総括
FX「介入実施。トルコの外貨預金は外貨準備を上回る。消費者物価は21%」トルコリラ見通し
(通貨最下位、株価首位)
予想レンジ トルコリラ/円 7.5-9.0
(ポイント)
*国民はリラよりドルやユーロを選好し防衛している
*トルコは外貨預金残高が外貨準備を上回る
*外貨預金は2595億ドル、外貨準備総合残高は1240億ドル
*ついにリラ買い介入を実施
*3Q・GDPは前年同期比7.4%増
*11月CPIは21.31%
*預金の内、外貨預金が61%
*財務相が辞任した
*格付け見直しは
*大統領は利下げ継続と為替の安定を望む
*通貨は最弱、株は最強
*米国を離れアラブ諸国との親交を深める
*12月の米国主催の民主主義サミットには招待されず
*利下げでも長期金利は上昇し20%台へ
*2021年成長見通しは9%
*8月、9月は経常黒字へ
*大統領が10大使の追放指示(その後大使側譲歩で鎮静化)
*大統領は、利上げ派の中銀金融政策委員の3委員を解任した
*大統領支持率低下
(外貨預金が預金残高の60%とは)
中銀発表の預金構成では、リラ預金が39%、外貨預金が61%である。こんな国があるのだろうか。自国通貨よりドルやユーロを保有する。
ただこれも国民のリラ安、インフレ生活防衛策なのだろう。貿易赤字の他に、国民がリラを売るのでよりリラが下落する。ただこれも国民の生活防衛策だ。
2000年代初頭に、横浜のトルコレストランに行ってシェフとユーロ加盟について話した覚えがある。ユーロを持てば物価が安くなると喜んで話してくれた。こういうことだったのか。人権問題もありユーロ圏はトルコのEU加盟を拒否している。でもリラをユーロに換えるのは自由だ。預金の通貨はドルが一番多く、次いでユーロだ。ただ外貨預金の急増はリラベースであり、リラの下落も大きく貢献している。
外貨預金は2595億ドル、外貨準備総合残高は1240億ドルだ。
(リラさらに下落)
さてリラはさらに下落し、年初来、対円で40.66%安、対ドルで84.1%安という異常と言ってもいい状況となっている。11月消費者物価は前年比でついに20%を超えて21.31%となった。生産者物価は54.62%だ。
(財務相が辞任)
大統領は利下げを強要し、それに反対する中銀総裁を3月に解任した。今月は高インフレでも金融緩和を進める財務相を辞任に追いやった。
(リラ買い介入実施)
国民は物価高で反政府デモを行い始めた。ただ国民もしたたかであり、トルコでの外貨預金は急増し、リラ預金を超え、全体の6割を占めている。リラ安に対応している。もちろん、物価高で苦しむ人も多い。
中銀も漸く、リラ買い介入を12月1日、3日に行ったが、下げの速度を緩めることは出来たが、まったく反発に及んでいない。介入に使える外貨は870億ドルであり、限りがあることも影響している。大統領は中国やドイツのように貿易黒字で低金利の国を目ざしているらしく、金利を下げれば貿易黒字になると思っている。順序が逆で貿易黒字ゆえに低インフレ、低金利なのだ。低金利にすれば貿易が黒字となるわけではない。ただトルコにおいては食料や衣料中心の輸出額で、原油や一般機械の輸入額を上回ることは難しい。8月、9月は経常黒字になったが、それは旅行収支の黒字によるもので、観光をメイン産業にするのも一つの手だ。遅きに失したが、暴落と言っていいほどの通貨下落で漸く介入となった。出来ればG20に協調介入をお願いすべきだ。
(格付け見直し)
最近格付けの見直しがあった、フィッチ、ムーディーズともに格付けは現状維持、ただフィッチは見通しを安定的からネガティブに変更した。
*ムーディーズ=トルコの格付けを「B2」に維持した。見通しについては、政策の予見が難しいとして引き続き「ネガティブ」とした。リラに圧力がかかっているものの、対外的な脆弱性リスクは低下していると指摘。公的財政は比較的底堅いとし、2022年の公的債務の対国内総生産(GDP)比率は約40%にとどまるとの見通しを示した。
*フィッチ=トルコの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。金融政策の方向性を巡るリスクが理由。9月に始まった中銀の利下げサイクルについて時期尚早だと指摘。国内の信頼感悪化につながっており、急激な通貨安にそれが反映されていると述べた。政策金利を実質ベースで大幅なマイナスに維持すれば、国内の信頼感がさらに低下し、例えば、預金者の自信が揺らぐといった金融不安のリスクが高まりかねない。これまで弾力的だった銀行・企業の対外ファイナンスへのアクセスが脅かされる可能性もあるとした。
(エルドアン発言)
エルドアン大統領は12月4日、変動が激しくなっている為替レートやインフレ率が近く安定することを望むと述べた。ただ同時に、改めて低金利も約束した。
中銀はエルドアン大統領の圧力の下、積極的な利下げを実施。これを受け、通貨リラは売りが膨らみ、対ドル相場が11月に約30%下落した。
エルドアン大統領は、「われわれは物価や為替レートの変動をさほど長引くことなく安定させる」と語った。
(3Q・GDP)
3Q・GDPは前年比7.4%増となり、予想とほぼ一致した。通貨安で製造業や輸出が好調だった。一方、急激なインフレで庶民は困窮し、輸入品の供給網にも影響が出ている。通年の予想は9.5%増だが、最近のリラ急落やインフレ進行で今後数カ月は景気が鈍化するとみられている。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
ボリバン下限で推移
日足、 12月2日-3日の上昇ラインがサポート。12月2日-3日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き。2σ下限からは上放れる。
週足、5週連続陰線。11月22日週-29日週の下降ラインが上値抵抗。ボリバン2σと3σ下限の間を推移。
月足、9月は7月-8月の上昇ラインを下抜く。10月も陰線。9月-10月の下降ラインが上値抵抗。ボリバン2σ下限を下抜き3σ下限へ。
年足、6年連続陰線。今年は僅かながらも陽線スタートも3月の中銀総裁の電撃解任で陰転。18年-20年の下降ラインが上値抵抗。
メルハバ
大統領の曲解、トルコは中国やドイツを目指す
エルドアン大統領は中国やドイツのような国々が長期間、低金利政策を継続してきたことを指摘し、トルコ経済も「金利ではなく」生産とその若い人口に焦点を当てることによって成長するべきだと強調した。
過去19年間、政府は道路や橋などの大規模な投資を行ってきたと述べ、金利を引き下げる決意を強調し、6か月以内にこの新しい経済モデル内で下された決定が結果を生むだろうと述べた。(中国やドイツは貿易黒字ゆえに低金利なのだが、大統領は低金利にすれば貿易黒字になると曲解している)
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