昨年の12月20日夜、トルコリラの急騰を受けて、エルドアン大統領により突然発表された新たな銀行預金システム「為替補償付きリラ建て定期預金」。これは、為替レートが上昇すれば、リラ建て定期預金との間で生じる差額を政府が負担するという預金です。この日は計画の大筋のみが発表されただけで、どの銀行も預金を受け入れる準備が全く整っておらず、大手10行で口座開設条件が出揃ったのは年末になってからでした。
細かい条件は各行の裁量に任されていますが、共通の条件は以下の通りです。
・口座を開設できるのは、国内在住の個人のみ(法人は不可)
・期間は3/6/9/12か月
・満期になると、元金と利息が自動的に普通口座に移され、定期預金の継続は不可
・預け入れ期間中に部分的な引き出しは不可
・中途解約する場合は、利息はゼロ
・為替レートは、口座開設日と満期日において午前11時に発表されるトルコ中央銀行のレートを採用
・満期日時点で対象となる為替レートが開設日より上昇している場合は、差額分を中央銀行が負担する
・中途解約時に開設時よりも為替レートが下がっている場合、預金者が為替の下落分を負担し、元金が保証されない
・源泉徴収税は免除
・口座は銀行窓口のみで開設可(インターネットバンキングでは不可)
次に、各行で条件が異なる部分は以下の通りです。
・最低預金金額が1,000リラが4行、10,000リラが3行、記載なしが3行。預金限度額を設定しているのは、1行(50万リラ)のみでした。
・最低利息は、トルコ中央銀行の法定金利(現時点で14%)としているのが6行、17%が2行、記載なしが2行でした。
・対象となる為替は、米ドルのみが2行、米ドル/ユーロ/英ポンドが5行、記載なしが3行でした。
・口座を開設できるのは、12月20日現在で為替口座を所有している顧客に限っているのが1行でした。
・口座開設を1回のみに限っているのが2行でした。
政府の発表によると、1月3日現在、この定期預金を通じて780億リラが預けられました。このシステムが成立するには、リラの安定が前提となっています。ところが、12月20日の週は1米ドルが11~12リラでしたが、先日(3日)発表された12月の消費者物価指数が36.1%だったことを受けて、本日(4日)は13リラを超えており、早くもリラの急騰効果が薄れています。このまま為替レートが上昇し続ければ、中央銀行による差額負担が相当額にのぼるため、今後この預金システムが継続するかどうかは不透明です。
トルコリラ/円の現在レートはこちらから確認できます。
PickUp編集部 トルコ特派員