こんにちは、戸田です。
本シリーズでは、オーストラリアのマクロ経済政策などをもとに、豪ドルの現状や相場見通しについてお伝えしていきます。豪ドルの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。
第12回目は「なぜウクライナ情勢の緊迫化で豪ドルが買われるのか?」です。
結論から申し上げますと、ウクライナ情勢が緊迫化すると豪ドルは買われます。答えはシンプルで欧州通貨など紛争地域の通貨が売られやすくなる一方で、相対的に安全な南半球の通貨が買われやすくなるからです。なので南アランドなども狙い目です。
順を追ってみていきましょう。
目次
1.豪ドル相場の定点観測
2.ウクライナ情勢が悪化すると豪ドルを含む南半球の通貨が買われる理由
3.その他の3つの注目材料
4.結局、豪ドルとどのように対峙すればよいか?
1.豪ドル相場の定点観測
まずは現在の豪ドル相場について、かんたんに状況を確認しましょう。
<豪ドル/米ドル(AUD/USD)チャート、日足>
作成時点のAUD/USDレート:0.7220
前回報告が2月8日で、その作成時点のAUD/USD相場が0.7097でしたので、2週間で123ポイントの豪ドル高が進みました。この間になにか特別な豪ドル高要因があったわけではないのですが、2月1日のRBAを無難に通過して、その後は豪ドル買い圧力が強まっている状況です。
<豪ドル/日本円(AUD/JPY)チャート、日足>
作成時点のAUD/JPYレート:83.05
前回報告時点のAUD/JPY相場が81.70円でしたので、2週間で1.35円の豪ドル高が進みました。この間、ドル/円は大きく動いていませんので、AUD/USDの上昇に引きずられるかたちで上昇しています。
2. ウクライナ情勢が悪化すると豪ドルを含む南半球の通貨が買われる理由
この2週間に一体何があったのか?
データを振り返って見えてくることは、ウクライナ周辺の通貨が売られた一方で、紛争地域から遠い南半球の通貨が買われたことです。
添付画像は世界196ヶ国を対象に米ドルに対して下落すると赤色、上昇すると緑色に表示するように設計しているのですが、この2週間、ウクライナ周辺の通貨が赤色に染まり、オーストラリアを含む南半球の通貨が緑色に染まっていることがわかります。
2月2週目の値動き
ユーラシア全域の通貨が売られ、南半球の通貨が買われた
2月3週目の値動き
ユーラシア+NATO加盟通貨が売られ、継続して南半球の通貨が買われた
推測になりますが、紛争地域の通貨は買いづらいので売られる、紛争とあまり関係のない地域の通貨が相対的に買われるということだと思います。シンプルですが、トレードに活かせそうですよね。
したがって目先は引き続きウクライナ情勢を追っていくことが大切になりますし、状況が悪化するようなら、紛争地域の影響を受けにくい南半球の通貨が買われやすくなっていく可能性には十分に留意しておくべきでしょう。
3.その他の3つの注目材料
豪ドルを見ていくうえで何と言っても欠かせないのがRBA金融政策決定会合です。次回は3月1日(火)に予定されていますので、ここで金融緩和の縮小についてどういった言及がなされるのかはチェックしておきましょう。
それから最近すこし気になるのがオーストラリアと中国の関係悪化です。アメリカのバイデン政権が「人権」を前面に出して対中包囲網を形成した結果、人権を大切にするオーストラリアと相対的に人権に対する優先順位の低い中国の関係は徐々に悪化しており、つい先日にもオーストラリアに近い空域や海域において中国艦艇からオーストラリア艦艇がレーザー照射される事件が発生しています。オーストラリアと中国は大分と距離が離れているのですが、いやはや中国の威嚇行動は本当にやめてもらいたいものです。
3点目は資源価格の推移です。添付画像はNY先物取引所で取引される資源価格の総合的な価値を示したCRB指数ですが、緊迫するウクライナ情勢などを背景に上昇を続けています。
資源価格の低下は豪ドル安要因になりえますので、このあたりも抑えておくとよいでしょう。
4.結局、豪ドルとどのように対峙すればよいか?
<AUD/USD 4時間足>
AUD/USDは昨年末より0.7000~0.7315でのレンジ相場が継続しています。したがってまずはこのレンジを意識してトレードしていくのが無難でしょう。
目先はウクライナ情勢の緊迫化でオーストラリアを含む南半球の通貨が買われていますから、まずは買いでついていき、レンジの上限付近では一旦利食いを入れる、こういった戦略が検討できると思います。
レンジ上限を抜ける場合にはいよいよ豪ドル上昇の機運も高まると思います。それにはRBAにおいてさらなる金融緩和縮小への兆しがみられないと厳しいでしょうが、併せてみていきたいところです。
<AUD/JPY 4時間足>
AUD/JPYについては、押し目買いでよいとおもいます。日本は資源高による貿易収支の悪化、金融緩和の長期化と円売り材料が多いですので円売り、豪ドル買いが素直だと思います。チャート的にもじり高が続いていますので、ドル円の値動きを参考にするとよいと思います。
最後に豪ドルのトレーダーが見るべき動画として、【FX初心者シリーズ】豪ドル編を紹介させてください。
「外為どっとコム公式FX動画ch」で配信されている豪ドルをテーマにしたシリーズですが、とても役に立つ内容です。本記事でチャートを紹介させて頂いたCRB指数についてもこの動画で丁寧に解説してくれています 。
① オーストラリアのこと本当に知ってる?
② オーストラリアが28年間経済成長し続けた理由
③ 豪ドルトレードの味方!CRB指数とは?
④ 豪ドルと中国の深い関係とは?
私たちが株を取引する時は、何をやっている会社か、儲かっているのか、お客さんはだれなのかなど調べると思うのですが、FXの場合は通貨なので、国そのものなので、国が何をやっているのかを見ることがとても大事なんですね。そういう意味で、このシリーズは豪ドルおよびオーストラリアの全容を知れる数少ない貴重な動画だと思います。見て頂ければきっと役に立つと思いますよ。
本日はここまでとなります。
引き続き、みなさんのお役に立つ記事を作成してまいりますので、応援して頂けますと幸いです。
戸田裕大
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<参考文献・用語解説>
豪ドルチャート:外貨ネクストネオ
Core Commodity CRB Index:トレーディングビュー
NHK:中国軍艦艇が豪軍哨戒機にレーザー光線” 豪首相が非難
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220220/k10013494271000.html
RBA:Reserve Bank of Australia、オーストラリアの中央銀行の略称で、中央銀行や、その金融政策決定会合そのものを指すこともあります。
FRB:Federal Reserve Board、アメリカの中央銀行制度の最高意思決定機関
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