利とドルが上昇した。

16日
FOMCは政策金利を予想通りに0.25-0.50%へと25bp(0.25%ポイント)引き上げた。声明では「ロシアによるウクライナ侵攻の米経済への影響は非常に不確実だが、短期的にはインフレにさらなる上向きの圧力を生み出し、経済活動を圧迫する可能性がある」としながらも、労働市場の堅調さなどを踏まえ「政策金利の継続的な引き上げが適切になる」との見解を示した。セントルイス連銀のブラード総裁は50bpの利上げを主張していた事も分かった。経済・金利見通しでは、2022年のインフレ予測を大幅に引き上げた一方、成長率予測は引き下げた。その上で、政策金利は2022年末に1.75-2.00%へと引き上げられると予測した。年内に予定されている6会合すべてで25bpの利上げを行う可能性を示した事でドルが急伸した。

18日
日銀は予想通りに政策金利を-0.1%に据え置く事を決めた。長期金利の誘導目標も0.0%(±0.25%)に維持した。黒田日銀総裁は会見で「当面は金融緩和の継続が適切」「円安が全体として日本経済にプラスとの構図に変化はない」「ファンダメンタルズ反映した円安は日本の経済・物価にプラス」「日本が金利を上げる必要は全くない」などと発言。日米の金融政策の方向性を意識したドル買い・円売りが優勢となった。

21日
パウエルFRB議長は「政策金利の引き上げ幅を25bpより大きくし、より積極的に動く事が適切であると判断した場合にはそうする」と述べ、50bpの利上げを排除しない考えを示した。インフレ抑制を重視し、金融引き締めへ「迅速に動く必要がある」と強調した。また、「今後3年をかけて実施するバランスシート縮小(量的引締め=QT)は、次回会合で着手と想定している」と述べた。5月会合で50bpの利上げとQT開始が同時に発表される可能性を織り込む形でドルが上昇した。

28日
日銀は午前の金融市場調節で10年物国債を0.25%の利回りで無制限に買い入れる「指値オペ」を通告。それでも10年債利回りが低下しなかった事から、日銀はその後この日2回目の「指値オペ」を臨時で通告した。さらにその後、29日、30日、31日に「連続指値オペ」を実施すると発表した。日銀が大規模緩和を維持する姿勢を強調した事が「円安容認」と受け止められた事もあって円売りが再び活発化。ドル/円は2015年8月以来の高値となる125.08円前後まで急伸した。

3月の各市場

米2・10年債利回り

3月の日経平均、NYダウ平均

3月のドル/円ポジション動向

3月のドル/円ポジション動向

【情報提供:外為どっとコム】

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4月の日・米注目イベント

4月の日・米注目イベント

ドル/円 4月の見通し

ドル/円は3月に約5.9%の大幅高となり、6年7カ月ぶり高値の125.08円前後へ急伸する場面もあった。月末にかけては急騰の反動で反落したが、テクニカルポイントの121円台前半では下げ渋る動きを見せている。20日移動平均線、50日移動平均線、100日移動平均線はいずれも右上がりの上向きだ。3月の上げ幅の38.2%押しにあたる121.10円前後を下値支持として維持している限り、上昇基調も維持される公算が大きい。

米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制に向けて引き締め姿勢を強める一方、日銀は4-6月の国債買い入れを増額するなど大規模金融緩和を継続する姿勢を示しており、「日米の金融政策の方向性の違い」は鮮明だ。

テクニカルとファンダメンタルズの両面からドル高・円安が示唆されており、4月のドル/円相場も堅調推移が見込まれる。テクニカル的には121.10円前後の下値支持と、125.083円の上値抵抗をどちらに抜けるかが焦点となるが、現状では上抜けの可能性が高いと考えられる。

3月相場における125円台での滞空時間が短かっただけに、124円台後半から125.00円にかけては戻り売りが出やすいと見るが、6日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録や12日の米3月消費者物価指数を受けて5月FOMCの50bp(0.50%ポイント)利上げの確度が高まれば高値更新も可能だろう。これらが不発気味に終わっても、日本の貿易赤字などに由来する円売りニーズがドル/円相場の下値を支えるだろう。
(予想レンジ:120.750~126.250円)

ユーロ/円

ユーロ/円の基調と予想レンジ

ユーロ/円の基調と予想レンジ

ユーロ/円 3月の推移

3月のユーロ/円相場は124.393~137.527円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約4.4%上昇(ユーロ高・円安)した。

ウクライナ危機を巡る懸念からユーロ売りが先行。地政学リスクに加え、ロシア産エネルギー輸入依存度が高い事も嫌気された。ただ、約1年3カ月ぶりの安値となる124.39円前後で下げ止まると、欧州中銀(ECB)の債券買い入れ終了前倒し示唆などで反発。ロシアとウクライナの紛争は泥沼化しないとの楽観的な見方が浮上しユーロが買い戻された一方、日銀のハト派スタンス維持によって円が売り込まれた事から、一転して大幅高となった。日銀が「指値オペ」「臨時オペ」「連続指値オペ」を連発した28日には2015年8月以来の高値となる137.53円前後まで上伸した。その後、月末にかけては持ち高調整と見られる動きで上げ幅を縮小したが134円台半ばで下げ渋った。

ユーロ/円 3月の推移

ユーロ/円 3月の4本値
出所:外為どっとコム

2日
ユーロ圏2月消費者物価指数(HICP)・速報値は前年比+5.8%と予想(+5.6%)を上回った。エネルギー価格の高騰を主因に伸び率は過去最高を記録した。前日に発表された独2月消費者物価指数(EU基準CPI)は前年比+5.5%であった。

4日
ウクライナ南部のザポロジエ原子力発電所でロシア軍の砲撃による火災が発生したとの報道が伝わると、リスク回避のユーロ売り・円買いが強まった。その後、当局が消火にあたり、原発の放射線量レベルに変化がなかった事が伝わると、市場のリスク回避ムードは後退したが、原油や天然ガスなどエネルギー価格の上昇が続く中、ユーロ売りは継続した。

7日
前週末に、米国が欧州の同盟国と協調してロシア産原油の禁輸を検討していると伝わった事でNY原油(WTI)が一時、約14年ぶりに1バレル=130ドル前後へ上昇するなどエネルギー価格が高騰。これを受けて欧州経済がスタグフレーション(不況時の物価高)に陥るとの懸念が広がり、ユーロ売りが強まるとユーロ/円は約1年3カ月ぶりに124.39円前後まで下落した。

8日
EUが大規模な債券共同発行を計画しているとの観測報道を好感してユーロが急伸。エネルギーや防衛関連の資金を調達する計画で、10-11日のEU首脳会議終了後に示される見通しだと伝わった。さらにその後、「ロシアへの配慮から、ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)への加盟をもはや主張しない」と仏メディアが報じた事を受けてユーロは続伸した。

10日
ECBは金融政策の現状維持を決定。一方で、資産購入プログラム(APP)による債券買い入れの終了を7-9月期に前倒しする方針を決め、声明から「金利は現在よりも低くなる公算」とする文言を削除した。予想外のタカ派スタンス強化を受けてユーロは一時急伸した。ただ、利上げ時期を巡るフォワードガイダンスについては「資産買い入れ終了後しばらくしてから」とし、従来の「利上げの少し前に資産買い入れを終了する」から変更した。このため、ユーロは買いが一巡すると失速。ラガルド総裁が会見で「経済見通しに対するリスクは著しく増大し、下方に傾いている」などと述べた事も重しとなった。

15日
独3月ZEW景況感指数は-39.3と前月の5.0から大幅に低下した。ZEW(ドイツ欧州経済研究センター)は「ウクライナでの戦争とロシアに対する制裁措置がドイツ経済の見通しを著しく損ねている」との見解を示した。

17日
ロシア大統領府は、前日に伝わった「ロシアとウクライナの停戦交渉は合意に向けて大きく前進した」とする一部報道は総じて誤りだとの見解を示した。これを受けて一時ユーロ売りが優勢となったが、欧州株が底堅く推移する中で持ち直した。なお、オランダ中銀のクノット総裁はその後、「年内2回の利上げの可能性も排除しない」などと発言した。

24日
独3月製造業PMI・速報値は57.6、同サービス業PMI・速報値は55.0と、いずれも前月から低下したが市場予想(56.0、53.7)は上回った。その後に発表されたユーロ圏3月製造業PMI・速報値は57.0、同サービス業PMI・速報値は54.8とこちらも揃って予想(56.0、54.3)を上回った。ウクライナ危機は、ユーロ圏の企業マインドに大きな影響を及ぼしていない模様。

28日
日銀が「連続指値オペ」を通告して長期金利の上昇を抑え込む姿勢を強調すると円売りが活発化。年内に利上げ開始の可能性もあるECBとの金融政策の方向性の違いを意識したユーロ買い・円売りで一時137.53円前後まで急伸して約6年7カ月ぶりの高値を付けた。

3月の各市場

3月の日経平均、独DAX

3月の独2・10年債利回り

3月のユーロ/円ポジション動向

3月のユーロ/円ポジション動向

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4月のユーロ圏注目イベント

4月のユーロ圏注目イベント

ユーロ/円 4月の見通し

フランスの次期大統領を決める大統領選挙が4月10日に行われる。現職のマクロン大統領がウクライナ危機に積極的に対応する姿勢を見せた事で支持率を上昇させており、選挙戦を有利に展開している。とはいえ、10日の投票で過半数票を獲得するのは難しい情勢。マクロン氏を追うのが極右のルペン候補で、この2人が24日の決選投票に進む可能性が高そうだ。

決選投票でもマクロン氏が有利と見る向きが多いものの、選挙結果は蓋を開けてみるまではわからないのが定石であろう。過去にはユーロ離脱を主張したり、親ロシアの姿勢を示した経緯があるルペン氏が仮に勝利すれば(現在はそうした主張は封印しているが)、通貨ユーロは下落が避けられないだろう。それだけに、ユーロ相場は24日の決選投票にかけて様子見ムードが広がる公算が大きいと考えられる。

なお、14日に予定されている欧州中銀(ECB)理事会は、政策変更なしと見られラガルド総裁も慎重姿勢を再表明する可能性が高い。このため、ユーロの売買材料にはなりにくいだろう。ウクライナ情勢に大きな変化がなければ4月のユーロ相場は比較的小幅な値動きにとどまる公算で、動きが出るとすれば仏大統領選の結果を確認してからになりそうだ。
(予想レンジ:132.500~138.000円)

f:id:gaitamesk:20191106165135p:plain 株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。
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