【外為総研 House View】
目次
▼ドル/円
・ドル/円の基調と予想レンジ
・ドル/円 10月の推移
・10月の各市場
・10月のドル/円ポジション動向
・11月の日・米注目イベント
・ドル/円 11月の見通し
▼ユーロ/円
・ユーロ/円の基調と予想レンジ
・ユーロ/円 10月の推移
・10月の各市場
・10月のユーロ/円ポジション動向
・11月のユーロ圏注目イベント
・ユーロ/円 11月の見通し
ドル/円
ドル/円の基調と予想レンジ
ドル/円 10月の推移
10月のドル/円相場は110.820~114.697円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.4%上昇(ドル高・円安)した。
上旬は日経平均株価が6日まで8営業日続落する中、やや上値が重かったが、原油価格の上昇などで本邦輸入企業のドル買い・円売りが膨らむとの観測から底堅く推移。8日の米9月雇用統計も非農業部門雇用者数の伸びが予想を下回ったが、ドルの下落には繋がらなかった。中旬以降は、原油高などを背景にインフレ懸念が高まり米長期金利が上昇する中でドル高・円安が加速。日本の9月貿易赤字が拡大した20日には114.70円前後まで上値を伸ばして2017年11月以来の高値を付けた。
その後、下旬にかけては高値警戒感などから伸び悩んだが、11月2-3日に予定されている米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、米連邦公開準備制度理事会(FRB)がテーパリング(量的緩和の段階的な縮小)を2022年半ばに終え、その後比較的早い段階で利上げに踏み切るとの観測に支えられて下値も堅かった。
出所:外為どっとコム
1日
日銀短観(9月調査)の大企業・製造業業況判断DIは18に改善(前回14、予想13)。大企業・非製造業DIも2に改善した(前回1、予想0)。全産業を対象とする2021年度の想定為替レートは1ドル=107.64円であった。
米8月個人消費支出(PCE)は前月比+0.8%(予想+0.7%、前回-0.1%)、米8月PCE価格指数(デフレーター)は前年比+4.3%に加速(予想、前回ともに+4.2%)して1991年1月以来の高い伸びとなった。食品とエネルギーを除いたコアPCEデフレーターは前年比+3.6%(予想+3.5%、前回+3.6%)であった。また、米9月ISM製造業景況指数は61.1と予想(59.5)に反して前回(59.9)から上昇した。
8日
米9月雇用統計は、非農業部門雇用者数が19.4万人増にとどまった(予想50.0万人増、前月36.6万人増)。一方、失業率は4.8%と前月から0.4%ポイント低下して予想(5.1%)以上に改善。平均時給は前月比+0.6%、前年比+4.6%と伸びが加速した(予想+0.4%、+4.6%)。これを受けてドルは一時弱含んだが早々に反発した。失業率の改善や平均時給の伸び加速などを踏まえると、FRBの金融政策正常化計画に変更が生じるほど弱い雇用統計ではなかったとの見方が広がった。
13日
米9月消費者物価指数(CPI)は、前月比+0.4%、前年比+5.4%と、いずれも市場予想を0.1%ポイント上回って伸びが加速した。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアCPIは前年比+4.0%と、予想通りに前月と同水準の伸びとなった。その後、FOMCは9月21-22日に開いた会合の議事録を公表。「景気回復が引き続きおおむね順調なら、来年半ば前後に終了するテーパリングが適切になる可能性が高い」と大半の参加者が判断した事が明らかになった。
15日
米9月小売売上高は前月比+0.7%と予想(-0.2%)に反して増加。自動車を除いた売上高も前月比+0.8%と予想(+0.5%)を上回る伸びとなった。これを受けてドルは上昇したが、米10月ミシガン大消費者信頼感指数・速報値が71.4と予想(73.1)に反して前月(72.8)から低下し2011年12月以来の低水準となったため上げ幅を縮小した。
20日
日本9月貿易収支(通関ベース)は6228億円の赤字となり、赤字額は予想(5300億円)以上だった。部品不足による自動車輸出の減少と、資源価格高騰に伴うエネルギー輸入の増加で赤字が膨らんだ。NY原油先物(WTI)が7年ぶりに1バレル=84ドル台へと上昇する中、円売りが優勢となりドル/円が強含んだ。原油高は日本の貿易赤字拡大要因として意識されている。
22日
パウエルFRB議長は「我々は資産買い入れのテーパリング開始へと順調に向かっており、経済がおおむね予想通りに展開すれば来年半ばまでに完了する見通しだ」と発言。「供給上の制約とインフレの高進は従来の想定より長期に及ぶ可能性が高く、来年になってもしばらく続くだろう」と述べた事もあって、一時ドルが反発。ただ、議長が「テーパリングを始める時が来たと考えているが、利上げの時期とは考えていない」と続けた事でドルは再び軟化した。
28日
日銀は金融政策決定会合で現状維持を決定。黒田総裁は定例会見で為替について「現時点で若干の円安だが、日本経済にとってマイナスになることはない。総合的にプラスなのは確実だ。輸出や企業収益にはプラスで、輸入コストの増加によるマイナスの影響をかなり上回っている」と発言した。株安・原油安の影響で下落していたドル/円は、黒田日銀総裁の発言を受けて下げ幅を縮小した。
なお、米7-9月期国内総生産(GDP)・速報値は前期比年率+2.0%と予想(+2.6%)を下回り、前期(+6.7%)から減速。個人消費が4-6月期の+12.0%から+1.6%へと大きく鈍化した事が響いた。
10月の各市場
10月のドル/円ポジション動向
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11月の日・米注目イベント
ドル/円 11月の見通し
11月のドル円/相場は、第1週目が最大のヤマ場となりそうだ。1日に米10月ISM製造業景況指数が発表され、3日(水)には米連邦公開市場委員会(FOMC)の金融政策発表、5日(金)には米10月雇用統計の発表が予定されている。中でも、市場の関心が高いのは3日のFOMCと5日の雇用統計だろう。FOMCでは、テーパリング(量的緩和の段階的な縮小)の開始が発表される可能性が高い。テーパリング開始については市場の織り込みが十分に進んでおり、見どころのひとつは月1200億ドルの資産買い入れをどれほどのペースで縮小するか(いつテーパリングを終了するか)となりそうだ。毎月150億ドルずつ買い入れを減額し、2022年6月に終了するとの見方が一応の市場コンセンサス(総意)となっているようだ。
もうひとつの見どころは、テーパリング終了後に見込まれる利上げへの姿勢であろう。米金利先物市場は、FedWatchによると10月末時点で2022年6月までに利上げが開始される可能性を65%前後織り込んでいる。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がFOMC後の会見で、そうした市場の利上げ期待を強くけん制しなければ、ドルは強含みの推移が続く公算が大きいと見る。米10月雇用統計については、非農業部門雇用者数の伸びが注目される。8月36.6万人増、9月19.4万人増と2カ月連続で冴えない結果となっただけに、今回の結果が重要となろう。週次の新規失業保険申請件数が順調に減少している事から、10月の非農業部門雇用者数は50万人程度の増加が期待できそうだ。こちらも、ドルの上昇要因になる公算が大きいと見る。
ただ、ドル/円の115.00円は心理的にもチャート的にも節目として意識されているため「上値抵抗」となる事も考えられる。一時的に突破しても、押し戻されるなど115円前後の上値の重さが意識されれば、利益確定売りや戻り売りが出やすくなると考えられる。115円の壁を突破できるかが、11月のドル/円相場の最大の焦点と言えそうだ。
(予想レンジ:112.250~116.250円)
ユーロ/円
ユーロ/円の基調と予想レンジ
ユーロ/円 10月の推移
10月のユーロ/円相場は128.328~133.475円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.3%上昇(ユーロ高・円安)。
一方で、ユーロはドルに対してほぼ横ばい、ポンドや豪ドルに対しては下落した。ユーロ自体に方向感はなく、ユーロ/円の上昇はほぼ円安によるものであった事が分かる。コロナ後の経済活動再開と、それに伴うインフレ上昇に対する欧州中銀(ECB)の政策スタンスは、英中銀(BOE)や米連邦準備制度理事会(FRB)ほどタカ派的ではないものの、日銀に比べるとハト派的ではないとの見方が背景にあると考えられる。実際に、ラガルドECB総裁は28日の理事会後の会見で、インフレ上昇圧力が従来の予想より強い事を認めつつも、引き締めなどの政策対応は「時期尚早」との考えを強調した。
出所:外為どっとコム
1日
ユーロ圏9月消費者物価指数(HICP)・速報値は前年比+3.4%となり、エネルギー価格の上昇を背景に予想(+3.3%)を上回る伸びを記録。伸び率は2008年9月以来13年ぶりの高さとなった。
7日
ECBは9月9日に開いた理事会の議事録を公表。ECBは同会合でパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)ペース縮小を決めたが、一部の当局者は、この対応が経済回復に同調していないとしてより大幅な縮小を求めていたことが明らかになった。ただ、最終的には「資産買い入れ額のより大幅な削減は緩和的な金融政策からの脱却への一歩とみなされる可能性があり、中期的なインフレ見通しの弱さを考慮するとそのような動きは時期尚早と判断し、より慎重な決定を下した」との事。
8日
ラガルドECB総裁は独誌上で、インフレを押し上げているいくつかの要因は今後薄れるであろうとした上で、「現時点での尚早な引き締めは、ユーロ圏の景気回復と雇用に悪影響を及ぼすおそれがある」と述べてハト派姿勢を強調した。
11日
レーンECB専務理事(兼チーフエコノミスト)は「最近の物価上昇に反応して労働者の賃金が単発的に上昇しても持続的なインフレ高進の兆候とはならないだろう」などと発言。一方、ECBメンバーのクノット・オランダ中銀総裁は「ECBの金融政策引き締めにつながり得るインフレリスクを過小評価しないよう、投資家は慎重になるべきだ」との見解を示した。
12日
独10月ZEW景気期待指数は22.3と5カ月連続で低下。市場予想(23.5)も下回った。ユーロ圏10月ZEW景気期待指数も21.0と5カ月連続で低下した。
15日
ドイツの次期首相候補であるショルツ財務相が属する社会民主党(SPD)と緑の党および自由民主党(FDP)は、この日の協議で政権の基本政策について合意。今後は数週間の正式協議に入る事になる。報道によれば、正式協議入りは政権移行プロセスの重要な節目であり、ショルツ氏が率いる新政権が年内に発足する可能性が高まったとの事。
20日
ECBの政策メンバー内でタカ派として知られる独連銀のバイトマン総裁が年内で辞任する事が明らかになった。総裁は「10年超というのは連銀にとっても私個人にとっても新たなページをめくるのに適した期間だ」と説明した。
22日
独10月製造業PMI・速報値は58.2(予想56.6)、同サービス業PMI・速報値は52.4(55.2)とマチマチの結果であった。なお、その後発表されたユーロ圏製造業PMI・速報値は58.5(予想57.1)、同サービス業PMI・速報値は54.7(55.4)だった。
25日
独10月Ifo企業景況感指数は97.7と、4カ月連続で低下。予想(98.0)を僅かに下回った。6カ月間の見通しを示す期待指数も95.4に低下した(予想96.6、前回97.4)。
28日
ECBは金融政策の現状維持を決定。「政策金利はインフレ目標達成までは現行もしくはそれよりも低い水準に維持」との見通しを維持した。ラガルド総裁は会見で「インフレは一段と上昇すると予想」としながらも「インフレ圧力は2022年中に後退するはず」との見解を示した。しかし、市場は総裁のハト派姿勢が期待したほど強くなかったと受け止めた模様でユーロは上昇。なお、来年後半の利上げを織り込んだ市場は先走っていると思うかの質問に、総裁は「答える立場にない」と回答した。
10月の各市場
10月のユーロ/円ポジション動向
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11月のユーロ圏注目イベント
ユーロ/円 11月の見通し
10月の推移で触れたように、欧州中銀(ECB)の金融政策に関するスタンスは米連邦準備制度理事会(FRB)ほど正常化に前向きではないと見られている。11月にFRBがテーパリング(量的緩和の段階的な縮小)に動く事が確実視され、インフレへの警戒モードを引き上げると見られる中、ユーロはドルに対して弱含む可能性もありそうだ。ただ、12月16日の次回ECB理事会でパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の来年3月終了を決定する公算が大きい事を踏まえれば、ユーロの下押しは限定的と考えられる。他方、日銀が次回12月の金融政策決定会合で正常化に向けて舵を切る可能性はきわめて低い事から、円の軟調推移が続く公算は小さくないだろう。そうした中、11月のユーロ/円相場は10月と同様にユーロ高・円安基調が続くと見るのが妥当であろう。
なお、ユーロ/円の上昇基調維持は、週足チャートからも窺える。6月以降の下落局面では52週移動平均線が下値支持として機能。10月の反発局面では、7月以降上値抵抗となっていた26週移動平均線を突破した。6月に付けた年初来高値の134.13円前後を目指す展開が見こめるチャートフェースと言えるだろう。
(予想レンジ:129.500~134.000円)
神田卓也
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