総括
FX「大幅円安でもトルコの上昇は鈍い。三重苦は続く」トルコリラ見通し
通貨最下位、株価首位
予想レンジ トルコリラ/円 7.5-8.5
(ポイント)
*リラはやや戻したが依然12通貨中最下位
*ウクライナ危機でリラ下落時には介入実施か
*株価はインフレ懸念が強いため上昇し世界最強
*政策金利は14%で据え置かれた
*2月旅行者数(インバウンド)は前年比186.5%増
*トルコはウクライナ・ロシアの和平交渉の仲介役を担おうとしている
*ウクライナ・ロシア戦争でトルコの物流が混乱
*エルドアン政権が与党に有利な選挙制度改革を計画している
*貿易・経常赤字が拡大する
*リラ特別預金は増加しているが、リラ安では政府負担が増加
*2月の消費者物価は54.44%上昇
*21年GDPは11%成長、ただ22年は3.5%成長に減速か
*フィッチが格下げ
*主要食品の付加価値税を1%に引き下げ
*トルコ実業界はリラの対ドルレートを9から14の間で推移することを望む
(若干戻すも、12通貨中最下位変らず)
依然弱い。先週は対円では7円台後半から、8円台になり若干戻したが、対ドル、対ユーロでは弱く、本当の回復にはなっていない。株価は世界最強だが50%を超えるインフレの影響で評価するには当たらない。
(高インフレでも政策金利は14%で据え置き。インフレ公約は?)
トルコ中銀は先週、政策金利の1週間物レポレートを予想通り14%に据え置いた。据え置きは3カ月連続。ウクライナ戦争の影響によりインフレ率が上昇していることを認める一方、エルドアン大統領の異例ともいえる政策方針に追従した格好だ。ゴールドマン・サックスは、トルコのインフレ率が今年大半の期間で前年比60%を上回り続ける公算が大きいと予測した。当局の「持続不可能な」政策スタンスや、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー価格が上昇していることが背景にある。
一方、トルコ政府は、来年5月に総選挙があるからか、それまでにインフレが一桁台に低下することを公約としている。インフレ調査にかかわる統計局の過分をこれまで3人解雇していることは不信感を募らせる。高インフレ、貿易赤字、ウクライナ危機の三重苦は続く。
(トルコ2月旅行者数(インバウンド))
2月前年比186.5%増、(1月は151.4%増)
2月は154万1393人 1月は128万1666人
トルコの観光収入は経常収支を支える上で重要な要素。主にロシア、ウクライナ、独などからの観光客が多い。
(エルドアン政権が選挙制度改革案 トルコ野党に逆風)
トルコの与党連合が国の選挙法を修正する計画を発表した。エルドアン大統領の与党から議会の主導権を奪おうとする野党の試みにダメージを与える可能性がある内容だ。
議席は単純に選挙区内での個々の政党の得票率に基づいて割り当てられる。一方現行制度では、まず個々の選挙連合が獲得した票のシェアに沿って議席が割り当てられ、その後、連合内の個々の政党の得票率に従って分配される。この仕組みのおかげで、政党は少数の票を得た選挙区でも議席を拾うことができる。ただ7%以上の得票率がないと議席は取得できず与党へ流れてしまう。
世論調査会社ターキー・ラポルのディレクター、ジャン・セルチュク氏は、新規則が18年に実施された総選挙に適用されていたとすれば、定数600の国会でエルドアン氏の与党連合が10議席多く獲得する結果になったと話す。この数字は小さいが、次回選挙が接戦になれば、エルドアン氏にとって極めて重要になるかもしれないと言う。
また、改正案が可決されれば、23年6月に予定されている大統領選と総選挙をエルドアン氏が前倒しする可能性が大幅に低下する。法案が承認された後、正式に発効するまでに12カ月かかるからだ。
与党連合は国会の過半数を占めているため、AKPと同党と事実上の連立を組む民族主義者行動党(MHP)の一部議員によって提出された法案は可決、成立する公算が大きい。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
ボリバン2σ下限から反発もボリバン中位を上抜けず
日足、ボリバン2σ下限から反発もボリバン中位を上抜けず。3月11日-21日の上昇ラインがサポート。3月15日-17日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き。
週足、12月20日週-3月7日週の上昇ラインがサポート。2月28日週-3月14日週の下降ラインが上値抵抗。ボリバン下位。
月足、12月-2月の上昇ラインを下抜く。ボリバン2σ下限。11月-12月の下降ラインが上値抵抗。
年足、7年連続陰線だが22年1月は陽線となった。2月はまた陰転。18年-20年の下降ラインが上値抵抗。
メルハバ
ウクライナ情勢でトルコの貿易や物流が混乱
ロシアのウクライナへの軍事侵攻により、両国間の物の流れが停滞したことで、トルコの貿易および物流セクターに混乱が見られている。トルコのウクライナ、ロシアとの貿易は海運やトラック輸送が主流で、多くの輸送トラックが、トルコとウクライナ、またウクライナ経由でロシアをつないでいた。しかし、ロシア軍によるウクライナ侵攻により、トルコ企業のトラック約500台とその運転手が、ウクライナで立ち往生する事態が発生した。
また、ロシアからウクライナ経由でトルコに戻る予定だったトラックが、通常は利用しない通関のキャパシティが小さいジョージア経由での帰国を選択したことから、ロシア・ジョージア国境で約20キロ、ジョージア・トルコ国境で約7キロとなる渋滞が発生した。トルコのロシア向け輸出の約53%をトラック輸送が占めていたことから、代替の空輸も含めて輸送コストが急上昇している。
他方、ロシアからの輸入は、その約94%を海運に依存している。このため、ロシアがアゾフ海での海運を停止したことで、トルコ向けヒマワリ油を積んだ貨物船15~16隻がロストフ・ナ・ドヌー港から出港できず、スーパーマーケットなどではヒマワリ油の買い占めなどの混乱をもたらした。トルコの国産で足りない分のヒマワリ油の輸入においては、ロシアとウクライナからの輸入が全体の92.8%を占めているためだ。
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